第40話 アル対クロノス

 クロノスとの戦いが始まった。クロノスは大きな鎌を2ちょう、僕の神の剣のように自在に操り仕掛けて来た。


 神の剣で防御を試みるも、威力が段違いで、剣は破壊されてしまった。ならばとウルドの結界を張ったが、簡単に貫かれてしまった。クロノスの攻撃は回避するしかない。


 鎌を武器とする相手と戦ったことなどない。ましてやその鎌を持たずに自在に操れるのだ。動きもトリッキーで気を抜くとすぐに狩り取られそうだ。


 クロノスの鎌をかわしつつ、隙を見つけてはMAG01で攻撃を加える。だがクロノスは避けようもせず、鎌での攻撃を繰り返す。まるで効いている様子が無い。


 僕は戦闘パターンを変えた。MAG01での攻撃は諦め、神の裁きに切り替えた。


 クロノスには神の裁きも避なかった。これには流石の僕も狼狽えてしまった。僕の鉄板攻撃パターンが通じないのだ。これは頑丈と言うレベルではなく、何かしらの耐性があると悟らざるを得ない。


 僕は再び神の剣を顕現させ、そのうちの2振りを手に取った。前世の戦闘スタイルだ。クロノスの攻撃をかいくぐり、距離を詰める。


 神の剣はスキルとして使うよりも手に取って使う方が、威力も耐久力も高い。2振りの剣で鎌をなぎ払い、クロノスにまで後もう一歩と言う所まで迫ったが、クロノスも大鎌を手に取り近接スタイルに切り替えた。


 クロノスの鎌捌きは巧みで、二刀流の強みがまるで活かせない。膠着状態が続いたが、クロノスが嫌がり、距離を取った。


「流石に強いね」


「そちらこそ……」


「しかし、想定内だ、やはり君の攻撃は効かなかったね」


「想定内だったのか……」


「君も察しているのだろ?」


 あからさまに攻撃が通じないのだ。察しがつかない方がどうかしている。これはユイリと僕の神威の関係と同じだ。僕とクロノスは根本的には同質なのだろう。おそらくウラノスもだ。


 そしてクロノスの鎌は、僕たちにダメージを与える事が出来るのだろう。一発食らって確認しても良いのだが、致命傷になったら目も当てられない。


 状況的には非常にマズい。


 僕は二刀流での攻撃を続けた。クロノスには通じないかも知れないが、それでもいい、考える時間が欲しい。


 前世の僕ならいざ知らず、今の僕は違う。ユイリ達と磨いた戦闘技術、学園の仲間たちと研究した魔法、ライリと開発した魔法。日本で学んだ知識。これらに活路を見出せると信じている。


「アル何を焦っていんだい? そんな攻撃当たりやしないよ?」


(当たりやしないだと?……と言うことは、剣撃は通じるのか?)


「クロノスそれはあなたも同じだ」


「フフフ、確かに今のままならそうだろうね」

 クロノスは距離を取り、鎌を手放した。


「さあ、今がチャンスだよ」


「いや、それ明らか誘いすぎだろ……」


「しかし君は誘いに乗るしかないだろ?」


「いや、でも流石にそこまであからさまだと……」


「フフフ……私は100年でも200年でもこのままの状態が続いてもいいのだよ?」


「そうかい……」

 クロノスの目的は自分の生死に関わらず、ウラノスを滅ぼすことだ。タイムリミットがあり、生きることを前提にした僕は、この安い挑発に乗るしかない。クロノスがここまで計算してルシフェルを仕掛けていたのであれば、見事としか言いようがない。


 僕は警戒しつつ、クロノスとの距離を詰めた。時代劇の殺陣のように、じりじりと歩みを進める。僕の間合いまでもう少しという所でクロノスのトラップが発動した。


 クロノスの鎌は2挺ではなかった。


 僕の周囲から現れた8挺の鎌が四方八方から迫る。


 しかし、僕はこの決定的瞬間を時を待っていた。チャンスはこの時だと思っていた。僕はテレポートでクロノスの背後に移動した。




「あまいよ、アル」


 テレポートするとクロノスが鎌を構え待ち構えていた。とっさに2振りの剣で受け止めたが剣諸共斬り伏せられてしまった。クロノスの本当の狙いは僕がテレポートを使った時だったのだ。


 この世界に来てはじめて、まともにダメージを食らった。致命傷こそ避けたが、かなりの深手だ。しかし生きてさえいれば神の癒しでなんとかなる。そう思っていた僕は浅はかだった。


 神の癒しが通じない……


「驚いたかい?」


「このアダマスの鎌は万物を切り裂くことができるのだよ、そしてこの鎌で受けた傷は回復術の類を受け付けない。自然回復するしかないのだよ」


「なるほど……」


 僕の自然治癒は早いほうだが、とてもじゃないが戦闘中には回復しきれない。本当にマズい状況になった。


「アル、君は殺すには惜しい……だけど、ウラノスは生かしておけない。残念だけどお別れだよ」


 クロノスがトドメの一撃を僕に振りかざす、僕は結界と神の剣でそれを防ぐが、吹っ飛ばされてしまう。斬撃としてのダメージはないが、打撃としてのダメージをかなりもらってしまった。


 絶体絶命とはこのことだ。これは流石にみんなに怒られてしまう……でもクロノスなら世界を良い方向に導いてくれるはずだ。戦っていてそれはよくわかった。僕は腐っても神なのだから……


 僕が討たれてもクロノスがウラノスを討ってくれれば……


 ……本当にクロノスはウラノスを討てるのか?……彼に託す未来はウラノスを討つことを前提としている。もし、クロノスがウラノスを討てなければどうなる?


 ルシフェルが役目を果たす……。


 それはダメだ。そんな未来は許されない。受け入れることなどできない。

 

「アル、流石に簡単には倒れてくれないね。ウラノスの封印に成功しただけのことはあるよ……でも、そろそろ終わりにさせてもらうよ」


「ダメだ、終わりにさせない……」


「絶体絶命のこの状況になってもまだ、心は折れていないんだね」


 クロノスの言う通り絶対絶命だ。もう神力も殆ど残っていない、結界を展開することも、神の剣を顕現させれるかも怪しい。でも負けるわけにはいかない、目的の違うクロノスに未来は託せないのだから。



 ————————


 逢坂です。

 ここまで読んでいただいてありがとうございます。


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