よくあるカクヨムコンテスト批判のひとつ。

2021年12月12日


 どうも、あじさいです。

 おひさしぶりです。


 後から読んだかたにも分かりやすいように、最初に日付を付けてみました。

 邪魔なようであれば外します。


 筆者がカクヨムを始めたのは2020年1月末でしたから、このエッセイはもう2年近く連載中のままということになりますが、何ヶ月もけることがこう何度もあるものを「続いている」と言って良いのか、少し悩みます。

 以前の記事で、筆者は新しい小説の執筆にチャレンジしています、という話をしましたが、覚えていらっしゃるでしょうか。

 覚えていらっしゃらない?

 大丈夫です、筆者も逆の立場ならまず覚えていないでしょう。


 あのときはシリアスとコメディの2パターンで新作を考えていて、先にシリアスに取り掛かると言ったのですが、実際に今書いているのはコメディの方です。

 文字数だけなら既に10万字を突破しました。

 とはいえ、さらりとした読み心地を目指して変則的な書き方に挑戦しているので、小説と呼んでよいのかあやしい代物しろものです。

 冗談じょうだん謙遜けんそんではなく本気マジで、どこの文芸賞に応募しても「小説の体裁ていさいも整っていない」と言われて1ページ目ではじき落とされることでしょう。

 それでも読んでくれるかた向けの軽い作品です。

 ですから、今回のカクヨムコンテストも、昨年同様、無理に応募することはないかな、と思っています。




 このエッセイにも書いたことがあるように、筆者がカクヨムを始めたきっかけは2年前の第5回カクヨムWeb小説コンテストに応募するためでした。

 しかし、「言っても仕方ない悪口」にはなりますが、カクヨムコンテストについては、知れば知るほどげんなりしてきます。

 客観的にはきっと負け犬の遠吠えに見えると思いますが、それでもあえて言わせてもらえば、歴代の受賞作を確認したところで、タイトルの時点で興味をがれるものばかりです。

 ご存じの方も多いと思いますが、昨年のタイトルは特にヤバいです(https://kakuyomu.jp/contests/kakuyomu_web_novel_006)。

「今のカクヨムで最高の作品はこれ!」

「皆さんもこういう作品を書いてください!」

「私たちはこういう作品を最優先で書籍化します!」

 と、カクヨムの運営と協賛したレーベルが宣言しているのだと考えると、嫌悪感と同時に絶望感をも覚えます。


「えー、そうかな? 面白そうだけどな」

「実際に読んでみたけど、面白かったよ」

 と思う方がいらっしゃったら、すみません。


 ですが、筆者は歴代の受賞作を見ても、「なるほど、これはセンスのかたまりだ。カクヨムでならこれ自体も、これに似た系統の作品も無料で読めるだろうけど、自分はあえて1000円払って読んでみたい」と思える作品はひとつもありません(実際1冊も買ったことありませんし、密林ア〇ゾンのカートにさえ入れたことないです)。

 ましてや――身の程知らずな言い方にはなりますが――、「これはたしかに拙作より完成度が高くて面白そう。これと肩を並べられるものを書くためなら、自分が構想中の物語や、小説を書くときの文体を捨ててもいい」と思えるようなタイトルにも出合えていません。


 いえ、分かります。「中身を読んでないくせに何言ってんだ?」と思われることでしょう。

 でも、本って期待通りの出来栄えクオリティでなかったとしても返品できませんし、クレームを入れたところで作者さんや編集さんが非を認めて謝罪してくれるわけでもありません。しかも、同じ1000円を持ってブックオフに行けば旧作が最大9冊買えますし、無料でマンガを読めるアプリを駆使くしすれば、似たような作品のコミック1巻分くらいは無料で読めるかもしれないのです。

 それでも、ですよ、その作品に期待して、作者さんと編集さんの仕事に敬意を払って、読書体験のために1000円を出す――今の時代に新文芸の書籍版をわざわざ新刊で買うというのはそういうことです。

 そういう「商品」として売り出す作品のタイトルがこんな調子なんて、あんまりじゃないですか。

 賞を取って書籍化・コミカライズされる作品は、本当にそれに見合っているだけのクオリティに達しているのか。

 同じ予算と労力で、もっと優先して書籍化すべき作品がカクヨムには本当にないのか。

 もちろん価値観は人それぞれですが、筆者はそこがどうにも信じられません。




 今年のコンテストにしても、一次選考を突破するのであろうランキング上位層、皆さんはご覧になりましたか。

 コンテストの公式HPには「通常の新人賞では現れない・応募できないような、新しい作品にもチャンスがあります」と書かれていますが、少なくともタイトルだけで言えば、大半が流行りの異世界ものと官能小説もどきの男性向け小説です。

 さすがにタイトルそのものは出しませんが――、

「俺の魔法/スキルはハズレと思われてバカにされてきたけど実は最強だった」

「前世で/過去にひどい目にったからこれからは好き勝手に生きる」

「チート能力を手に入れたけど目立ちたくない」

「ひょんなことから俺にハーレムができた」

「あっちの美少女に振られたらこっちの美少女に好かれ始めた」

「美少女を拾った/お姉さんに拾われた」

 ……こんなのばっかりです。

(もちろん、流行りやテンプレが必ずしもそれ自体として悪いわけではありませんが、その話はこのエッセイの以前の記事で散々語らせていただいたので、今回は割愛します。)


