笑って。

天密

第1話

グリュックは、貴方に笑っていて欲しいと思っています。その方が、グリュックも、嬉しいのです。


「ゲミュート!おはよう!」

「ああグリュック。おはよう」

グリュックとゲミュートはとても仲がいい。正反対の性格である二人が、どうして仲良くなったのだろう。その話を、今回はしよう。

ゲミュートはずっと一人だった。真面目な性格のせいか、周りから嫌われている存在だった。ゲミュート本人はずっと友達が欲しいと思っているのに。

それとは逆に、グリュックはいつも周りに人が居た。明るい性格で、誰にでもフレンドリーで。ゲミュートとは真逆の存在だった。ある時、グリュックはゲミュートを遊びに誘った。ゲミュートは

「遠慮します。君たちと遊んでいる暇はないので」

と返した。またやってしまった、とゲミュートは後悔する。グリュックの周りの友人たちは、

「行こうぜ。あいつ、いっつもああなんだ。」

「ふーん。そっか」

グリュックは、友人がいないゲミュートに興味を持った。

(なんで俺の周りには人が集まるのに、あいつの周りには人がいないんだろう。)

グリュックは不思議でならなかった。同じ人なのに、なぜこうも友人の対応が違うのだろうか、と。

グリュックはそれ以来、誰かと遊ぶ度に、ゲミュートを誘った。グリュックはその度に友人たちに、

「また誘ってるのか?懲りねぇやつだな」

「どうせ来ないよ。行こう」

「ゲミュートがいない方がきっと楽しい」

と言われた。それでもグリュックは諦めなかった。

ある時、グリュックは小さな公園で、ゲミュートが一人、ブランコに座っているのを見つけた。グリュックは静かに、ゲミュートの隣のブランコに座る。ゲミュートの顔を覗き込むと、泣いていた。声を殺して、静かに。

「ねぇ」

声をかけると、ゲミュートは驚いた顔をして、グリュックを見た。

「ゲミュート、だったっけ?」

「なんで、僕の名前」

「知ってるよ。だって俺だもん。」

グリュックはそう言って、小さなノートを取り出した。

「なんですか、それ」

「人の名前と、その情報。俺の父さん、情報屋なんだ。だから、同じ学校の人達はみんな知ってるよ。」

ゲミュートは非常に驚いた。父親が情報屋とか。怪しすぎる。

「それって、違法なんじゃ、、」

「これ、他の人には言っちゃダメだよ?秘密なの、忘れてた」

グリュックは唇に人差し指を当て、ニヤリと笑う。

「ああそうだ。俺はグリュック。名前の意味は幸せ。よろしく。」

「よろしくって、、、」

グリュックはブランコから立ち上がり、ゲミュートの方を振り返る。

「はい!俺は君の記念すべき友達第一号!」

「友達になったつもりはないんですけど?」

ゲミュートも立ち上がり、グリュックの方を真っ直ぐに見る。

「ええ、、、もう友達でいいじゃん。欲しかったでしょ?友達」

「欲しくない、、、っていえば、嘘になりますけど」

「友達が欲しい、一緒に遊びたい。でも、できない。だから泣いてたんでしょ?」

ゲミュートはハッとする。その時に、なぜ自分が泣いていたのか気づいたのだ。

「そうか、、、僕、誰かと遊びたかったんだ、、、」

ゲミュートの目から、涙がボロボロと溢れてくる。

「わ。また泣いた」

グリュックはゲミュートに歩み寄り、涙をぐしぐしと拭いた。

「ほら、笑って。笑った方が、君も楽しくなるし、俺も楽しくなるよ!」

「、、、ありがとうございます」

ゲミュートは言う。するとグリュックははにかんで

「どーいたしまして!!」

と言った。

これが、グリュックとゲミュートの最初の話。初めて友達ができたゲミュート。初めて人と向き合ったグリュック。二人は笑う。今日も、明日も、もっと先の未来も。

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笑って。 天密 @amamitukesin

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