結果発表
お待たせしました偽教授稟性杯、結果発表のお時間です。今回は十二作品のご参加を頂きました。あと主催者自作が一作。
今回はグランプリ発表は後回しにして、寸評から参ります。作品順は順不同です。必ずしも参加順とかではありません。作者名は敬称略。
撃心無双流、推して参る/偽教授
https://kakuyomu.jp/works/16817139558580922656
主催者自作の小品。テーマがどうたらというより、なんかひたすらエロを書いた小説になってしまった気がするけどまあいいや。
ひとりの騎士が死んだ/つるよしの
https://kakuyomu.jp/works/16817139558879898324
なかなかの力作。読み応えがありました。ただ、物語そのものの構造を分析すると、この話の主役はヴェロニカそのひとであって、才能の断崖を主題にするというテーマへの回答はやや弱い所があるかなと。
アラベスク/尾八原ジュージ
https://kakuyomu.jp/works/16817139557831442397
このテーマに関していえば最もスタンダードな題解きといえるであろう「ピアニストの話」に、さらに直球ストレートを大振りのホームランにして打ち返すような打撃力のある作品。さすがにジュージさんは強い。
吠えろチベットスナギツネ、拳は高く、ポタラ宮さえ貫いて/藤田桜
https://kakuyomu.jp/works/16817139559041632758
やはり暴力。暴力は全てを解決する。ただテーマ性に対する回答として分析すると、「圧倒的天才性」なのか「そもそも土地の人なら割と誰でもできるようなこと」なのかよく見えてこない部分がある、というのがちょっと減点かな。でもなんというか、独特の感情的切なさが心地よい作品でした。
RAMAYANA/赤井風化
https://kakuyomu.jp/works/16817139557903655015
力作というか、なんというか、魂の叫びのようなものを感じた。よいものを読ませていただきました。作品というよりは回顧録のような雰囲気があるけど、それが故の力だと思う。
Saṃskṛta/赤井風化
https://kakuyomu.jp/works/16817139557971051960
正直、出題テーマからは多少ずれたところにあるんだけど、それはそれとして、非常に面白かったです。こういう世界があるんだなあ。何がずれているかというと、面白さの中核にある「彼ら」は訓練の賜物としての凄さであって、「天才性」という要素とは違う何かの産物だからですが、それはそれとしてやっぱり「良い知識を得た」という実感がありました。
これを優しさと呼ばないのなら過ちでもいい/けんこや
https://kakuyomu.jp/works/16817139558419709621
読み応えのあるドラマでした。小説として、そしてボクシング作品として巧緻についてはいろいろ指摘すべきこともあるのだけど、「才能の断崖を描いている」という点ではかなり強かったと思う。なんていうか、可哀想なんだよね、いろんな意味で。世界戦まで持ち込んだというのに、真正面から相手してももらえないなんて。いっそ1RでKOして、二度とリングに立てないようにしてやるような「気概」があればよかったのに、と思う。そして、であるが故にこそ企画趣旨に照らして強い。
黒き鏡の玉兎。/おくとりょう
https://kakuyomu.jp/works/16817139558437735819
BLは別にいいのですが、それはそれとしても、いまいち主題のようなものが明確でなかったかなと思いました。
魔女の楽園、猫を殺す雛/ぎざぎざ
https://kakuyomu.jp/works/16817139557905721497
第四回偽物川にお出し頂いた作品の異伝。常識的には避けた方がいい手法ですが、まあ同じ主催者の企画ですから今回について言えば問題はありません。「この先」を知っているからこそ、これ自体は辛く悲しい家族の物語ではあるんだけど、先に希望があることが救いとなる話でした。
そして、はち切れるほどに満たされる/羽生零
https://kakuyomu.jp/works/16817139558134813582
なんというか、ネット小説ではあまり見かけないタイプの大人の小説でした。ライトノベルではないのはもちろん、娯楽小説というのでもない。かといって「文学!」というタイプの作品でもなくて……現代小説とでも言うのだろうか。基礎的な文章力は高いしよく書けているとは思うんですが、本企画のテーマに対する評点を言えば正直あまり高くはないです。天才の物語というより、秀才と凡人の物語という感じになっているので。あとこれ……BLなの?確かに相手の方は同性愛者っぽい雰囲気を出してはいるのだけど。
黒の髪、銀の髪/myz
https://kakuyomu.jp/works/16817139558424347037
千年に一人!めちゃくちゃレア度高いな。というのがよい掴みになっていました。で、最初のあたり、どっちが「天才役」なんだろうと思っていたら、実は千年に一人の魔力を持つ語り手の方が秀才役を担当しているという構成にまた唸らされる。二人の感情的なもつれが実に密度が高くて、これは本当に傑作でした。
俺の脳ミソを喰って行け/外清内ダク
https://kakuyomu.jp/works/16817330647877161380
面白かった。すごく面白かった。小説として面白かった。だけど企画で求めた作品の主題とはちょっと違うテーマ性の作品だったかなとも思う。これ読んで一番思ったのは、悟空が宇宙の果てで大活躍しているのを漠然と知ったり知らなかったりしながら、武天老師は何を思っていたのかな、ということ。この作品のセツナというキャラクターは確かに本物の天才なのですが、天才と秀才の物語というよりは、天才を導く教育者の話でしたね。そこが作品としての良さでもあるんだけど。
最高の物語をあなたに/文月みつか
https://kakuyomu.jp/works/16817139559097632924
偽教授杯ではかなり珍しい、上限規定三万字を使い切っていただいた作品。ありがとうございます。圧倒的な天才性を持った天才という感じの話ではなかったかなとは思いますが、なんというか丸みを帯びたよい筆捌きだと思いました。
はい、というわけで寸評はここまでです。では結果発表と参ります。
どぅるるるるる(自前ドラムロール)
でーん
偽教授稟性杯、はえあるグランプリは!
myzさん『黒の髪、銀の髪』に決定です!
どんどんぱふーぱふー
なお、特に何も出ません。
選出の理由をもう一つ書いておきますと、やはり二人のキャラクターによる感情の描写の密度という点で頭一つ抜け出しておりました。
今回は各賞をもう一つ出します。
外清内ダクさん『俺の脳ミソを喰って行け』、
えーと賞の名前どうしようかな……じゃあ「プラチナ賞」に決定します!
というわけで偽教授稟性杯はこれで終了です。
今やってる企画「偽教授少年杯」もよろしく……って、あと数日で終わりだけど。
ではまた。ではでは。
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