第2話

身分証を発行したアズサは宿谷に向かった。

所持金は10000Gほどある。アズサが泊まった宿谷は一晩200G。まだ当分持ちそうではあるが食事代も引くとなると早速魔物を倒したいところではある。


「あぁー」


ベットに飛び込み枕に顔を埋めた。

森育ちのアズサにとっては国と言うものは落ち着かないのである。虫の鳴き声もなければ魔物の遠吠えもない。自然に産まれたからこその感覚だ。


「もう月があんなに高く・・・・・・寝よ」


月明かりが眩しい。漆黒の闇に浮かぶ黄金の月はアズサに時の刻みを教えた。

アズサは来る時につけていた手足の軽い装備を外し短剣をベットの下に置く。白いフードを深く被ってそのままアズサは眠りについた。


アズサが深い眠りにつくと夢を見た。

白銀の四枚の翼を持つ龍。

銀の炎を吐き村を、故郷を消し去る。

会えない父。居場所が分からない父。

悲しみに浸る母。

こちらに見向きもしない白銀の龍。


アズサの嫌な夢だった。龍が暴れる夢を見て朝を迎えた。


「うっ!はぁー!・・・・・・またあの夢、懲りないなぁ」


大きく伸びをして呟いた。

今日はネムとギルドに行きハンター登録をする日。ネム曰く自分の装備をつけて行かないと試験を受けられないらしい。試験内容は実技と筆記。実技では近接戦闘と魔法を見る。筆記では魔法学と魔獣についてだ。

アズサは動きやすいピチっとした黒い服を来て白いフードのついた短い上着を着る。下も動きやすいピチっとした膝くらいまでの黒い服を来て白いミニスカートを履いた。靴は幻魔種に伝わる大熊のブーツだ。篭手装備とすね当ての装備をしっかりと装着して短剣を腰後ろに置く。

これで出発の準備が出来た。


「よし!待ち合わせ場所はギルド!場所は聞いたし問題無し!」


アズサは宿谷を後にしてギルドに向かった。ギルドはここから徒歩10分ほどだ。

街を見ながらギルドに向かった。

ギルドの前に着くとそこには白い着物を着たネムが立っていた。腰には刀をかけてある。


「あっ!アズサさーん!こっちでーす!」

「ほーい」


ネムに駆け寄った。

そしてギルドの扉を開ける。中には大勢のハンターと見られる人がいて賑わっていた。

だがアズサはこのような場所が好きではない。


「早く済まそ・・・・・・」

「私もあまり好きではありません。騒がしいのは・・・・・・」


アズサの一言に続いてネムが言った。狐種も幻魔種と同じように森で暮らすらしいからそこは似ているのだろう。


「受付は・・・・・・あそこか」


二人ははぐれないように少しだけ離れたカウンターに向かった。受付嬢は人間の少女だった。黒い髪がよく似合っている。


「えーと、試験を要望します」


堅苦しくアズサが言った。となりでネムも頷く。


「わかりました。では闘技場に行きましょう」


見た目十三歳くらいの少女がよくやるなと感心しながら二人は後ろについて行った。

無言でついて行くとレンガで作られた大きな闘技場に着いた。

受付嬢の話によると闘技場の周りにいる観客は強い人をパーティーに引き込もうとしてる人らしい。困ったら声をかけてくれとのことだった。


「では最初に近接戦闘をします。魔力で作ったゴーレムが相手です。怪我はしないので大丈夫ですよ!」

「わかりました。では私から」


最初はアズサだ。

アズサは闘技場に入りゴーレムの前に立つ。受付嬢の合図を元に試験が開始した。観客もじっと見ている。


「よし」


真っ直ぐ殴ってきたゴーレムの拳をしゃがんで躱し距離を詰める。この試験は魔法禁止なので幻魔種には厳しかった。

アズサはゴーレムの腕を掴みゴーレムに乗る。そして首をグキっと一回だけ折った。


「終了です!」


受付嬢はニコッと笑って言った。

観客も「おぉー」と言う顔をしていた。


「次はネムさんです」


ネムもゴーレムの前に立つ。そして再び合図がなる。

ネムはゴーレムの拳が届くよりも早く走り刀でゴーレムを真っ二つにした。

あまりの速さに観客も受付嬢もアズサも度肝を抜かれた感じだった。


「あ、しゅ、終了です・・・・・・うわぁ」


受付嬢も思わず声が漏れていた。なにせゴーレムの強度は鉄板を10枚重ねたほどだ。それを刀一振とは刀の切れ味がいいがそれを使いこなせるネムもネムである。

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