第13話




『どうなってるんだ!』久能秀隆は大きな声を発しながらメイン本部に入って来た。


『アザゼルの真の目的は奇襲ではなく、”コア”の場所を知ることだったんだ・・』楓はつぶやく。


『奴に先を越されたら、ルシファーが蘇るぞ』尚も久能は楓に食い下がる。



『緒方くん、それで”コア”は何処にある』


『あ、これが”コア”かどうかはまだ分かりませんが、さっき言っていた未知のエネルギーを九十九で感知しました』


『九十九・・!』楓が驚きを隠せない表情で答えた。


『楓さん・・九十九は・・』楠木宗介が楓に声をかける。


T湾に浮かぶ洋上都市”九十九”は楓の生まれ育った街だった。


楓は今、クロウとして九十九の街で犯罪と戦っている。



『アザゼルが攻めて来る前に九十九市民を避難させるぞ』


『九十九市民の避難はZACKに任せろ、楓』佐渡が楓の肩を叩きながら言った。


『オレも宛がある人物に伝えます』


その時、ZACKの本部に大きな光が包み込んだ。



『な・・なんだ・・?』久能は驚きながら光の方を見た。




『ミカエル、”神”ゴッドがお呼びだ 状況を伝えろと・・』


光の中からはミカエルと同じように大きな白い翼を持ち、頑丈な甲冑をまとった人物が現れた。


ミカエルとは違って黄金色の健康的な肌を持ち、口ひげを豪快に生やした人物だった。



『分かった、ガブリエル』


『ガブリエル・・?』久能が首を傾げる。



『これも旧約聖書に出てくる天使の一人よ』貴美子が小声でつぶやく。


『すまない、一度天界に戻らないといけない』


こっち人界は任せろ』楓が力強く答える。


ミカエルは楓の方へ近づく。


『いいか楓、これ以上”コア”のエネルギーを低下させるな ”コア”の力が弱まると今以上に亀裂が大きくなり、アザゼルが軍隊を引き連れて襲ってくる』


『わかった、絶対に”コア”は守る』



楓とミカエルはそう言葉を交わすとガッチリ腕を交わした。







鳥飼楓にはまだやることがあった。




楓は本部にいる久能秀隆を呼び止めた。


『少し、相手してくれないか?』


『なんだ、急に』


『これからオレたちは強大な敵と戦うことになる』


久能は黙って聞いている。


『このままでは久能秀隆・・レッドバロンは戦力にならない』


『なんだと・・』


『だからお前を鍛える』


『お前がか、笑わせるなよ』


『オレは冗談を言うタイプじゃない』


『いいだろう、クロウスーツを着てこい』


『いや、お前の相手ならビジネススーツで十分だ』


そう言うと楓はスーツの上着とネクタイだけ外して、構えを取った。


『言ってくれるじゃないか、いいだろう オレも手加減しないぞ』



鳥飼楓と久能秀隆は静かに対峙していた。





◇楓と久能が対峙する1時間前





ミカエルが天界に戻った後、楓は佐渡と2人きりでZACKの屋上にいた。



『久能秀隆をどう思う』佐渡から切り出す。


『持っているポテンシャルは確かです・・しかし、彼はその力に頼り過ぎている』



『最初はそういう奴ではなかった』佐渡が語りだす。


『久能秀隆は初め”クアトロ”の能力を憎んでいた、そして密かな暮らしを望んでいた・・しかし、ある事件をきっかけに力を受け入れたんだ』


『”シドニー事件”ですね』(*”RED BARON-the four power-参照)


『ああ、ところがだ・・力を受け入れた久能はその力にすがり過ぎる傾向が現れた』


『それは今回の一件で良くわかりました』楓は少し皮肉を交えて答える。





『楓、久能を正しい道に導いてくれ』








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