第8話 そして

 私は、歩に会うことにした。

 縁切屋の話をしたら「何それ」と云われた。

 ストーカー被害にも遭っていないそうだ。

 縁切屋にまつわるもの全てが消滅したのだろう。

 しかし歩の彼氏は実在していた。

 私のSNSのフレンドにもいた。


 私は勇気を出して云ってみた。

「歩の彼氏、知らない女の子とツーショットで写真アップしてたよ。そういうのどうかと思うんだけど……」歩の反応を伺う。


 歩はしばらく黙っていて「そうだよね」と云った。

「彼はフレンドリーでフランクな人だから、そういうのに反応していたら嫌われるかと思って見ないふりをしていた。でも本当は、すごく嫌だった」歩が泣きそうな顔で云った。

「京華、云いにくいことを云ってくれて嬉しいよ、ありがとう」歩が泣きながら笑った。


 歩は彼氏に自分の気持ちを話すと云っていた。

 ここから先は歩と彼氏の問題だ。


    〇


 歩と別れて、そのまま散歩をすることにした。たまにはいいだろう。

 公園があった。

 子ども用の遊具が少し置いてあり、ベンチもある。

 そういえば晴れた日に、親子連れがいるなぁ。

 今日は曇り空だからか、誰もいない。

 私はふと、公園の車道に面した入り口を見た。

 車は通れないだろうが、子どもがそのまま飛び出してしまうサイズだ。

 

 私は公園の管理事務所の電話番号を調べた。

 何か対策が出来ないかと思って。

 誰かが来た。高校生位の女の子と、小学生の女の子二人組だ。

 多分姉妹だろう。小学生の女の子ははしゃいでいる。

 高校生の女の子は歩きスマホをしている。

 私は何となく、入り口にいた。

 しばらくこのままだったら、あの子たちに話しかけるだろう。

 ここから飛び出したら危険だよって。


 遠くでラベンダー色のレースが飛んでいた、ように見えた。

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縁切屋 青山えむ @seenaemu

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