第10話 できちゃった!?

「動くな!って言っといただろうが…」


そう言い【ヒーリングバレット】と念じトリガーを引いた。


〝ズバァーン〝


治癒弾を撃っても次元能力は有効らしく発射直後に弾丸が消え、ミントに当たる直前で再び弾丸は姿を現わした。


「きゃっ!?」

弾が当たったのだろう。バッと俺の方へ振り返りキッと睨んでいた。

暫く俺を睨んでいたが、傷が癒えた事に気付いた様で羽を見ながらバサッバサッと動かしていた。


「うそっ?治ってる!?」

「サッサと人化しとけよ!!」


アイツが逃げた所為で距離が離れていたので俺は大声で伝えてやった。

ミントはツカツカと、こちらに向かって歩き出し俺の前まで来た。


「あ、ありがとぅ……」

「礼を言われる筋合いはない!傷を付けたのは俺だからな!それより早く人化しとけ!誰かに見られると厄介だ!」


それからミントは人化を行い、背中から生えていた翼が消え、どこから見ても人にしか見えない身体になった。


「お前に聞きたい事がある」

「ミントって何度も教えてるでしょ!」

「そんな事はどうでもいい!お前達魔族は何故人を喰らう?」

「それは一部の邪鬼魔デーモンデビルだけよっ!」

「魔族にも種類があるのか?」

「あるわっ!使い魔、邪鬼魔、妖魔、不魔ってところね」

「使い魔と邪鬼魔は分ったが、妖魔と不魔ってのはなんだ?」

「妖魔は…」


言いかけた所でミントの顔が紅く染まりだしたので、妖魔が何か理解出来た。


「あー、妖魔は分かったから不魔について教えろ!」

「拓真が分かってもあたしは分からないんだけど?」

「いや、沙紀は知らなくて良い!お前が知ったらややこしくなる」

「余計に気になるじゃないっ!」

「不魔は魔族でありながら魔族を嫌う種族よ!私達は不遇魔ふぐまと呼んでるわ」

「魔族の力を持ちながらも、それを嫌う魔族か…面白いな……で、お前は妖魔か?」

「……」

「俺達と仲良くなり精気を奪う予定だったか?」

「精気って!?」

「違う!私はそんな事考えてないっ!」

「ねぇ拓真!精気って…あっちの精気?」

「お前は泥棒か?って聞かれて泥棒ですって答える奴は、そう居ないからな」

「あれ?あたし無視されてる?」

「でも私は…」


ミントは一度言葉を切り

魅了ちからを使うつもりは無いわ」

(やはりミントはサキュバスか…)


「ねぇ拓真!せい……」

「そうだ!お前が思ってる精気だよっ!」

「ダメっ!拓真の精気はあたしのなんだから!」

「えっ?貴女も魅了を…?」

「だからややこしくなるって言ったんだ…」

「魅了って何よっ!」

「だからお前は知らなく……」

「魅了は虜にする力よ!」

「拓真がアナタの虜になんて許さない!」


俺を無視して女の争いが始まりそうだった。


「私の魅了は私の虜になる力じゃないの…」

「じゃあ誰の虜になるって言うのよ!」

「今、私が魅了を使えば貴女の虜になるわ」

「えっ!?あたしの虜に?」

「そうよ、だから使わないの」

「いやいや、是非是非使って下さいっ!」

「お前なぁ」

「だって、拓真があたしにベタボレするって事でしょ?」

「沙紀は少し黙っててくれ!」

「むぅ」

これ以上、火に油を注ぐのは危険過ぎると思ったので沙紀を黙らせた。


「お前、えっとミントはサキュバスなんだよな?」

「そうだけど、何でサキュバスって分かったの?」

「魅了なんて使うのはサキュバスくらいだろ」

「インキュバスだって使うわよ!」

「インキュバスのは男女見境なく淫らにするだけだろ…」

「詳しいのねっ!」

「少しはな」

「まぁ、いいわ…とにかく私は力を使うつもりはないって事!」


こいつが力を使わないと言うのは理解したが、なぜ人と仲良くなりたいのか目的が分らなかった。


「ミントは人と仲良くなって何がしたいんだ?」

「昔、お父さんに人の話を聞いた事があるの。冒険をしたり、いっぱい飲んだり食べたりしながら楽しく過ごしてるって」

「ミントの父親は人間について詳しいのか?」

「ええ、お父さんは人族だったから」

「なっ?」

「私は人族と魔族の混血種なのよ」

「ハーフか…お前の父親は魔族と共に暮らしてるのか?」

「……殺されたわ…お父さんもお母さんも」

「人間にか?」

「いいえ、邪鬼魔によ」


魔族も人間同様に一枚岩ではないと言う事を意味する内容だった。


「魔族同士で争ったりするのか?」

「あんなの争いなんて言えないわ!邪鬼魔達による、ただの殺戮よ」

「弱肉強食か…おっそうだ!ミント、お前は邪鬼魔の居る場所は分かるか?」

「全部じゃないけど分かるわよ…でもあそこには行きたくないっ」

「俺がお前を守ってやる!」

「ちょっと拓真!その言葉はあたしに言ってよっ」

「あぁ沙紀、お前も俺が守ってやる!」

「なんか茶菓子みたいな言い方が気に入らない!」


沙紀のイラつきが目に見える様になってきた。


(俺の言い方が悪かったよ…)

(いっぱい愛してくれたら許す)

(わかった)

(じゃあ今はキスして)


俺は沙紀の唇にそっとキスをしたら、沙紀が俺の頭を押さえ舌を入れてきた。


「…んんっ」

「はぁはぁ…」


ミントの吐息が聞こえたが、俺は頭を押さえられていてミントを見る事が出来なかった。


「んぐっ」


沙紀が止まらない。


「……ぁあ、はぁはぁ…ぁんっ」


――そうだ、アイツはサキュバスだった!


