第3話

「え、えーと・・・・・・続いては魔法です」


受付嬢がネムの近接戦闘の結果をまだ信じられず呂律が回っていない。


「じゃあ私が!」


奇妙な程にやる気があるアズサ。それもそのはずアズサは幻魔種である。魔法に関しては全種族最強なのだ。


アズサはゴーレムから少し離れた位置に立った。受付嬢が息を飲む。

ネムもアズサが幻魔種だとわかっているので息を飲んだ。

そしてアズサが魔力を解放した。

アズサを中心に魔力の嵐が吹き荒れる。観客がそれを見て柱の影にいっせいに逃げ込んだ。

そう、普通は魔力を解放する動作すらないのだ。これは幻魔種の特性と言うべきもので魔力が多すぎるが故にストッパーが必要なのである。


「はあ、受付嬢ちゃん。全力でやるね」

「え?あ、あの」


唐突の発言に受付嬢は困惑する。

増幅していく魔力の嵐にネムも受付嬢も隠れた。

そしてアズサが告げた。


「幻魔の紫姫しきが穿つ、天刑よ、黒星よ」


アズサは基本はしない詠唱を行った。アズサが使った魔法は【黒星ノ天罰】と言う殲滅魔法。この魔法はアズサが全ての魔力を解放して穿てば大都市が塵になるほどの威力を持つ。今回は20%の魔力解放の全力だったためそれほどの威力は出ない。


「ん?紫姫?」


受付嬢は何かに気づいたようだがそんなのを関係なくアズサの魔法が放たれた。

ゴーレムに対して無慈悲な攻撃が、オーバーな攻撃が放たれた。

ゴーレムの上空に黒い星、黒星が現れる。


「何・・・・・・アレ?」


柱の影から見ていたネムが言った。


「分かりません!」


全力で柱にしがみつく受付嬢。吹き荒れる嵐の向きが変わった。黒星に風が吸い込まれていく。

やがて、黒星が小さくなり嵐が消える。

ネムも受付嬢も観客も一安心したがそれは間違い。天より一本の黒い光が下り、闘技場ごと吹き飛ばした。いや、消し飛ばした。


「と、闘技場・・・・・・が・・・・・・ああ」


修理費を気にする受付嬢。病院へ運ばれる観客。


「あ、危なかった」


なんとか無傷で済んだネムだった。


その後はネムの魔法試験があった。ネムは狐火などの炎魔法しか使えないため穏便に終わった。

筆記試験に関しては二人はまさかの満点。森育ちなため魔物の知識などは豊富だったのだ。


♦□♦□♦□♦□♦□♦□♦


「ではハンターカードをお渡ししますね。ランクは1から100まであります。ネムさんは40から、アズサさんは100からです」


疲れでげっそりしている受付嬢だった。

この時、街で噂がたっていた。黒い星がギルドを飲み込んだ、と。


アズサとネムはギルドカードを貰うとそれぞれ宿谷に戻った。

その頃、受付嬢は。


「紫姫か・・・・・・」


自室の枕に抱きついて考えていた。


「幻魔種の紫の瞳を持つ女。それ即ち、最強であり最弱である。古代の文献に書かれていたなあ。本当だったんだ。紫姫は魔法にのみ優れその他はほぼできない。でもあの威力の魔法で欠点が無くなっちゃうよ」


過去に読んだ文献の内容を思い出しながら受付嬢は呟いた。

受付嬢は明日も仕事があるためもう寝ることにしたのだった。


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