願わくば、君の幸せ。

吉川はるひ

思い溢れて。愛してる、大好きの君を。


私にとって大切な誰か……

その誰かのために流した涙はどれくらいか。

今の私に涙はない。

ただ深い思いがある。

私はずっと、アイツが好きだった。

鈴木 羽斗吏は私が恋する大好きな幼馴染。


この先も… ずっと。


「 羽斗吏~ スマホ落としたー!」

「 また… なんでお前はすぐ落とすんだよっ ちゃんとカバンに入れとくか手に持ってろ!」


羽斗吏は家がお隣さん。

ちなみにうちは2階建て、羽斗吏のとこは3階建てだ。

しかも羽斗吏の部屋にはロフトがある。


この私、猪瀬沙和、私の恋は絶対に…実らない。

幼馴染みだからって彼女に昇格するなんてそう簡単な現実はない。


「 沙和、どこで無くした?」

「 わかんない 」

「 あのなぁそのボケ何とかしろよ、俺今日はデートなんだよ 」


……だからだよ。

羽斗吏はいつも誰かのもの。

私ではない、誰かのもの。


それがどんなに悔しくて辛くて、たまらないか……

羽斗吏は知らない。

こんなに近くにいて、幼馴染なのに……

羽斗吏はいつも私じゃない女を選ぶ。


近くにいすぎて気づかない?


そんな事ない。

だって、私は羽斗吏を好きだから。


「 デート、行っていいよ 」

「 行くかよ、スマホ探してから行くし。ないと不便だろ 」

「 いいから、彼女優先!」

「 お前がそう言うなら、わかった 」


こんなに近くにいて、幼馴染だから気づいてもらえない。

“ 好き ”

その一言が、私には禁句。

スマホを落とした事をわざわざ隣の家の羽斗吏の部屋にまで行き伝えるほど、私は羽斗吏が好きで会いたい。

子供が親の気を引きたいがための行動と似ている。

羽斗吏と家を出て見送り、行ってしまう姿が見えなくなると寂しいと私の心が泣いてる。


幼馴染である以上、このまま……

夜、部屋にいると羽斗吏がいきなり入ってきた。


「 ちょっと、ビックリするって 」

「 あー…… あのさ、実は俺、彼女と別れてきた 」

「 え!別れた!?」


まただ。


「 なんで?理由は何?」

「 別に… 女はよくわかんねぇって事だよ 」


いつもこうだ。

羽斗吏の別れる原因はわかってる、それは私だ。

幼馴染の私が彼女には疎ましい。

羽斗吏は彼女よりも、私を優先する事が多い。

だから、よくある事だった。


“ 私と幼馴染、どっちが大事? ”


そう聞かれるのが羽斗吏は嫌で、決まって言う。


“ 両方 ”


嘘でも彼女優先って言えばいいのに羽斗吏は言わない。

それでも、私は羽斗吏の彼女にはなれない。

大切に思われてるのに……


「 俺って女運悪いよな~ 」


別れた数だけ女がいて少なからず傷つかせている、その自覚がない羽斗吏には腹が立つ。

私はその中の一人にもなれない。


「 あ、ねぇベッドやめて、新しいカバーなんだからシワになる 」

「 カバーなんか、気にすんな 」


言う事聞かないんだから。


「 沙和 」

「 ん~?」

「 なんで彼氏作んねーの?」


……あんたが好きだから。

って、言えたらね。言わないけど。

あんたが原因で出来ないって言ってやりたい!


