7話_願望を叫んで

「つまり、死んだ目ってのは感情を殺すってことか」

無地の本を机に置き再度つばきに話しかける。

「うん。感情が高まって世界が滅びることでも祈れば滅んじゃうからってことだと思う」

命を削るという時点でデメリットが大きすぎたのに、それ以上のようだ。

「なんかもっと能力について秘密がありそうだな」

「まぁあるような書き方してるものね」

どうでもいいと言わんばかりにつばきは肯定する。

「だから...私とは関わらない方がいいのよ」

いきなり俯きながら声のトーンを落とす。いかにも悲しい声だ。

「それも関わってもらうこと前提か?」

「そ、そんなこと...!!!」

違うということは分かっている。だが心底関わっては行けない。関わりたくないと思っているとは思えない。

「話が飛躍しすぎてるんだよ。感情が高ぶってはいけないだけでどうして俺と関わってはいけないことになるんだ」

「それは、迷惑をかけるかもしれないし」

「それだけなら俺の記憶をいちいち消す方が俺にとっては迷惑なんだが」

記憶を消されると取り戻すためにあんなに時間がいるとは想定外だ。しかもクラスや先生などの記憶も消していたのだから余計に。

「私と関わったら世界の破滅に繋がるかもしれないのよ?」

「なら、お前はどうしたいんだ」

このままぐちぐちと話していてもらちがあかないため気になっていることをそのまま聞く。

「へ?」

「お前は人と関わりたいのか。それとも関わりたくないのか」

半ば告白のようになっているが、見て見ぬ振りをする。

「わたしは...」

「正直会って1ヶ月くらいのお前を別に好きなわけじゃないし、告白するつもりもない。だけどお前が生きたいように生きれないのは納得いかないんだ」


「でも、世界が...」

どこまでもそこが気がかりなようだ。今にも逃げ出したそうな顔をしている。


「世界がどうこうじゃない!!お前がどうしたいかだ!!」

気づけば口が勝手に動き叫んでいた。

「この際世界のことは考えるな!!お前のしたいことを考えろ!!お前のしたいことを言え!!」

もう命とか世界がどうなどと言う問題は視野には入っていない。いや、入れられないと言ったほうが正しい。

「私は!!」

ようやくつばきが口を開き、言葉をこぼす。

「私だって!!人と関わりたい!!」

これは他の例えが見つからないほどの本音のよう。

「じゃあ関わればいいじゃないか!!」

「記憶もなにもない私にそんな手段なんてない!!」

「じゃあ目の前にいる俺はなんだ?!」

「へ...??」

「お前にわざわざこうやって関わってるんだ!!その時点で俺はお前を必要としてるんだからお前の存在意義はあるんだよ!!」

「っ?!」

「お前はお前のしたいことをすればいいんだよ!!世界なんて考えるな!!世界が滅びそうになっても俺がなんとかしてやるよ!!心配すんな!!」

確実に世界が滅びそうになると特別な能力を持っていない限り無理だが、この際そんなことは言ってられない。

「私は、人と関わってもいいの...??」

「当たり前だろ」

「世界を滅ぼしそうになっても...??」

「しつけぇな。じゃあ言い方を変えるよ。俺の願望を叶えろ」

「え?」

「俺の願望はただ一つ、お前と関わる。友達になる」

今更恥ずかしいことを言っている気分になるが押し殺す。

「そっか...分かった!!」

なにが分かったのかよく分からないがつまり関わりを切らないということなのだろう。ならひとまず安心だ。








ーーそう思ったのも束の間。

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