飽きさせない構成とスピード感、残虐描写がありながらも読ませる筆力は秀逸
- ★★★ Excellent!!!
きっかけは公募でどんな作品が残っているか知るために読んだが、想像以上に素晴らしい出来だった。通常こういったデスゲーム物の作品は勢いで書かれただけで竜頭蛇尾に終わる傾向があるが、本作については最後まで続きが気になりどんどん読む事が出来た。恐らくかなり念入りにプロットを練り込んだのではないか。
イジメ被害を苦に自殺した女子高生、優乃(ゆうの)の遺書から本作は始まる。一転、いきなり復讐者の手に落ちたクラスの場面に変わる。いい意味でのネット小説の強みか、大胆な切り口で無駄な場面を省略して、テンポよく物語を進めるので飽きさせない。
おそらく主人公の蒼樹空也(あおき くうや)の視点を通じて読者ごと主観で物語を読ませる計算あったのか、身構える時間も全く与えずにショッキングな同級生の死が立て続けに見せられるので常に緊張感がある。映像化すれば間違いなくR18設定の残虐性が文字だけの世界で存分に発揮される。
残虐な描写だけでなく、各デスゲームのルールや展開、人々が狂気に陥っていくさま、クラスのリーダーが闇落ちしていく描写の巧みさには舌を巻いた。明らかに精緻な計算の上になされた構成はB級路線をB級で終わらせない。
そのまま映画化する事も可能ではあろうが、おそらくかつてのバトルロワイヤルと似たような騒動を起こすのではないか。この時代だからこそ若い世代に届く道徳の教科書たりえる小説になっているかと思う。実に素晴らしい作品だった。