「 いなくてもいいから 」

「 俺なら沙和絶対いいと思うけどな、男は見る目ないよな 」

……嘘つき。

見る目ないのはあんたもでしょ。


羽斗吏は私のベッドで横になり、背もたれにしてる私の髪を引っ張り弄ぶ。

羽斗吏のこんな行為に背を向けたままの私は、絶対に振り向かない。

ドキドキしてるから……

痛いくらい、ドキドキしてるから。


「 なぁ沙和、彼氏出来たら俺に言えよ 」


なんでよ……


「 言ってどうするの 」

「 いい奴か見定めて、本気で付き合いたい奴には俺の許可がいるって言えよ 」


バカ。


「 そんな事言ったら私に彼氏なんか出来ないでしょ、羽斗吏には絶対言わない 」

「 コラ!」

「 …っ、痛! 何すんの… 」


羽斗吏は何が気に入らないのが髪をまとめ引っ張った。

おかげで首が後ろへ……

覗く羽斗吏が見えて悔しいくらいドキドキしたから睨んだ。


泣きたい、私の気持ちを知らないから腹が立つ。


「 いきなり引っ張ったら首折れる!」

「 折れるか、バカ。約束しろ、沙和に合うかは俺が決める!」

「 何言って…… 」

「 約束!」


ほんと、何が気に入らないんだか……

好きなのは羽斗吏なのに、彼氏なんか出来るわけない。

なのに……


「 羽斗吏… ねぇ私が好き?大事?」


って… 何聞いてんのっ


「 当たり前、嫌いにならない奴はこの世に一人だけ、沙和が好きだよ 」


ねぇなんでそう言えるの?

別れた彼女にもそう言えば別れなくて済むのに、バカだよ。

ほんと、その笑顔で… 言うな、嘘つき。


幼馴染の壁を壊せない私。

漫画なら、私はとっくに彼女になってる。

でも違うからイライラするし可愛くなくなる。


それから2ヶ月後。


「 沙和、沙和!」

「 もう~ 私も女だからね、来るなら来る、部屋に入るならちゃんとノックしてから入ってよ 」

「 は? 今更めんどくせ… それより、俺 彼女出来た 」


は…?

彼女が、出来た?

いつ恋愛してたの?

そうだ、羽斗吏はこういう奴だった。

モテ男…… 私はモテないのに、なんで羽斗吏ばっか。


「 何だよその顔~ ブスだな 」

「 ほっといて!」


何がブスよ、あんたの彼女がブス!!


「 笑え、沙和 」

「 やだ 」


笑えるか!

慣れたせいでショックでも泣けないのに、ショック受ける自分にムカつく……


「 沙ー和! 笑えって… 沙和に喜んでもらえないと付き合えないだろ 」


自分勝手だね、羽斗吏……

私の気持ち、どうしたらいいの?殴ってやりたい。

私は羽斗吏が笑えって言うし、笑わない私の頬をつねってくるから怒るだけ。


「 笑えって。お前可愛いんだからさ 」

「 絶対笑わない 」


今の彼女が最後……


「 俺、沙和も彼女も大事にする 」


大事にされるより、いっそ嫌われる方がいい。

だから決めた。今の新しい彼女と別れたら……

私、羽斗吏に言う。

もう誰にも渡さない!


「 沙和、拗ねるな 」

「 拗ねてません 」


羽斗吏に彼女が出来て、別れて、また彼女が出来て別れて……

いつだって、羽斗吏を見てきた。

また、同じ繰り返しで私と彼女を天秤にかけられないで終わる。

はずだった……

羽斗吏は今の彼女と一番長く続いている。

その理由を聞いてみた。


「 なんでって、会えばわかるよ 」


初めて言われた。

今まで彼女といる姿を見た事はある。

でも対面した事はもちろん、紹介された事すら一度もない。

私は会いたくないし、幼馴染みだから言う特権で悪態つきたくなるだけ。

なのに、羽斗吏は初めて私に彼女と会わせたいと思っているようだ。

それから半年。

私は羽斗吏に呼ばれ指定されたカフェに行くと、羽斗吏と彼女らしき人が並んで座っている姿があった。

初めて、見たくない光景を目の当たりにし動けなくて、呼吸すらしづらい。

嫌な心音……

胃液でも出てるのか、気持ち悪い。

二人が見合って笑ってる。

絵の具の黒で塗りつぶしたくなる光景だった。


「 沙和 」


立ち尽くす私に気づいた羽斗吏が呼び、隣の彼女が席を立って私へ微笑み会釈。


なんで会釈……

丁寧でしとやかなフリ?

羽斗吏の彼女だから幼馴染には認めてもらおうって?


