第7話 お別れ
人生に迷ったら、妖精に質問をする。
他の人には出来ないことが、私には出来る。
私の人生、何の不満があるのだろう。
縁切屋が何か云っている。
恐怖は立ち向かえば減らす事が出来る。誰かが云っていた。
勇気を失うこと、それが本当に怖いことだって。
恐怖にいつまでも追われたくない。逃げない。消してやる。
「縁切屋、依頼するわ」私は縁切屋を見つめて云った。はっきり云った。
「おや、意外ですけれどもお受けしましょう」縁切屋は真顔で云った。
「全人類と縁切屋の縁を切ること、それが依頼よ」私は静かにはっきりと云った。
縁切屋の顔が少し歪んだ。私も揺れた、気がした。
「何を馬鹿なことを……」そう云いかけて、縁切屋はいきなり消えた。
縁切屋が消滅した……人間じゃなかったの? 私は呆然としていた。
「悪の心につけこまれたのよ」妖精が現れた。
「妖精! っていうか、少し薄くなってない?」ラベンダー色が、半分位透明になっていた。
どうやら今の縁切屋が消滅したパワーで、この辺の空間が歪んだらしい。
それに伴って妖精も、自分の国へ強制送還されると云っていた。
嘘、縁切屋だけが消えればいいじゃないか。どうして妖精まで。
急な出来事に、私は泣きそうになっている。
このままここにいても危険だから、安全の為の強制送還だと云っている。
「京華よくやったわ。人間とも妖怪ともとれない厄介な縁切屋を消滅させたことは大きな功績よ。亰華の勇気よ」妖精は今までで一番綺麗な笑顔で云った。
妖精、私は哀しむばっかりで。でも妖精は私を称える。
こういう所なんだよね。私は自分の気持ちばかりを優先させる。
妖精と過ごした日々を思い出した。
妖精はいつでも私の話を聞いてくれた。
妖精が自分の感情をぶつけてきたことは無い。
「妖精、私、一人でもっと考えるよ。そして自分の答えを見つけるよ」私は妖精を見つめて云った。
妖精は微笑んで私を見つめた。
妖精が段々透明になっていく。
妖精が安全な所へ行くなら喜ばなくちゃ。
〇
「さっきの地震? びっくりしたねー」誰かの声が聞こえる。
男女が四~五人、飲み屋街から帰ると思われるグループだった。
私は駐車場にいた。
時計を見たら、夜十一時二十分をさしていた。
地震というのは、先ほどの消滅パワーだろう。
夢じゃなかった。
つまり、妖精がいなくなったのも事実だ。
喧噪が聞こえる、だから静かだ。
私は車の中でしばらく、一人で泣いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます