第5話

「優?起きている?」


聞き覚えがある声だ、あぁこの十年ずっと聞いている声。


「結衣…」


戻ってきたんだ俺は本当の世界線に。


「あの優…実は私の心臓は…!」


「言わなくてもわかっている、結衣…辛い思いをさせてごめん…」


結衣を抱き抱えた、それは由奈が俺にやってくれたように優しく暖かく落ち着くように撫でた。

結衣も抑えられなくなったのだろう大粒の涙を流し強く握ってくる。

それに応えるかのように俺はずっと抱く。


今回俺は知った、過去を変える。

それはつまり今までの行いを否定することに等しい、それまでに掛かった時間も犠牲もすべてを無にするという行為。

そんな過ちの果てに俺が見たのは自分の醜さ。

だがそのおかげで気づいたのかもしれない未来という素晴らしさを………

『もどし屋』は過去を戻すのではなく。

夢に誘い、自分の過去をしっかり見つめ合う機会をくれることだったんだ,。

故に俺はもう止まらない。


一人じゃあない。


過去を改変する行為は人の尊厳を踏みにじむ行為である。

でもそこに友や恋人・家族が入れば踏みとどまれる、だから決して絶望をしないでくれ。

前を向いて歩く先にはきっと希望が待つ。





『あなたが戻したい過去はありますか?』


『改変するという行いはいつか自分の身を滅ぼす、それでも行こうとするなら私は止めません』


『ただ一つ考えてください、今のあなたを望む人がいることを…』


『さぁ過去に戻りますか?』

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