嵐の夜、甘いキャンディーの棘が痛くて…
題名:ストロベリーポップキャンディー。
作者:五水井ラグ
紹介文より抜粋:
「友だちになって下さい、……嘘でいいから」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880874248
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その日の嵐は、少年少女の心と一緒に読み手の私の心まで攫っていった…読了後の率直な感想です。
クラスメイトの十時楓から「友達になろ?」と言われたハルは、自分の名前を「ふう」と呼び奇妙な発言をする楓に対し、妙に馴れ馴れしい態度が嘘くさい、と拒絶し、傷付けてしまいます。
そんな中、嵐がやってきます。嵐の夜とお詫びのつもりのストロベリーポップキャンディー、二人で交わした会話が、その後にやってくるショッキングな出来事を機に、点と点が繋がっていき、冒頭のハルの視点に帰り物語は終幕します。
最後まで読み手を引っ張っていく繊細な心象風景の描写が素晴らしいです。
「ストロベリーポップキャンディー」というタイトルの甘さは、楓の第一印象と重なるのだけれど、その後の展開は棘に刺されたようにチクチクと痛い。そういう触覚の他に、雨風の冷たさ、夜の暗さなど、あらゆる感覚を捉えて放さない力を、本作は持っているように感じました。
私たちは、大人になるとかつて敏感だった感覚受容器はどんどん鈍麻し、感情の記憶も薄れていってしまうものです。それを永遠にするため「忘れてなるものか」と文章に閉じ込めたような、そしてそれに触れると読み手も思春期の時代に引き戻される…そんな不思議な物語でした。
ちなみに「楓」の花言葉は「大切な思い出」「美しい変化」だそうです。ハルと楓の関係が、まさしくそれで、美しい喪失でした。ありがとうございました。
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