「 沙和、来て座れよ。木じゃあるまいし 」

「 木って!? 羽斗吏あんたねぇ… 」

「 も、いいから! 沙和、紹介する。俺の彼女の… 」

「 あ、私が。初めまして、笠木絵美です 」


可愛い声だな。


「 初めまして、羽斗吏の幼馴染で沙和です 」


絶対、笑わない。

羽斗吏の彼女になんて、笑わない。


「 あのさ、沙和… 大事な話があるんだ。その前にもう一人来るから待って、俺の親友 」


……話?

親友って… 誰だっけ?


待つように言われ、その間に私の注文したケーキセットが来た。

紅茶を注ぎ入れ、飲もうとした時だった。

背後から声が……


「 羽斗吏 」


その声に振り返った。

私達はもう、学生じゃない。

物事の分別が出来る大人だ。

ただ、羽斗吏と私は変わらないままの関係でいる。

羽斗吏の大事な話に合わせるように、呼ばれて来た羽斗吏の親友。


「 悠平、久しぶり 」

「 幽霊っ」

「 沙和… 悠平だっつの!」


あ~…… そう。


「 ごめんなさい 」


失礼しました。


「 絵美ちゃん久しぶり、沙和ちゃんも 」


え…… 沙和ちゃん、も?

誰だっけ?

私を“ 沙和ちゃん ”って呼ぶなら知りあいなの?

え~ わかんないっ


「 天野悠平、沙和覚えてない? 小学校の時、お前コイツ好きだったじゃん 」


は? 私が?


「 バレンタインのチョコ渡したけど、悠平が他の奴にくれって言われてあげたの見て泣いてただろ、忘れた?」


…あ……


「 あー!! 最低の悠平っ 」

「 最低って… あれはガキの頃でさぁ 」

「 ちょっと忘れてたけど、私はあの時傷ついたし、ごめんもなかったし、おかげで今も義理チョコすら買えないんだからっ 」


本命しか買わないしね。

そうだ、思い出した。

私、羽斗吏以外でほんの一時好きになった人がいたんだ。

って言っても、周りに好きな人誰かしつこく聞かれてつい……

羽斗吏とは言えなくて…… つい、悠平って。


「 あの時は、ごめん 」


悠平に謝られて、申し訳なくて俯いた。

いつだって私は羽斗吏だけ。

怒る羽斗吏、笑う羽斗吏、泣くの我慢する羽斗吏…

悔しがる羽斗吏、嬉しいと私に遠慮なく飛び付く羽斗吏……

どんな羽斗吏も、私だけが知ってる。

でも、彼女にだけ見せる羽斗吏の顔だけは……

知らない。


「 沙和、悠平、二人に大事な話する 」


改まって、背すじ伸ばす二人に嫌な胸騒ぎ。

早まる心音……

テーブル下に手を隠して握った。


「 沙和、悠平、俺絵美と… 」


え……


聞こえた言葉に、私の見ている羽斗吏が揺れた。

斜めに傾くように見えた。

私の中にある大切な思いが砕けてしまった。


“ 結婚する ”


羽斗吏は絵美と優しい笑みを見せ合ってる。

私の中で、羽斗吏が結婚なんて言葉はないはずだった。


手が、震える……

羽斗吏を見れない……

息が出来ない……


「 ……和、沙和、沙和っ 」

「 あ…… 何、えっと…… 」

「 大丈夫ですか?顔色が… 」


吐きそう……


「 沙和、顔青いぞ 」

「 羽斗吏、連れて帰ってあげて!」


え… 何、あなたが私を優先させるの?


「 早く! ちゃんと水分とらせて寝かせるの、わかった?」


羽斗吏に指示!?


「 わかった、沙和行けるか?」


何この彼女……


「 沙和、絵美は看護師なんだよ、すげーだろ 」


だから?なんか、ムッとするんだけど!


「 羽斗吏、沙和ちゃんは俺が送る、お前は絵美ちゃんといろ 」


え、えっ、ちょっと……


なぜか悠平に腕を掴まれ店から連れ出されてしまった。


「 なんで悠平がっ 」

「 はいはい、反抗する元気あるなら良し 」


何なの、コイツー!!


