波の音が聞こえなくなるころ
清水優輝
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波の音が聞こえなくなるころ
きみは呟いた
もうすぐここを引っ越すつもりだと
私は靴の中に入った砂が気になってしまい
真面目に聞いていなかった
真面目に聞けなかった
自動販売機のコーラが売り切れで
不機嫌になる
そんなこと本当はどうでもよかったのに
空には渡り鳥が飛んでいた
どうにもならないことが増えていく
私の手は小さすぎて すべては抱えきれない
出された宿題を解くことに必死で
目の前の問題は見えなかった
落ちてる石を拾ってきみに押し付けた
荷物が増えるといいと思った
きみは何かを言おうとしてやめた
あれから何年も経った今
私は歩いていた
行先が分からないまま どこにもたどり着けないまま
知らない顔 知らない体 知らない言葉
知っている人をずっと探している
お金をそこそこに稼いで毎日をやり過ごしている
誰も何も言ってこないから
肩を露出させた洋服だって着ちゃう
ちょっとくらい寒くても気にしない
あの町で貯めた500円玉貯金の最後の500円玉を
汚い海に投げ捨てた
ここの波の音はうるさくて嫌いだ
きみがいてくれたらまだましだったかもしれない
どうしようもない現実が私を責めてくる
私の心はだらしなくて 全部を飲み込んでしまった
カードの請求金額のことばかり考えて
今もまだ問題が解けないでいる
自動販売機は勝手に私の姿を見て
おすすめの商品を勧めてくる
嫌になってコーラを買うのをやめた
東京の鳩は追いかけても逃げない
波の音が聞こえなくなるころ 清水優輝 @shimizu_yuuki7
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