 カクヨムコンテストが魔窟まくつしている最大の理由は、まず間違いなく、一次選考に「読者選考」があるせいです。

 多くの人の目にまらないといけない、とにかくページを開いてもらわないといけない、ということで、知性も品性もプライドもかなぐり捨てたようなタイトルが最適解となっているのでしょう。

 たしかに、ビジネスとしてそれが最適解であるからには、そこに順応するのがマーケティングであり「合理的な判断」ですから、筆者みたいにぐだぐだ言うだけで何もしないのは最もつまらないタイプの感情論、ということになります。

 ――カクヨムが金儲けビジネスの場として純化されて、それ以外のものが埋没まいぼつしていく一方だとしたら悲しいなと思いますが、これも感情論ですね。

(ただし、☆が少なくてもPVが少なくても一次選考を突破できる場合もあるそうです。ご興味がある方はこちらのエッセイをご覧ください。

 三谷朱花『『カクヨムWeb小説短編賞2020の中間選考に残った理由』を聞いてみた。』 https://kakuyomu.jp/works/16816452219455106659




 もちろん、タイトルだけ良くても継続して読まれなければPVも☆も増えませんから、ランキング上位であるからには、実際に読んでみれば、タイトルよりずっとセンスが良く、文章がきれいで、設定も筋書きも心理描写も高レベルな作品が多いのでしょう。

 多いのでしょうね、たぶん。


 実際、自分で挑戦してみると、テンプレや流行をなぞりつつ独自色も出して物語を書くというのは、見かけ以上に大変です。

 読みやすい文章を書くのも、物語の序盤で主人公の魅力を分かりやすく提示するのも、主人公を取り巻くキャラの個性を設定するのも、作った設定に矛盾しないように話を進めるのも、登場人物たちの感情に波を起こしてドラマを作るのも、物語のテーマに答えを出すのも、――YouTuberのレビュー動画やその視聴者はそれらができていない書籍化作品・コミカライズ作品を酷評こくひょうするわけですが――簡単ではありません。


 とはいえ、

「テンプレ小説を書く人たちも大変なんだ、酷評するくらいならその前に自分で書いてみろ」

 だとか、

「テンプレ小説や官能小説もどきで多くの読者を獲得できる書き手さんはすごい」

 などと言う気はさらさらありません。

 筆者が難しいと言ったのは、どうやらWeb小説のテンプレ要素は物語に重要な(はずの)葛藤かっとうや向上心、正義感などの要素を排除してしまう傾向にあるので、そもそも物語を作り込みづらい、といったような意味です。

(悪役令嬢もののように、あらかじめ決まった筋書きがあって主人公がそれを壊そうとする物語は、その設定自体に葛藤が含まれているので、もしかすると例外的かもしれませんが。)


 ランキング上位の作品は、そのあたりの難しさも上手くクリアしているのだと思います。

 何せ、ランキング上位ですからね。

 もし出来ていないなら、ランキングの意味ないですもんね。

 ――いて確かめたいとは思いませんが。




 長々と悪口というかうらみつらみを述べてきましたが、筆者は選考方法と受賞作に不信感があるだけで、カクヨムユーザーの皆さんがコンテストに応募するのは、(必死になりすぎて不正行為チートやギリギリなことをしない限りにおいては)良いことだと思っています。

 一種のお祭りですよね。

 祭りの結末がどうであるにせよ、目標を設定してそれに向かって努力したり、技をきそい合ったり、健闘をたたえ合ったりするのは良いことです。


 おそらくですが、カクヨムの運営も、受賞作を大々的に売り出してひともうけしようと本気で考えているわけではなく、カクヨムというサイトを盛り上げて作品数とユーザー数を増やし、広告収入やプレミアム会員を増やしたいだけなのでしょう。

 カクヨムが規模を拡大するということは、魅力的なユーザーや作品と出合える可能性もそれだけ増えるということのはずです。

 そう考えると、まあ、望ましいことなんじゃないでしょうか――たぶん。




 今回はこの辺で。


 本当は「カクヨムコンテストの参加者を応援したくても、レビューコメントを書くのは苦手なままだし、誤字の報告を送りつけると他の読者が見たときどう思うか分からないし、どうするのが正解なんだろう……?」という話をしたかったのですが、そこまでたどり着けませんでした(笑)

 我ながら、過去の受賞作をこんなにも強く否定することになるとは思いませんでしたが、その辺りにはずっと違和感がありましたし、今までにも流行りのテンプレ小説の批判を書いてきたので、もう隠しても仕方ないと思うことにします。


 それに、そもそもWeb小説の書籍化やコミカライズは、作品が見下されたたかれることで商売として成立している節があるようです。

 このことは、姫乃只紫さんという方が、エッセイ『一見、悪徳に見えて、ただ小説を勧めているだけの男』(https://kakuyomu.jp/works/1177354054896176243)の「【なろう】なろう系が注目される理由(のひとつが)がわかった気がする」、および「【なろう】なぜ僕らは(読んだこともない)なろう系を平然とブッ叩けるのか」という記事に書いていらっしゃいます。

 そうであるなら、筆者のような者に非難されるのも「想定内」ということになります――。

 ですが、すっかり長くなったことですし、仮にその話をするにしても別の機会にさせていただきましょう。


 ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

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