魅了を使われてはマズイと思い、無理矢理沙紀の唇から顔を離した。


「いやっ!」


その時、鼻をつく香りがした。

「ヤバいっ、魅了か!?」

「はぁ…はぁ……ご、ごめん、ぁっ…もう、止めら…はぁはぁ…れない」


俺の身体が意志とは関係なく、沙紀を力強く抱きしめ、そして激しくキスをしていた。

身体が勝手に動き、沙紀の胸に手が伸びた。


「んっ…あんっ」

沙紀の胸に触れた途端、沙紀の身体がビクンっと撥ねた。

その後の事は全く覚えていない。気付いた時には、3人が裸の状態で重なり合うような形で芝生の上で横になっていた。


沙紀もミントも満足気な表情のまま意識を失っている。


(俺は2人とやっちゃったのか!?)

そう考えながら下着を履いていると、ミントが目を覚ました。

直ぐに状況を理解したようで、直ぐさま起き上がり下着を着用しようとした時、ミントの足を白い液体が地に向かってツーっと垂れた。そして俺に何度も頭を下げてきた。


「ごめんなさいっごめんなさいっ!」

「もう済んだ事を謝っても仕方ないだろ」

「自分でも止められなくて…本当にごめんなさい」


ミントの声でようやく沙紀も目を覚ました。

「た、拓真…」

「わ、悪ぃ」

「ううん…凄く良かった…」

「…!?」

「ごめんなさい…私…」

「ミントちゃん、貴女も良かった?」

「……はい…」

「拓真…あたし腰が抜けて立てない……」


(ヤバっ、また起っちまった)


「立たせて、拓真」

「いや、起ったし…」

「…そうじゃなくて」

「あ、そっちか…」


俺は沙紀に肩を貸した。

沙紀は肩越しに立ち上がろうとした時、「あっ!」と声を出した。

白い液体がドロッと地に垂れ、沙紀はまた地に座り込んでしまった。


「……」

「出来ちゃうかなっ?」

「もし出来てたら産むか?」

「当たり前じゃないっ!」

「俺と沙紀の子か…ってか立てないのか?」

「拓真のココは起ってるのにね…」

沙紀に軽く握られていた。


「沙紀、離してくれないか?」

「なんで?」

「なんでって…したくなるからだよ!」

「じゃあ、しようよっ!」

「お前少し変だぞ!」

「えーっと、私の所為だと思う…」

「魅了ってのは異性にしか効果ないんじゃないのか?」

「う、うん…ただ、その子…行為の最中に私の生気を吸っちゃったの」

「どういう事だ?生気を吸ったって」


ミントは足をもぞもぞ・・・・させながら答えた。


「私と…その子が……そ、そのぉ…キスを…舌を絡めながら……はぁはぁ…だ、ダメ…力が……あっ」


さっき嗅いだ匂いに気付き、俺は咄嗟に沙紀から離れた。


だが匂いの広がりは俺の予想よりも早かった。

今度は沙紀にではなく、俺の身体はミントに襲いかかっていた。


「ご、ごめんなさいっ……んあっ…はぁっ」

キスをし激しく舌を絡めた。

「んぐっ…かはっ……んんっ」


「た、拓真…あたしに……」

四つん這いのまま沙紀が近づいてきた。

俺が覚えて居たのはここまでだった。


次に目を覚ました時、俺と沙紀しか居なかった。ミントは下着だけを残して居なくなっていた。俺は下着とズボンを穿き横にいた沙紀を見つめていた。


「また、ヤっちまったか…」

「…んんっ」

「目が覚めたか沙紀?」

「あたし…もうダメっ」

「今日は戻ろう」

「歩けないっ」

「俺が背負うから安心しろ」

「…ごめんねっ」

「謝るな!お前が悪い訳じゃないだろ!」

「う、うん」

「下着くらいは1人で穿けるよな?」

「…たぶん」

沙紀は何とか1人で下着を穿き、俺の背にもたれ掛かった。


俺は沙紀を背負って森に向かい歩き始めた。

これから森に入ろうとした時…


「待って!」

ミントの声だった。ミントは人化を解いてサキュバスの姿で上空に居た。

地上に降り、そして人化し俺達の方へ歩き出した。


「貴方にあんな事をさせといて言える立場じゃないのは分かってるんだけど、私も一緒に居させて欲しいの…」

「お前が故意にした訳じゃないだろ!ある意味、お前だって被害者なんだからな」

「た、拓真…」

「なんだ?」

「一緒に連れて行ってあげて…」


連れ行くのは構わなかったが、街には退魔結界を張れるターニャが居る事が気がかりだった。


「もしターニャが街の入口に結界を張っていたらどうするんだ?」

「そ、その時は…ち、力を使う…」

「お前がそこまで言うなら…分かったミントを連れて行く」

「あ、ありがとう…それと…名前を聞いてもいい?」

「あぁ、俺はタクマだ」

「あたしは…サキよ」

「タクマさんとサキさん、さっきはごめんなさい。そして、これからよろしくお願いします」

そう言ってミントは頭を下げてきた。


拓真と沙紀とミントの新たな旅が始まろうとしていた。


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異世界でもやっぱり銃は最狂です 千里 @1000ryobox

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