第14話





久能秀隆は楓目掛けて腕を伸ばし攻撃を仕掛けた。


楓はすばやく避ける。


久能の懐に入り込むと楓は腹に一発パンチを食らわした。


『ぐあ・・』久能が膝を着く。



2人の戦いを楠木宗介と黄昏貴美子はただ見つめていた。


中2階のフロアには佐渡も居た。



『戦闘は攻撃だけではない』


楓はうずくまる久能を上から見下ろしながら語りだした。


『うるさい!』久能は苦しみながらも今度は足を伸ばし、足払いを仕掛けた。


楓はそれもジャンプで交わすとそのまま久能の顔に蹴りを入れる。


久能は蹴りを顔面に受け、後ろに吹っ飛んでいった。



『オレは”グレート・エスケープ”という組織で戦闘の全てを教えてもらった』


楓は久能に近づきながら語りを続ける。


『”グレート・エスケープ”では戦闘だけではなく、その時に優先するべき選択肢を咄嗟に見極める力も教わった』


久能は手すりを持ちながら立ち上がっていた。


『戦闘はただ戦うことだけではない、防御も戦闘の一つだ お前にはそれがない』


『必要なくないか』久能はそう言うと再び腕を伸ばし、強靭な脚力で楓に瞬時に近づいていった。


しかし楓はそれすらも予知し、悠々と交わした。


久能もさすがに何か異変を感じ始めていた。


『な・・なぜだ・・』


『お前の攻撃パターンは極めて単純だ、クアトロの能力に依存しすぎている』


楓は再び久能の前に立ちふさがった。


『今のお前はオレと同じくグレート・エスケープで訓練された楠木宗介やZACKで人命の為に任務についている黄昏貴美子にさえ勝てない』


『うぉー!!!』久能はさらに攻撃を仕掛けた。


楓はそれもすばやく交わすと久能の腕を取り、関節を極めた。


『ぐわ・・』久能が苦痛の表情を浮かべる。



『お前は戦う事が最優先になっている』


『なに・・・?』





『人々を守ることが最優先されなければいけない そのための戦いだ』




楓は久能の腕を解くとスーツの上着とネクタイを取った。



『宗介、貴美子 時間がない、すぐに九十九に向かう』






久能秀隆はZACKの屋上に居た。


鳥飼楓の言葉が頭から離れなかった。




『くそ!』



やり場のない怒りをどこにまき散らせばいいいか分からないでいた。


その時、携帯に通知が入った。


久能は携帯のディスプレイを見ると、見覚えのある名前が表示されていた。



”キャシー”からだった。


キャシーは久能がクアトロ能力を受け入れるきっかけとなった通称”シドニー事件”の関係者だった。


久能はゆっくりメールを確認する。


”Dear クノウ 


昨晩、クーパーが息を引き取りました。


娘のミシェルと私とで看取りました。


クーパーはあなたに感謝していましたよ、彼の為に力を受け入れたことに。


あなたがその力で多くの人々を助けていく事を願っています。”


久能は物思いに吹かれながら空を見上げた。






『ZACKの専用ジェット機で向かえば数分で九十九へ着くわ』黄昏貴美子が操縦席に座りながら後ろにいる楓と宗介に話しかけた。


楓と宗介はすでにスーツアップしており、操縦席の黄昏貴美子の方を見ていた。



すると貴美子はジェット機の後ろのパッチに人影を確認すると・・・


『もう一人いるわよ』


楓と宗介は後ろを振り返る。




久能秀隆がスーツアップして立っていた。


『少し、自分を見失っていたようだ』


『いけるのか?』楓が再確認する。


すると久能は楓に渡されたシールドを掲げると背中のフックに装着した。


それを見た楓は貴美子の方に振り返り言葉をかける




『よし、行くぞ』



ZACKのジェット機が空に飛び立っていった。




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THE OUTSIDERS RALPH novels @ralph

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