第17話
席に戻るとすぐにウェイターがイスを引いてくれた。
「素敵な歌だった」
「ありがとう。楽しかった」本当に楽しそうだった。
残っていた僕らはデザートに手をつけた。
「どこに行きたい?」僕は唐突に聞いた。
「どうしたの急に?」
「星沙か僕の行きたい場所に天ちゃんがいると思ってさ。二人で行きたい場所に天ちゃんがいるんなら僕らの願いが叶ったってことになるだろ」
「そういうことね。私はハウステンボスに行きたい。あなたは?」
「さっき観覧車に乗りたいと思った」
「ロマンティックね」
「言うな。言うの恥ずかしかったんだ」
「観覧車で良いならハウステンボスに確かあるわ」星沙は意地悪く笑った。
僕は少しからかわれてると感じた。
「それは良かった。ならハウステンボスで天ちゃんを探そう」
「失礼致します。食後のコーヒーとケーキをお持ち致しました」ショートボブの店員が丁寧に素早く僕らのコーヒーカップにコーヒーを注いだ。
店長はホールケーキを持ってきてくれた。
歌のお礼らしい。
僕らはホールケーキを2人分だけ切ってもらった。
「このケーキはあの時も食べたね」僕はフォークを突き刺した。
「初めてここに来た日ね」星沙も突き刺した。
「日本に初めてレストランを出すために僕の勤めていたホテルに君が来ていた」
「そこそこ大きくておしゃれなホテルだったから丁度良かったのよね。選んだのは天ちゃんだけど」
「パンダに決めてもらったのか!?」
「決めたのは私よ。候補は部下が見つけ出して、天ちゃんが選んで私は条件に合っているかどうかを確かめて決定したの。成功しても失敗しても私がしたことって思われるし、実際にそうでしょ?」条件が現実的なビジネスの話だということがわかり、何となく決めたわけじゃないとわかった。
「ご馳走様」
「ご馳走様でした」
「さ、星沙の家に戻って朝一で出発しよう」
「あら、何を言ってるの?」
「何?」嫌な予感がする。
「夜ピクに決まってるじゃない」
「夜ピク?」
「夜のピクニックよ。まだ22時前だから佐世保に行けるわ」
「今からか?」
「そうよ。夜ピクよ」
「そうだね。夜ピクに行こう」昨日から刺激が強すぎて休みたかったが、そんなことを言ったら天真爛漫拳法をお見舞いされると思い同意した。
勘定を済ませ、しきりに店長からお礼を言われ、また来てくださいと心から言われたように感じた。
タクシーを捕まえてくれ僕らは駅に向かった。
白鳥さんではなかった。
「何で急に天ちゃん探しにやる気が出たの?」星沙はカバンをあさりながら聞いてきた。
「星沙のお願いを聞いてくれて、星沙の傍にいてくれて、僕らを出会わせてくれて……」
「ありがとうが言いたい?」
「天ちゃんにもお礼を言わないとな」
僕らは夜のネオンに包まれた。星沙はDSを取り出した。
天真爛漫パンダ @katsuhira
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