第6話 推理ゲーム
八乙女は途中、待ち合わせ場所らしき所で立ち止まると、八乙女グループメンバーが集まって一緒に学校へ登校していた。
特に何にもなかったので、真面目に授業を受け、昼休みになった。
「それでこれは何よ」
天音が唐突に文句を言う。
「焼きそばパンだが?」
「私はクリームパンとメロンパンを頼んだのよ!誰が焼きそばパンを頼んだって言うの!」
今俺たちが居るのは部活棟のベンチに腰掛けている。人通りが少なく、暖かい風が当たり心地よく感じる。俺たちは八乙女を常に尾行しないといけなく、八乙女が部活棟で昼食を食べるということなので、こうしてここに居るわけだが、天音の人使いの荒さといったら酷すぎる。
「流石にあの争奪戦に勝てるほど強靭な身体をしている訳でも、素早さを兼ね備えているわけでもない。焼きそばパンだけでも手に入れた俺に感謝して欲しい」
やっとの思いで手に入れたのにこんな仕打ちは胸が痛む。クリームパンがなくなり、メロンパンがなくなり、焼きそばが残り1個の所を、必死に手を伸ばして手に入れたのだ。その頑張りをねぎらってほしいくらいだ。
「はぁー、まぁ仕方ないわね。神崎くんには1ミリも期待していないし」
「だったら頼むな」
「私にあの戦場に行けっていうの?あんなむさ苦しい男子たちが押し寄せきて、私の色々な所を触ってきても神崎くんはいいって言うの?」
「別に構わないが」
「はぁー?神崎くんの存在価値はないに等しいのよ。だったら私の使い魔になりなさいよ。そしたら少しは存在価値を見出せるわ」
使い魔って天音はまだ厨二心を捨てきれないらしい。
「酷すぎるだろ。要するに俺は天音の奴隷になれってか?」
「そうよ。私の奴隷になれるなんて光栄だと思いなさい」
確かに天音みたいな美少女から奴隷になって欲しいと頼まれれば心良くなりたい人は山ほどいると思うが、俺がそうなってしまったらこいつに良いように使われて納得がいかない。
「誰がなるか。文句言うなら次から奢らないからな」
「わ、わかったわよ。神崎くんがどうしてもって言うから奢らせてあげるわ。神崎くんは焼きそばパンしか手に入れないから明日はしょうがなくパン屋じゃなくて食堂で良いわよ。特製大盛りスペシャル定食で勘弁してあげるわ」
焼きそばパン50円。特製大盛りスペシャル定食800円。随分と値上がったぞ。流石に、ほいそれとお金を出せない金額だ。
「特製大盛りスペシャル定食...。太るぞ?」
「余計なお世話よ。それで明日も良い?」
「明日だけな」
「明日もよ」
「明日」
「明日も」
「はぁー、わかったよ。奢る」
このままではいつまで経っても平行線だと思い、仕方なく諦める。
「よろしい!」
満面の笑みで喜ばれたら嫌な気持ちはしない。それに今まで見たことのなかった笑顔を見て、少しドキッとしてしまった。
そして、それまで2人の会話を冷めた目で見ていたまどかは、
「随分と仲良くなったみたいですね。昨日話したばかりですよね?気が合うんじゃないですか?それとも、もう付き合ってるんですか?」
「心外よ、まどかさん。私は奴隷に情は湧かないわ。ふざけないでくれない?」
「まどかさん...。い、いえ、私はまどかちゃんです!」
天音に名前で呼ばれたのがそんなに嬉しいのかにやけが止まらないようだ。
「そうだぞ、まどか。言っていいことと悪いことはこの世の中にはあるんだぞ。ちゃんと覚えておくんだ」
「まどかちゃんを子供みたいな扱いするのやめてください」
「でもよく分かりました。お2人は絶対に認めないんですね...。だったらゲームしませんか?」
「何のゲーム?」
「推理ゲームです。推理ゲームはまどかちゃんの得意分野で少々有利かも知れないですけど、私を小学生と思っている天音ちゃんはゲームをやらないって選択肢はないですよね?」
「い、良いわよ。私を見縊ったことを後悔しなさい」
「えぇ。良いでしょう。それで神崎さんももちろんやりますよね?」
「推理ゲーム楽しそうだな」
2人が乗り気なのでやるしかなさそうだ。
「良かったです!では、えーと、そうですね、じゃあ神崎さんと天音ちゃんが仲良いのか否かってのはどうですか?」
「それって推理すること?」
「はい。推理して、数人にアンケートを取るんですよ。それでお2人が仲良いいのかわかるんです!」
「そんなの仲良くないに決まって...。それに私たちを客観的視点から見るなんて出来ないわ」
「別に思うがままでいいんですよ」
「そうね。だったら仲良くないにするわ」
「本当にいいんですね?」
「えぇ。何の問題もないわ。ミジンコ以下のさらに下の存在と仲良いなんて思われていたら死にたいわ」
「わかりました。それで神崎さんは?」
「仲良いに」
「分かりました。ではー」
「ちょ、ちょっと神崎くん?私と仲が良いって?ふざけないでくれない?」
俺の回答に違和感を覚えたのか、天音が言葉を遮り、問い詰めてくる。
「いや、考えてみれば分かるだろ」
「私ももちろん仲良いに1票です」
「考えてって、どうしたらそんな考えが出るの?」
「普通にまどかがそう言ってるんだ。俺は認めないが周りはそう思ってる。最近クラスで天音とは話すし、周りからもそう思われても仕方ない」
「で、でも...ま、まだわかんないわ」
「そうですね。ではお昼も食べたことだし、クラスの人たちに聞きますか!」
「そうだな」
「えぇ」
そして、俺たちはクラスでアンケートを取り、仲良いが98%、仲悪いが2%となった。
「な、何で!」
認められないのか、天音は納得いかない様子だ。
「認めるしかないですよ天音ちゃん」
「わ、私はそんなこと思ったりしてないから」
そこまで全否定しなくても良いと思うが、俺だって少しは傷つく。
「知ってますよ。天音ちゃん散々言ってますよね。それにこれは周りがどう思っているかの推理で自分ではないんです」
「そ、そうね。私は思ってないから、絶対に...」
「では切り替えていきましょう!未来ちゃんの秘密を暴きに!そして、犯人を捕まえに!」
「そうだな」
「気持ちを切り替えないと行けないわね。今回は私の負けということでまどかさんの指図に素直に従ってあげる!」
そして、午後の授業も八乙女を監視し続けた。
学校一の美少女が死んだので過去に戻って、彼女を殺した犯人を見つけます。〜俺と犯人を探す相棒はドSでうざったい〜 神崎夜一 @guiltycrow
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