人間の赤ん坊を拾った竜のおとぎ話。を、子に読み聞かせる母親のお話。
お話の筋そのものは真っ直ぐで、まさにおとぎ話といった風格がありました。
一種の貴種流離譚であり、異種間の絆を描いた逸話であり、運命に翻弄された親子の悲劇であり、強い怪物を討伐する竜殺しの物語。壮絶な戦いの場面もあり、主軸はどこまでも真っ直ぐで骨太です。
そこに結びの部分(正確には序章とのセット)で軽く捻りを加える、というか、ある種の種明かしをしてみせる。この瞬間の「短い描写で世界がぐっと広がる感じ」がとても好きです。
おとぎ話部分の壮大なドラマと、読み聞かせ部分の優しく暖かな雰囲気。このふたつの対比がうまく効いた、丁寧に組み上げられた作品でした。