一生記憶に残る作品

標的を作ることで、それ以外の連帯感を作り出し『円滑』な運営を図る。昔から政治でも用いられてきた手法です。
こういった弱者と強者の構図は、国際社会にも日本社会にも、会社にも学校にも、小さな単位では家庭にも存在します。

いじめを目の当たりにせず大人になった人はいるのでしょうか。
撲滅することが難しい、いじめに、あなたはこれまでどのように立ち向かってきたでしょうか。
被害者、見て見ぬ振りをした人、加害者に協力せざるを得なかった人。誰の心にも、いまもずっと古傷として残っているのではないでしょうか。

この残酷な物語は、人間の醜さと弱さを一切手加減することなく炙り出し、読者に思考するよう迫ります。
贖罪を訴え、同時に贖罪など不可能だと突きつけます。
そのへんにある美しい物語が賛美する『正義』すら、本当に正義なのかと問いかけます。

私は、この物語のことを一生忘れないでしょう。ひとつ悔しく思うことは、この物語が純粋な加害者に届くことは、おそらくないということです。せめて、それ以外の人のもとに少しでも多く届くことを願って、このレビューを書かせていただきました。

二章があるということなので、主人公がどんな結論を出すのか考えつつ待ちたいと思います。

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