第2話 六つ色の髪
僕とレイナは、「「ただいま戻りました。」」と言って、家の扉を開けた。
台所から出てきて、
「カンデにレイナ、おかえりなさい。」
と僕たちにやさしく微笑みかけたのは、アンドレア。レイナと同じ金髪を持つ、レイナの母だ。
アンドレアについて歩き、居間に入ると大テーブルに、座って裁縫をしていた姉たちに、
「「おかえり。」」
と挨拶される。
奥に座っているのが赫髪の長女アネシュカ、手前は銀髪の四女ベドジシュカだった。
僕とレイナは、
「「ただいま。」」と
と挨拶をする。親と子の礼節は守るが、兄弟姉妹の間は年に関係なくなるべく仲良く対等な言葉遣いをしなさい、というのが、ラディール家の家長であるカリスト父上・レンフルー・ラディールの方針だった。ラディール家の皆は、素直に従っている。
ただし、例外がある。末娘のレイナである。ラディール家は19歳のアネシュカから8歳のレイナまで10名の兄弟姉妹から成る大家族である。そのうち、長女のアネシュカから第9子のカンデまでの産みの母は、カンデを産んだ後に流行り病で亡くなってしまったルドヴィカである。その後、1年ほど後に,旧アンスバッハ伯爵家令嬢のアンドレアが、カリスト父上と再婚し、レイナを産んだ。僕の面倒の大半は当時12歳になったばかりのアネシュカが見てくれて、アンドレアは伯爵家のアンドレアの母がしてくれたようにレイナを大切に育てた。レイナの言葉遣いは、伯爵家のとても丁寧なもの。家の中で一番小さく愛らしいレイナの丁寧な言葉遣いを、家の者は皆、微笑ましく聞いている。
かくして、大家族の騎士爵ラディール家では、父と兄弟姉妹9人の計10名は武を重んじる家の者としての言葉遣いで、母アンドレアと末娘レイナは姫君となる者としての言葉遣いでそれぞれ話すのだった。
次いで、近隣の街モイネシュの商家で手伝いを始めた五女、六女、七女のアンジェリカ、アマビスカ、そして、モニカが帰ってきた。三つ子である3人は、整った顔つきも髪型もほとんど同じである。共に水色の髪を持つアンジェリカとアマビスカは、僕の目には全く見分けがつかなかった。七女のモニカの髪の毛は黄金色なので見分けがつくけれども。
3人におかえりを言った僕は、転生してはじめておトイレに行った。
用をすませると手を洗うところに鏡があって、僕は、僕が銀髪であることを確認した。カンデの記憶をたどり、家族皆の髪の毛の色を確かめ直す。カリスト父上と兄カルロス、それに四女のベドジシュカは、僕と同じ銀髪。兄カジョタノと、三つ子の姉のうちのアンジェリカとアマビスカは、
世紀末の世界では、保育所のみんなはほとんどが黒髪だったこともあって、僕は不思議に思っている。たしか、銀髪はいろいろな髪の色を引き出す、というのが、カリスト父上の説明ではあったが。
ちなみに、子沢山の家であるラディール家では、第四子である姉ベドジシュカが四女、三つ子の第五子、第六子、第七子は、五女、六女、七女と数字をあわせて呼ぶようにしている。世間一般の呼び方ではないらしいが、子沢山の家では良くあることとのことだ。
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