第16話 決意
「おい、おい、嵐蔵!」
突然の声に驚いて頭を持ち上げる。
「眠ってんじゃねーよ」
いつもの様に、貼りついた窓越しにヤーモンが話しかけてきた。
やっぱりあの夢を見ていたようだ。
「どこ行ってたんだよ、探したぜ」
その後ろでドラゴンが静止飛行している。いつものオニヤンマの姿だ。そうだ。移動した後、はぐれたままになっていたのだった。
「ああ、悪い。ところであの後どうやって帰ってきたんだ?」
ドラゴンに問いかけた。
「さあな。気がついたらこいつの背中におんぶされてたのさ。ははっ」
ドラゴンの言葉にヤーモンが睨みを利かせる。
俺は笑いを抑え切り返した。
「俺はあのすすり泣く女の過去へ移動していたらしい」
「えっ? どうだった? どうだった?」
好奇心旺盛なドラゴンをヤーモンは一括する。
「うるせーよ。黙って聞け」
ガチャッ。
部屋のドアが空き、風呂上りのなっくんが入ってきた。
「嵐蔵、またヤーモンと話してるの?」
ヤーモンとドラゴンは窓の外でウロウロしている。
なっくんは腰を下ろし両手で俺の顔を優しく包んだ。
「不思議だよね。嵐蔵が僕の所へ来た事も、嵐蔵のご飯の中から鈴が出てきた事も、僕が見る夢も」
俺の頭を撫でるとなっくんは、意を決した様に立ち上がった。
「嵐蔵。明日神社へ行こうか」
俺は素早く立ち上がってから座り直した。
「今度はどんな事が起こるのか分からないけど行かなきゃね」
なっくんはそのままベッドに入った。
俺もベッドに飛び乗りなっくんの懐に潜り込んだ。
「おやすみ、嵐蔵」
おやすみ、なっくん。
窓のカーテンの隙間からヤーモンとドラゴンの姿が見えた。
奴ら、いつになく落ち着きがない。
多分明日もついて来るのだろう。それはそれでいいさ。
きっと奴らの存在にも何か重要な意味があるに違いない。
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