第4話

ハンター試験の次の日、アズサはギルドに来ていた。

今日はネムは用事があると言って来ていない。


「おいあれ。噂のランク100じゃねぇか?」

「あの白フードがか?信じられねぇ」


ギルド内で騒がれるアズサ。そんなことに耳を貸さずに依頼を探しに行った。


「これなんか良さそう」


そう言って手に取ったのはランク50以上が推奨の大型の魔物、シャドーウルフの危険個体の討伐だった。

危険個体とは通常の魔物よりも遥かに強く凶暴な個体のこと。なぜ出現するのかはわかってはいない。


アズサは依頼をカウンターに持っていく。


「えーと、おひとりでですか?」


昨日とは違う受付嬢が言った。

依頼を受ける時は基本ランクは確認しない。ただしランクが決められている依頼は別だ。

アズサが頷く。


「わかりました。くれぐれも死なないように」


受付嬢はそう言って心配しながらも見送ってくれた。


依頼に書いてあった場所は貴族の家だった。なんでも庭にシャドーウルフの群れが侵入したらしい。そしてそのシャドーウルフ達を統率しているのがシャドーウルフの危険個体と言う訳だ。

ここから貴族の家までは徒歩二時間。


「そういえばあ依頼、失敗回数が五十回超えてたな・・・・・・」


失敗回数は上がれば上がるほど危険度が上がっていく。五十回も失敗するのは珍しい。

受付嬢が心配していたのも失敗が相次いで死者が出ているからだろう。


アズサが歩くこと二時間。森の横に建つ大きな御屋敷に着いた。入口にはグーベンテル家と書かれていた。当然アズサには分からない。


「おや?君はギルドから来た子かい?」


御屋敷の門の前に立っていると話しかけられた。いかにも高そうな服に身を包み護身用であろう剣を持つ優しそうなおじいさん。おそらくだがこの人がグーベンテル家当主だろう。


「どうも。私はグーベンテル家当主のグーベンテル・カージスと申します。失礼ながらおひとりではシャドーウルフには勝てないと思います。中には二百のシャドーウルフと危険個体が二匹おります」

「問題ありません。あとお尋ねしたいのですが建物への被害は避けた方がいいですか?」

「出来れば避けて頂きたい」


カージスはそう言って深々と頭を下げた。慌ててアズサは頭を上げるように言った。


「わかりました。すぐ終わらせます」

「あ、はあ。でも・・・・・・」


カージスも受付嬢のように不安そうだった。

それを押し切るアズサ。


「では」


アズサはカージスを外に残して門を開けた。

ガシャンと音を立てて門が閉まる。中には血痕が残されていた。御屋敷の玄関付近には人間の腕が落ちていた。


「【時間解析魔法】」


アズサは【時間解析魔法】と言う物体に記録された過去を見ることができる魔法を使った。

特定の魔法を発動する時には魔法名を言ったりキーワードを言う。これは魔法対するイメージを引き出すものだ。魔法はイメージに大きく作用される。まずは魔法陣を組み合わせて次にイメージで効果を持たせる。魔法陣に合わない効果は魔法を発動するに至らない。

アズサ使った【時間解析魔法】は既に決められた魔法であり覚えている魔法陣を思い出すだけで発動する。

アズサの右目に透き通るような青い色をした輪っかが二個浮かぶ。


「切れてまだ二時間。腕の持ち主はまだ生きてる。しかもあれは女性か」


解析を終えた瞬間にシャドーウルフが五十体ほど現れた。

アズサは運動が得意では無いためその場から動かない。と言うか体力が無いのである。来る時もスタミナポーションを十本使用済みだ。


「【殲滅ノ聖星】っと」


【殲滅ノ聖星】を発動する。アズサの足元に魔法陣が展開される。

シャドーウルフが襲ってくる。しかしシャドーウルフはアズサに触れることができない。【殲滅ノ聖星】の効果は魔物にのみダメージを与える見えない球体を出すこと。シャドーウルフが消えると同時に一瞬だけ小さな球体が見える。

全部で球体は十個。これを身につけたまま屋敷の中に向かった。

アズサは落ちた腕を拾って氷漬けにした。なぜなら持ち主に返そうと思ったからだ。かなり魔力を消耗するが今くらいの時間経過ならギリギリ間に合う。


屋敷内にはシャドーウルフはいないようだった。

床に血の跡ある。アズサは血の跡を追って腕の持ち主を探すことを最優先とした。

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ぼっちですが可愛いは好きですし魔法は使えすぎるので楽しんでみました! しろちゃ犬 @Sirotyaken

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