全てを包み癒してくれる神々の光景

 救いようのない日々、生きている意味も、幸せさえも感じれないほどの絶望を生きている人もいると思います。最近の世の中は、災害や紛争、悪意まみれのニュースに溢れています。

 そんな世界で、心がじんわりと暖かくなるような感覚になりました。

 唐突ですが、皆さん、日本に生まれて神様の存在についてどうお考えでしょうか。

 信仰は自由ですし、私の考えをこの場でとやかく言うつもりはないんですが、普段の生活の中で、ついつい困った時だけの神頼みなんかしていませんか?そんな自分よがりな生き方をしていたら、少しだけ立ち止まってこの物語を読んでみてほしいです。


題名:帰っておいで

作者:縦縞ヨリ

 


https://kakuyomu.jp/works/16818093075525623003


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 神主の家系で、自らも神道系の大学に進むつもりの主人公は、度重なる天災によって奪われた無数の命について、どうして神様は救ってくれないのか…という神への失望と疑念に苦しんでいた。

 そんな折、父親に連れられて来た小高い丘にある神社で不思議な体験をする…というあらすじです。



 本作の主人公は情深く熱い人なんだろうな、と思います。そして、神職を志す上でも見本となるような威厳ある父親の、ぽつりぽつり落とすような語り口調も諭し方も、すごく説得力があり魅力的に描かれています。


 「神様はなんで、全ての人を救ってはくれないんだろう。こんな気持ちで、神職なんて務まるのだろうか。」本文より


 明け方の小高い丘からは、あの大災害の日に全てを飲み込んだ海が見えます。そしてこの後、主人公が目の当たりにする光景が、本当に美しくて愛おしくて、心が浄化されるような気持ちになります。

 主人公の悲痛な心の叫びは、救われ変わっていくのでしょうか。


「朝日が昇る。こんなに悲しい日でも、温かい光は降り注ぐ。見守られていると肌で感じる。」本文より


 この世界の、自然のように壮大で美しい存在に触れたとき、一瞬で全てに癒され、全てに許され、また許そう、そしてそこに希望を見出せるような感覚。その感覚への到達に感謝する気持ち。私たちが神様と読んでいる存在は、そういうものではないかな…。なんか、頭の中で、藤井風さんの「帰ろう」という曲が流れました。


〜〜あの傷は疼けど この渇き癒えねど

もうどうでもいいの 吹き飛ばそう

さわやかな風と帰ろう

やさしく降る雨と帰ろう

憎みあいの果てに何が生まれるの

わたし、わたしが先に 忘れよう〜〜♪


 こんなちっぽけな私みたいな存在でも、見守られ愛してくれる誰かがいるかもしれない…読み終えて、こんな感覚に満たされ目頭が熱くなる作品は、今まで出会ったことがないかもしれません。不思議な感覚です。






 



 

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