『伝説の戦士』が戦う怪物が現実に現れたお話

月天下の旅人

ある自衛隊員のお話

 俺は目の前に怪物が現れたのを見た。


 熊よりもデカく、狼よりも凶暴。木を容易く破壊するその力はゴリラにも似ていた。


 それでいてまるでデフォルメされたような容姿は、さながら日曜朝8時30分からやっている……


 これは政府うえに提出する資料でもあるから版権とかの関係で『伝説の戦士』と呼ばせて貰うが。


 ともかくそんな『伝説の戦士』が戦っていておかしくないような怪物。


 そんな奴相手じゃ、幾ら自衛隊員の俺でも丸腰じゃどうしようもない。


「発砲許可は出たか?」


「それが、あの怪物に人が捕らえられられているという情報も!」


 駆け付けた警察官は慌てふためいていた。


 確かあのアニメ、中に人を取り込むタイプの怪物も居たはずだ。


 それが現実に起きているということは『捕らえられられている』という表現が一番合うだろう。


「このままじゃ町が滅茶苦茶だぞ。せめて足は止めるんだ!」


「分かりました。てーい!」


 警察官は怪物の足を狙うが、その弾丸はいとも簡単にした。


「何だ、何が起きているんだ!?」


「目の錯覚とかじゃない。弾丸が!」


 ますます『伝説の戦士』が居る世界の怪物っぽいが……


 居るのは怪物だけ。『伝説の戦士』なんてこの世界に……


「大丈夫!?」


 と思っていたらピンクでフリフリの、いかにも可愛らしい女の子受けしそうなデザイン。


 それで居て男性が着ても可笑しくないようなユニセックスなコスチューム。


 それを纏った人物は男性とも、女性とも捉えることができる容姿で。


 まるで『伝説の戦士』がアニメから飛び出してきたようだった。


「君こそ、あの怪物は……」


 警察官は制止するが、その人物は怪物の攻撃をいとも容易く受け止める。


「なっ?嘘だろ、あの怪物は木を木端微塵にできるんだぞ!」


「君は一体……誰なんだ?」


 その人物は『ケトル』と、そう伝えると怪物に立ち向かう。


 後は更に三人が加勢し、それぞれが思い思いに戦っていた。


 常に優勢というわけではなかったが、危なげなく怪物を倒す四人の雄姿……


 さながら『伝説の戦士』と形容してもいいくらいだった。


「おい、過去の報告書の見直しはもういいだろ。今から俺たちは戦いに行くんだから」


 そう、俺達はあれから……怪物を倒すための任務を請け負うことになった。


 とはいっても『伝説の戦士』が戦うようないわゆるボス格の連中を相手にするのは無理だ。


 それでも俺たちはあの四人組の後顧の憂いを断つべく、街を守るのだ。


 もちろん政府うえはそんなこと知らない。


 怪物が一斉に押し寄せてくるのを見て、それでその排除を命じただけだ。


 幸い、俺たちが戦うのは人を取り込まず戦闘力に特化させたタイプの怪物だ。


 そういう輩が相手なら戦車や戦闘機の火力があれば存分に暴れられる。


 だから俺たちは、誰ともなく号令した。


「さあ行くぞ。『伝説の戦士』が居ないその間、俺たちが町を守るんだ!」

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