「 離してよ 」

「 っと、危ないだろ。沙和、羽斗吏は絵美ちゃんと結婚するんだよ、これ現実だから 」


沙和って呼び捨て?誰の口まねよっ

さっきは ちゃん付けしてたくせに、ムカつく!


「 私が非現実見てるとでも言いたいの?」

「 気分悪くなった原因は二人の結婚話だろ?羽斗吏は絵美ちゃんを選んだ、今、沙和が告白しても何も変わらないよ 」

え…… 何、言って……

告白って、何言ってんの?


悠平の言葉に質疑を問いたい。

でも、悠平は私が羽斗吏を好きって気づいてる。


なんで?


「 ねぇ、どうして… 」

「 羽斗吏が好きって知ってるよ、だからあの時… バレンタインのチョコくれって言われてあげたんだ。ガキだったけどそれくらい見てればわかるしね 」


嘘…… 私が羽斗吏を好きって知ってたから?

私が悠平を好きじゃないってわかってて受け取ったの?


「 悠平ってバカ… 」

「 バカは沙和だろ 」

「 なっ、あんたにバカとか言われたくないし!しかもそんな昔の話やめてよ! 」

「 やめるけど、とりあえず… 泣けば?」

「 は… 」


泣けば?って、何よ……

なんで私が泣くの… っ!?


「 泣けばいいよ、今泣かないでいつ泣くんだよ 」


悠平が、私の頭に手を置いてそのままそっと抱きしめられた。

何でかと目線を上げてみればその顔は優しくて、それに腹が立つのに……

突然、見てる悠平の顔が滲んで何もわからなくなった。


「 いいよ、俺が隠してやるから 」


“ 大丈夫、泣きな ”


誰にも私だとわからないよう、しっかり抱きしめられて悠平の胸元で泣いた。

小学生の子供がわんわん泣くみたいに、止まらなくて思いが涙で溢れて私は思いきり泣いた。


「 沙和… 泣くのやめたら、羽斗吏におめでとうって言ってやれ 」

「 い… 言ってやんないし、バカー!!」

「 沙和なら言える、羽斗吏の幼馴染だろ 」


だから、言わないって言ってるじゃん!


「 悠平嫌いっ 最低っ 」


悠平はまるで駄々っ子みたいになる私に優しかった。

私の思いは写真で見ればわかる。

赤ちゃんから大人になるまで、私達は必ず二人で写ってる。

同じだけ、私の思いもある。

アルバムは思い出を残してくれる。

いつか、過去として見られる日が来るかわからない。

誰かを思う気持ちは誰の為にあるんだろう。

報われて幸せな思いと、報われず悲しむ思いは歯止めが利かず、ただ結果がでるまでそれを思い続けるだけ。


私の思いは恋しい思いを募らせるだけで終わりに出来なかった。

あれからさらに半年が過ぎた。

今、教会で私の好きな羽斗吏は絵美と向かい合い誓いの言葉を交わしている。


「 沙和、式が終わったら羽斗吏が話したいって 」

「 うん… 」


あの日、悠平がいなかったらきっと涙は流さなかったと思う。

泣いて、泣いて…… 幾夜も泣き明かした。

羽斗吏が会いに来ても、何か悟ったのか部屋に勝手に入って来ることはなかった。

私の羽斗吏は、今…

あの笑顔が、私に苦笑させる。

もう、羽斗吏の事で泣くことはないだろう……


「 沙和 」


私を呼ぶ大好きな羽斗吏の声が切ない。

その声に、私はゆっくり振り返った。

その瞬間……

私は目の前にある光景に涙が込み上げてきた。


「 沙和、来い!」


羽斗吏… 羽斗吏… 羽斗吏……


「 羽斗吏っ 」


いつも私が見ていた羽斗吏の笑顔に、私を受け止めるつもりか腕を広げていた。

私は走り羽斗吏に飛び込んだ。


羽斗吏… 羽斗吏っ……


「 沙和… 聞いて 」

「 なぁに… 」


子供の頃は私の方が身長高くて、悔しがってた羽斗吏はいつの間にか私より背が伸びてしっかり男で、私を受け止める腕も胸も大きくて温かくて……

優しい。


「 好きだよ。俺、沙和が好きだよ。いつもずっと一緒にいた最高な奴。幼馴染で友達で親友で家族で、彼女… 全部に当てはまる沙和が好きだよ 」


羽斗吏?


