第39話 奈落
奈落は僕の予想通りアンデットで埋め尽くされていた。僕は冥界での鬱憤を晴らすべく、神威を全開にしMAG01で無双している。
このまま真っ直ぐ進んでいけばタルタロスの居城だが、今のところ何の変化もない。僕がアバドンを倒して主人が居なくなったのが原因だと思われる。
そうこうしているうちにタルタロスの居城に辿りついた。
城門は開放されていたので、そのまま正面から乗り込んだ。タルタロスの居城に乗り込むと明らかに空気が変わった。
何者かがいる、そしてそれはタルタロスではない。
僕は玉座に辿り着いた。
「やあクロノス待っていたよ」
「あなたは?」
「私か……私もクロノスだよ」
「な」
「安心したまえ君とは違う存在のクロノスだ、時間を操ったりは出来ない」
「同名の神か?」
「そうだよクロノス」
「なあ、クロノス、ややこしいから僕の事はアルと呼んでもらえないか?」
「承知した、アル」
「クロノス何故あなたがここに? タルタロスはどうした?」
「そうだね、まずタルタロスから……タルタロスはウラノスの封印に赴いている。
ウラノスの封印はもう長くは保たないね」
クロノスの言葉が本当ならタルタロスは裏切っていない。
「ウラノスの封印……」
「おや? そんなに驚かないんだね、薄々は感じていたのかな?」
「そうだな……それに関しては薄々感じていた」
「まあ心配しなくても10年、20年は保つだろうさ」
「10年……」
結構長く保つんだなと思った。
「私は君を待ったよ……ざっと1500年は待ったよ……」
「そんなにも?!」
「そうだ、1500年前、私は君に使いを出したのだが、君は取りつく島もなかったね……本当に話のできないヤツだった。今、こうして話せているのが不思議でならないよ」
「え……それは本当か?……」
「白々しい、覚えているのだろ? アルとして生まれ変わった君は、信じたくはないだろうけどね」
図星だ。
「その通りだな……全く覚えてないわけではない……」
「こちらも色々手違いがあったからね、君達の世界を乱してしまったことは申し訳なく感じているよ」
「手違い?」
「ルシフェルが君の伴侶を殺してしまったりとかだね」
「ルシフェル……」
「教えてあげるよアル、私は異界の神だ。ちなみにルシフェルは君達の解釈通り、ウラノスの天使だエレボスを倒し神化してしまったけどね」
「異界の神……」
「私はルシフェルを使いとして、君たちの元へ派遣したのだが……君を頂点とする神々は交渉の余地がなくてね、強硬手段に及んだのはそのためだよ」
過去の自分が憎い。
「クロノス、あなたの目的は、一体何?」
「そうだね、私の目的はただ一つウラノスを滅することだよ。彼を生かしておくことは全ての世界にとっての脅威でしかないからね」
「ウラノスを……」
「もう一つ言うと、彼は私の父であり、私の世界の神々の王だ。私の力だけでは彼を倒せない、だからアル、君の力が必要なのだよ」
「それは共闘という意味か?」
「それではダメなのだよ」
「つまり……」
「私が君の力を簒奪するか、君が私の力を簒奪するかだよ」
「君は覚えているだろ? ウラノスと真面に対峙できたのは君だけだったと、それは僕たちの世界を含めての話なのだよ」
「…………」
「つまり、君しかウラノスを倒せる可能性のある存在はいないのだよ……しかし、君は倒せなかった。それは有効な攻撃手段がなかったからだ」
「その有効な攻撃手段があなたにはあるのだな」
「その通りだよ……他に聞きたいことはあるかね?」
「ルシフェルは今もあなたの指示で動いているのか?」
「基本的にはそうだよ、しかし彼は彼なりのやり方でウラノスを滅ぼす方法を見つけたようだね……」
「なるほど……」
「クロノス、僕は、ルシフェルと戦う時の、後顧の憂いを絶つために此処に来たんだよ。でも僕は目的を間違えていたようだな」
「アル……本当に話せるヤツで助かるよ……私と戦ってくれるのだね?」
「もちろんだ」
想像していた展開とはかなり違った。ルシフェルの真の目的もわかった。ルシフェルは2人のクロノスが失敗した時のリザーブ要員になるつもりだっんだ。だから僕に会った時も嬉しそうだったんだ。だから僕に積極的に話しかけて来たんだ。
元はと言えば全部僕の所為だ。やはり原因を自分以外に求めてはダメなのだとつくづく感じる。
「そうだそうだ」
「うん?」
「肝心の話をするのを忘れていたよアル」
「何だ?」
「話の流れ的に察してくれているだろうが、もし私が君に負けたら。どうか君がウラノスを滅してくれないか?」
「それは大前提として承知してるので安心してくれ」
「ありがとうアル、安心して戦えるよ」
「では僕からも一つお願いしてもいいか?」
「ある程度は察しているが、言ってくれ」
「この世界を良い方向に導いてくれ」
「初対面の私にそんなことを頼んでも良いのか?」
「僕は神だぞ? あなたが邪悪な存在かそうでないかは最初から分かっている」
「そうだったね」
「これは確認だが、僕かあなたがウラノスを倒すとルシフェルは止まるのか?」
「それは杞憂だよアル。彼は同志だからね」
「そうだったな、僕は魔王と呼ばれる彼から邪悪な気配を感じなかったことが凄く不思議だった。その謎も解けたよ」
「ではそろそろ、はじめようか」
「ああ」
「あ、その前に戦闘用の神界を作れるってことを覚えておいて欲しい」
「そんなこと出来るのか?」
「やはり知らなかったんだね。今回は私が用意する。戦闘用の神界なら遠慮なく力を出せるよ」
「なんか色々気を遣わせてしまったな……」
「父の不始末だからね、気にしなくていいよ」
光が僕たちを包み、無の空間に僕たちを誘う。
「これが戦闘用の神界……」
「そうだよ、体を動かす練習をしてもいいよ」
「じゃぁお言葉に甘えて」
戦闘用の神界は360°全てが大地であり空のようだ。何を言ってるのかわからないかもしれないが、どこにでも立てて、どこにも当たらない超不思議な空間なのだ。無重力とも違うなんとも不思議な空間だ。
「準備OKだ」
「では、はじめようか」
予想していなかった展開だが、レオフェンと僕の運命を賭けた戦いが始まる。
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逢坂です。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
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