第41話 クロノスとの決着

 僕は足掻くと決めた。手始めにライリとの実験用に開発した質量魔法を無数に展開した。


「これは何のつもりなのかな?」


 クロノスの鎌はこともなげに、質量魔法を切り裂いた。

(これは……)


 この絶体絶命の状況で、魔王の魔法対策が目の前にあることがわかった。さらに負けられなくなった。


 クロノスは追撃の手を緩めない。僕は『創造』スキルで鋼の塊を作った。鎌の刃渡りを超える大きさの塊だ。


「くっ……時間稼ぎのつもりかい? 時間を稼いでどうすると言うのだい?」


 予測通り、この大きさになると流石のクロノスの鎌でも一撃で斬り裂くことは出来ない。絶対的な防御にならないまでも、時間稼ぎとしては充分だった。


 無数の鋼の塊で時間を稼ぎつつ本命の製作に取り掛かる。


「あなたに未来を託すのも悪くはないと思ったのだけれど……クロノス……やはり僕は負けられない」


「それで?」


「クロノス、手段と目的を取り違えてはダメだ」


「アル、君は何が言いたいのかな?」


「あなたの目的はウラノスを滅すること、本来であればそれは手段だ。その先にある何かが目的なんだ。その目的を見据えていないあなたに、僕は負けられない」


「……はは、まさかあのクロノスに私が諭されるとは……考えてもみなかったよ」

 過去の自分……本当に酷い評価だ。


「だけどね……ウラノスに対してだけは、そんな綺麗事は通用しない……君なら分かってくれると思っていんだけどねど」


「神が綺麗事を言わなくなったら、それこそ世の中おしまいだろ?」


「…………」


「あはは、もはや口では叶わないね、確かにその通りだね!……だけど勝負はもうついている、覚悟を決めてもらうよ」


「悪いな、それはこっちのセリフだ、クロノス……覚悟はいいか?」


「神がブラフか? それは感心できないよ」


「ブラフじゃないよ、クロノス、もう詰んでいるよ」


「フッ……その状態でよく言う、では遠慮なくトドメをさせもらう!」


 クロノスが最後の一撃を与えようと正面から突っ込んでくる。僕の攻撃は無効化できる上に、僕は瀕死状態だ。油断してもおかしくない状況だ。


 僕はMAG03を構えクロノスに撃ち込んだ。


「ぐはっっっっ」


 MAG03の弾丸はクロノスを貫いた。


「な……なぜ?……」


「これは、実弾を打ち込むための銃だ……時間稼ぎの間に作らせてもらった」


「だが……しかし……」


「弾丸はアダマント、あなたの鎌と同じ材質だ」


「はは……なるほどな……奢っていたのは私のほうだったか」


「それは僕も同じだけどな、神の剣、神の裁き、神の癒しが通じないなんて考えたこともなかったからな、前世の僕なら負けていただろうな」


「……そうか……残念だよ……」


「僕の勝ちでいいか?」


「ああ、君の勝ちだ……トドメをさしたまえ」


「それは、必要無いだろ?」


「何故だ?」


「いやだって、要はアダマントがキーだろ? 僕は簒奪しなくてもそれを作れるし、実際に今作ったし」


「……確かにそうなのだが……」


「神が命を粗末にしちゃダメだろ? その代わり、傷が癒えたらタルタロスを手伝ってやってほしい。僕のダメージも深刻だし、ウラノスとの対決まで、もう少し時間もかかる」


「ああ……そうだな、分かったよアル」


「このまま置いていっても大丈夫か? こっちで治療手伝おうか?」


「大丈夫だ、君より軽傷だしな」


「そうか……じゃ僕は行くよ、正直立ってるのも辛い」


『ベル』


『なんだ何かあったのか?』


『有ったといえばあったが、問題ない、僕は撤退するから世界樹に戻ってくれ』


『ん、分かった後で詳しく聞かせろよ』


『了解だ』


「またなクロノス」「またなアル」


 僕は念話でことの次第をベルに報告して、ユイリの元へテレポートした。


 ユイリは寮のリビングでみんなと団欒中だった。


「な…………」


「ただいま」


『『アルーーーーーーー!!!』』


 皆んな血だらけの僕にびっくりしているようだった。


「どうしたのこの傷!!!」


「奈落でちょっと」


「ちょっとってレベルじゃないですよ!」


「もう限界だ……後のことは任た」


 僕はそれだけ告げると意識を失ってしまった。次に目覚めると学園の医務室にいた。ヒールでも傷が塞がらなかったため、外科的処置を行ってくれたそうだ。


 そして今はライリがお見舞いに来てくれている。


「痛むの?」


「うん、結構痛むよ……」


「気にせず、横になってなさい」


「ありがとう……ライリ、いろいろ進展があったよ」


「え、本当なの?」


「ああ……だがその前に……僕の傷にエレメントの影響は見えないか?」


「ん……ちょっと見てみるわ」


 切ったという事実だけで回復できないなんて僕には考えられない。切った箇所に何らかの処置が施されるからこそ、回復魔法が効かないんだと僕は考えた。


「確かに、なにかエレメントがあるわね……あれ……これは実験でつかってるエレメントと同じよ」


「本当か?」


「間違いないわ」


 僕は胸の大きな傷に、威力を抑えた質量魔法をかけ、その後、神の癒しをかけた。


「はは、治ったな」


「治ったわね……」


「ありがとうライリ、君のおかげだ」


「アルがデタラメなのよ」


「ライリ、やることがいっぱいだ、忙しくなるぞ」


「望むところね」

 

 どうやら傷口に定着させられた質量が魔法を吸収していたようだ。このことでライリとの研究は大きく進む。


 まずはライリと魔法を完成させ、魔王と対決する。後顧の憂いを絶つためだ。魔王を残しておくと、気にかないといけないことが増える。それにウラノス戦での駆け引きも限定されてしまう。クロノスには悪いがウラノスよりも魔王が優先だ。


 魔王の討伐が済むと魔界平定に取り掛かるべきか、ウラノス戦に臨むべきか、それとも両方を並行して取り掛かるか……これは仲間と相談して決定することにした。


 いよいよ大詰めだ。



 ——————————


 逢坂です。


 ここまで読んでいただいてありがとうございます。


 次話ではいよいよ魔王との……なのですが、更新にお時間をいただきます。


 よろしくお願いいたします。




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神スキル、ステイタス1万倍で異世界無双 逢坂こひる @minaiosaka

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