第3話 人斬り女豹

物陰から、 隠れていた少年が出てきた。 


「飛鳥(アスカ)さん!」


「おっ!、 ケンタ無事だったか!。 他の皆んなはどうした?」


「国の連中に連れ去られた…、 ごめんなさい、 僕は何も出来なかった」


「謝るな、 お前はまだ子供だ。 絶対皆んな助けてやる!」


俺は2人に駆け寄った。


「どうやって助ける?、 人質の居場所は?」


「簡単だ、 …連れてこい!」


飛鳥は部下にそう命じると。 1人の男を連れてきた、 男は気を失っている。 すると飛鳥は男に近づき、 腹部を思いっきり蹴飛ばした、 男は苦しみ悶えながら気を取り戻した。


「ぐはぁ、 …テメェ死にたいのか?クソアマ!」


「女性に対し失礼なゴミ野郎だ…、 お前に聞きたい事がある」


「聞きたい事?、 は!、 誰が言うか間抜け!」


「腕を…」


飛鳥がそう言うと、 部下達は男を抑え、 腕を掴み前に出した。 飛鳥は刀を構えた。


「まさか…、 よせ!」


スパン!


目にも止まらぬ速さで振り下ろされた刀は男の腕を一瞬で切り飛ばした。


「うぁああああ!、 腕が…、 俺の腕が!」


飛鳥は、 痛みに苦しむ男に顔を近づき、 凄い剣幕で男を脅す様に問い掛けた。


「聞きたい事がある…、 集落の皆んなは何処に?」


「大事な奴隷だ、 言えば王族に殺される…っ!」


すると飛鳥は、 不気味な笑みを浮かべながら、 言った。


「今、 手当てをしないとお前、 出血多量で死ぬぞ?、 フフ…それとも両手、 両足の順で斬り落とそうか?。 私は何方で構わんが?、 早くしないと切ってしまうぞ…私の刀は血を求めている様だからな…フフ」


男は顔中に脂汗を流しながら、 痛みに顔を歪める。 飛鳥はそれを見て笑っている、 何方も普通では無い、 昔の世界なら。


「全く強情な奴だ…、 ではもう一本いっとく?。 よし…、 次の腕だ!」


再び部下達は男を抑え、 腕を掴んだ。 男は必死に抵抗している。


「さっさとしねえかテメェら!、 アァン!」


男の抵抗も虚しく、 腕を前に差し出された。 


「フフ…、 覚悟しろゴミ野郎!」


飛鳥は刀を頭上に構えた、 真っ向斬りと言うやつだ。 飛鳥は笑い、 男は目を見開きながら、 それを見た、 その悪魔の様な姿を。 男は耐えきれず、 とうとう砕けた。


「分かった…言うよ…っ!。 23-A地区だ、 此処から東に行けば、 工場の廃墟がある…、 皆んなそこにいる!。 俺は吐いたんだ…、 だから…、 だから助けてくれぇ!」


飛鳥は刀を下ろした。


「あ…、 ありがとう…」


「ありがとう…っか」


「…っえ?」


飛鳥は下に下げた刀の刃を男に向ける様に、 下から上に、 目の止まらぬ速さで切り上げた!。


「嘘だよ、 バーカ!」 


飛鳥の刀は、 男の首を一瞬で撥ねた。 首は息良い良く転げ落ち、 傷口からは、 まるで噴水の様に血を撒き散らした。


「お前らに対する慈悲なんて、 私は持ち合わせてねーよ、 間抜け…。 聞いたなお前ら、 そして人斬り。 23-A地区だ、 そこに集落の皆んなが居る。 23-A地区にある廃墟は一つだけだ」


俺は飛鳥に近づき言った。


「ちょっと待て、 誰が行くと言った?」


「お前は王の敵、 ならば私達の味方って訳だ…、 違うか?。 "ボス"はどう言うか知らんが…、 きっとお前を気にいるだろうよ」


「ボス…?、 お前がボスでは無かったのか?」


「私は、 ボスに腕を買われた侍さ…。 どうだ、 ボスに会いたくないか?、 反乱軍を作り上げた男、 最も王国を憎む者だ…、 興味あるだろ人斬り?」


最も王国を憎む者か…、 確かに興味がある。 反乱軍と手を組めば、 王に近付けるかも知れん、 だが…


「王を殺すのは俺だ、 それだけは誰にも譲らん!」


「その発言、 お前は、 ますますボス好みの男だ。 そう言えば…、 聞いていなかったな…お前の名前、 あるなら言え」


「貴山 早手だ」


「貴山 早手…まさか?!、 王の弟か!、 噂には聞いている。 フフ…反乱軍に是非欲しい男だ。 私の名は中井 飛鳥(ナカイ アスカ)だ、 よろしくな、 "人斬り女豹"と言った方が分かるかな?」


「人斬り女豹…、 聞いた事は有る。 かなりのやり手だと…」


「嬉しいね…、 貴山 早手にそう言ってもらえるなんて。 フフ…あんたと一度斬り合いしたいもんだ…何方かがくたばるまでな、 だが、 今はそんな事してる場合じゃないか…」


飛鳥は刀の血を飛ばし、 何処か残念そうに鞘に納めた。 そして部下達を集め言った。


「23-A地区には直ぐに行く。 恐らく、 奴らは捕虜の見定中だ、 価値を付けて、 送る国を決めている最中だろ、 そこに私達が派手に暴れ、 ゴミ共を皆殺しにする…それが作戦だ!、 異論はないな?」


作戦と言うには余りにも程遠い内容…、 だが、 俺には分かる…この女の実力、 殺意…まさに生まれ持っての女豹。 噂通通りの女…、 いや人斬り。 俺達は少年 ケンタを廃工場に残し、 23-A地区の廃工場へ向かう。 俺達は外へ出た、 すると3人の死体が無残に転がっていた。 飛鳥達はそれぞれバイク、 バギーに乗り込んだ。


「中井…だったな、 一ついいか?」


「なんだ?」


「何故、 反乱軍に?」


「…フッ」


飛鳥は声高々に笑った。


「悪を成敗するのに理由がいるのか?。 さあ愚図愚図してると置いてくぞ!、 バイクは乗れるよな?」


「馬より得意だ」


「ならば良かった。 ゴミ供のバイクだが上等な物だ。 直ぐに乗れ、 血祭りの始まりだ…やるぞテメェら!、 遅れたら斬り殺すからな!!」


俺達はエンジン音を大地に響かせながら、 23-A地区の廃工場へと走った…。







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世紀末サムライ @sin1206so

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