「 いつだったかな… 沙和が女の顔してるのに気づいて戸惑った。俺が沙和を女としてだけ見たら、傷つけるかもしれないと思った。お前を好きで抱いたらもう幼馴染みには戻れないし失うのが怖かった 」


何、言ってるの……


「 沙和とはケンカしても、絶対離れないのわかってたから… 大事にしたい、一生大事な奴だって俺は女の沙和を諦めた 」

「 羽斗吏… 」

「 なぁ 沙和… この先も俺は沙和が大事で失いたくない女なんだ。このまま、俺の大事な人でいてほしい 」


羽斗吏… 私は…… 私はっ……


「 絵美を選んだのは、俺が沙和を優先するけどそれでもいいかって聞いたら言ったんだ…

“ 大事に思う人がいる事があなたの長所なの、あなたが大事に思う人を私も大事する、私にはそれが出来る、だから安心して今の気持ちを大切にしてほしい… ”

そう言ったんだ、すごく嬉しかった 」


だから、絵美さんと結婚するって決めたんだ。

彼女は羽斗吏の中にある私事受け入れてたんだ。


敗北感…… 初めてそう感じた。


私は幼馴染を越えられなかった。気持ちを伝える選択はいつでも出来たのに、私はそれを選らばずただ一番だという隣にいただけ。

絵美は幼馴染を思う羽斗吏ごと受け止めた。

私と自分を比べず、羽斗吏の気持ちを理解し優先出来る人。


「 幸せなんだね、羽斗吏 」

「 ああ、幸せだよ 」


ギュッと強く抱きしめてくれる羽斗吏。

その腕を、大好きでたまらない温もりを私から離す時がきた。

私を思う羽斗吏のために。何より、私のため。


「 聞いて… 女として、好きだったの。ずっとずっと、羽斗吏を思ってたよ。今もこれからもずっと変わらない。大好きだよ、羽斗吏 」

「 沙和… 俺も大好きだよ 」


ありがとう、羽斗吏。

私の一生は羽斗吏がいてこそだよ。

この恋はもう、終わり。


「 おめでとう 」


初めて、嬉しい涙を流した。

笑顔で羽斗吏に向けた、私の笑顔。


「 沙和っ… 」


もう一度、羽斗吏は抱きしめてくれた。

そして幼馴染の羽斗吏を手離す。


もう、大丈夫だよ羽斗吏……


二人でみんなの所に戻ると、絵美が待っていた。

そして、私に直接手渡されたブーケ。


「 沙和さん、これからお世話になります 」

「 はい、こちらこそ。よろしくお願いします 」


羽斗吏をよろしくね。


互いに笑い抱き合った。

それを羽斗吏は優しい笑みで見つめていた。


式の後、写真撮影をしている中で教会を一人見つめていると隣に悠平が立った。


「 沙和 」

「 悠平… 」

「 ま、俺がいるから 」

「 え… 何、何が言いたいかわかんない 」

「 俺と沙和、二人は今教会にいる、それにブーケがある… わかる?」


……わかりますよっ


私にある未来なんてわからないけど、羽斗吏が幸せなら私の幸せでもあるわけだ。

なぜか隣には悠平がいて。


「 沙和、告白するけど… 実は小学校ん時好きだった。だから始めてみない?俺と 」

「 誘い文句のわりに微妙だね 」

「 ハハッ 何でもいいよ、沙和の笑顔が独り占めできるなら、これから俺と始めてみよう 」

「 私の名前、呼んで 」

「 沙和 」


私を呼ぶ声は、いつもそばにある……











_完_

















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願わくば、君の幸せ。 吉川はるひ @haruhi-s

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