第5話『過ぎた日々に忘れ物』
自分は特別な存在。
僕はいろんな勘違いを勘違いしたまま六年生を迎えた。
紐靴にリュック、ノートに登場しないカラフルペンとペンケース。
全て周りにあわせて手にいれた。
でも実際どれもこれも最初だけ。
自己解決してもまた新たな違和感が生まれてくる。
ある日の授業中、一人がお腹が痛いと席を立ってトイレに行った。
その後の休み時間に誰かがウンコマン!って言い出したんだ。その発言で皆も一緒になってからかってさ。その子は反論できないまま机に伏せって泣いていた。
もちろん島でも似たようなからかいはあったけど、ウンコたくさん祭りでした!って言い返したりして、いじめじみた笑いじゃなかった。
ウンコなんて誰でもするだろ。
授業中に限らず学校のトイレ事情は本当にハードルが高い。
僕は恐くなってしまった。
毎朝40分トイレに籠る。
授業中腹が痛くならないようにと毎日の習慣となってしまった。
でもこれだけ意識してしまうと本当に痛くなってしまうものだ。
授業開始早々にお腹が痛くなってきた。先生トイレ!って何故言えなくなってしまったのか。
なんとか気を紛らわそうと、深呼吸してみたり、教科書反対から読んでみたり、内腿におもいっきり爪を立ててみたり。授業内容なんて全く頭に入らない。
先生糞が出る!
やっぱり言えない。なんとか耐えるしかない。自分に言い聞かせて、なかなか進まない時計を睨み付ける。
大丈夫だ。
大丈夫だ。
終わりのチャイムが鳴り、速攻でトイレに向かう訳だが僕が向かったのは体育館下にあるトイレ。
ここのトイレの利用頻度は低い。トイレ緊急マニュアルを完成させていた僕は無事に初任務を完了させた。
危なかった。
内腿はすっかり赤くなり夜には紫に変わる。この戦いがいかに死闘だったかを物語る。
何がいけなかったのか。朝食を食べた事が原因か?
その答えを導いてしまったらもう朝食は食べれない。
トイレに籠る、朝食を食べない。そして下痢止めを服用する。
ここまですれば絶対に学校でお腹が痛くなる事はない。
事ある毎にそう自己解決して対処法を確信しそれを疑わなかった。
どこで間違えたんだ。
誰のせいだ。
誰のせいでこうなった。
心からの叫びは様々なフィルターを通り濾過され、別物となり、大切な事、大切な物、漂い消える。
そうじゃない。
僕はここにいる。でも、この笑顔の僕は偽物だ。
何をどうしたいのかなんて解らない。
いや、本当はわかってる。それを口にできないだけ。
もうブレーキは壊れて使えない。移り変わるスピードを恐れて、ただ踏ん張る毎日だけど。
オニくん、聞いてほしい。
「躊躇してるけど、必ずBIGになる」
名声を得たい。お金持ちになりたい。って事じゃない。
僕自身が意味を理解して、答えを見つける日まで。
どうか待っていてほしい。
紫鬼-murasakioni- 山陰ニーホ @niho2
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