第5話 初陣
制服姿に戻り公園を後にした
「このあたり、だね」
ブランが高い声を響かせて小さく手を振ると、佐京達を取り囲む風景が妙なものへと変化した。何も無いところに浮かび上がる切れ目、その先には、
「変な場所……それに、目が疲れそう」
「
「あー、うん、平気。しっかし、なんでここってこんな変な風景なわけ? さっきは一面真っ白だったのに……」
「えっとそれは……だな……」
こちらを気にかける
「あ、あの、さっきはブランさんが自主的に張った結界ですけど、今回は外にできた魔獣の拠点に入ってるので……さっきのとは、また、違ってて……」
「あ、あぁ、そうなんだ。なるほど、ここはもう敵の縄張りなのか。……なんとなくわかりました。ありがとうございます」
「い、いえ、こちらこそすみません、勝手に話に入ってしまって…………」
おどおどした様子の
しかし、
――魔獣、って……どんなんなんだろう……俺、勝てるのかな。
現状、
「
「あ、大丈夫です。ちょっと、模様のせいで歩きにくいけど、割と平気です」
「そう? ならいいけど、
「は、はい……大丈夫、です! ありがとうございます!」
薙刀を両手で持ちながら、気遣わしげな面持ちで
――ここは……蜘蛛の拠点? だよ、なぁ。
小さいとはいえそこらじゅうに張り巡らされた蜘蛛の巣に魔獣との距離を実感していると、足元をカサカサと何かが通った。嫌なものを連想させる音につい床を見ると、そこには
「ヒッ――」
「あ、魔獣の手下だ。――えいっ」
普段滅多に見ない大きさの蜘蛛に思わず体を硬直させた
たった数秒の間に起こった目の前の光景に、暫し呆然とした
「すごい……」
「そうかな? へへ、ありがとう」
柔らかく瞳を細めた
「今のは『魔獣の手下』だね。単に『手下』とも呼ぶんだけど、これが出てきたってことは本体の魔獣は近いよ」
「……っ、これ、えっと、倒していいんですか」
「もちろん。言わば敵なんだからどんどん倒して、手下にも慣れて。
「あ、はい……」
優しげな面持ちから発された少し物騒な言葉に
「っ! ……やった……! やりました!」
「凄いね、おめでと」
「あ、ありがとう、ございます。……これくらいなら、俺にも、できそう……!」
消失した手下を見て、見事倒したことを確かめた
「……っと、それはいいけど、ひーくん達とは距離ができちゃったね」
「あっ、ほんと、ですね。すみません、俺のせいで」
「ううん、大丈夫。ひーくん達とはちゃんとこっちでやり取りしてるから」
「別に
『みっちゃん、
「
『そっちも? こっちも周りに結構使手下がいるんだよね。さっき、二体ほど僕と
『そっか。なら、そいつら倒して追いついてきて。僕も
『うんわかった。じゃあ、あとでね』
「あ、俺も、頑張ります」
『うん、みっちゃんとなら多分大丈夫だから、頑張って。それじゃ』
「せいっ! えいっ!」
《ギュイッ》《ピギャッ》《ピピッ》
「これ数多いな。ってかなんでこんな変な声なんだよ」
「手下って結構変な鳴き方するんだよねぇ。さて、僕も頑張らないとね」
「はぁ……数が多い! やっぱり一点突破で切り抜けた方がいいね」
「はっ、はい」
目を尖らせ長く息を吐いた
《ピギャァアッ》《ギュィイイ》
「ごめんね手下くん達」
「すげぇ、いかにも水の魔法っぽい……!」
「でしょ。あ、こういう技は味方にも効いちゃうから気をつけてね。多分これは濡れるだけで済むと思うけど」
「はっはい……」
わかりやすい魔法攻撃に高揚し目を輝かせた
それから、困ったような面持ちながらも
「うわ、これ気持ち悪っ! なんで、なんでこんなに追ってくるんだよ!」
「手下達は魔法使いの魔力を狙って付き纏ってくるんだよね。一体一体に大した攻撃力はないんだけど、人海戦術みたいな感じで無限に出てきて攻めてくるから、鬱陶しいんだよねぇ。……あ、そういや
「べっ、別に、恐怖症は……ない、ですけど、だとしても、気持ち悪すぎます!」
「だよねぇ。というか大丈夫? 疲れてきた?」
「いっ、いえ、だっ、大丈夫、です……!」
全力で腕と足を動かし、ぜぇぜぇと息を切らし声を荒らげて言葉を返す
何度も
「おーい、ひーくん!」
「みっちゃん!
「うんうん。もう、数が多くて大変だったよ〜。僕もちょっと疲れたし、
「あぁ、ホントだ。大丈夫?」
「
「あ、あぁっ……はぁ、だい、大丈夫……デス……てか、
無事合流し、明るい調子で会話する
不安げな面持ちで声をかけてきた
「っはぁ、これ、変身したら、身体強化されてんじゃ、なかったのかよ……」
「シンタイキョウカはされてるよ? でもタイリョクは基本そのままだよ」
「マジ、かぁ……」
「だからその、俺は最近放課後に走りに行ったりしてるんだ。佐京もどうだ?」
「……やるわ……こんな程度で、はぁ、へばってたら戦うとか無理なんだよなぁ……」
ブランの言葉に愕然し
「――と、まぁ、そんな感じ。
「こっちもかな。僕、結構波出したけどまだ余裕あるし、普通に魔獣叩きにいけると思う」
見た瞬間寒気すら感じるようなそのものに思わず
「サスガにあんなトビラはびっくりするでしょ? ダイジョウブ?」
「えっ、まぁ、気持ち悪いしびっくりはするけど、通るしかないんですよね? なら、行きますよ。平気です……」
――正直ゾワゾワするけど、ここで逃げる訳には行かないもんなぁ……。
胸の内で少し弱音を吐いたが、なんとか平静を装ってブランに返すと、相手はへぇ、と目を細め、
「じゃあ早く行こうか。
「はい!」
「わかり、ました」
飛永の指示に力強く返事をした恒良と対照的に、弱々しく返した佐京は、自分に気合いを入れ直すようにぺちぺちと頬を叩いて、魔獣本体の退治へ赴いた。
モノクロウィザーズ 不知火白夜 @bykyks25
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