イルミネーション(旧)

雨世界

1 なんだか、泣いちゃいそうだよ。

 イルミネーション

 

 登場人物


 相葉七緒 泣いている女性 おばあちゃん


 相葉みどり 中学生 七緒の孫 おばあちゃんっ子


 言葉 ことば 男の子 花をくれる。


 プロローグ


 なんだか、泣いちゃいそうだよ。


 本編


 ありがとう。愛してくれて。


 相葉みどりは大好きな七緒おばあちゃんのお家を久しぶりに訪ねた。

「こんにちは」

「やあ、よく来たね。みどりちゃん」

 みどりを出迎えてくれた、めがねをかけた、白髪のみどりの母方のおじいちゃんが優しい顔で、そう言った。

 みどりがおじいちゃんに案内されて綺麗に清掃された玄関を通って、七緒おばあちゃんの家の中に入ると、そこにはベットの上で、ぐっすりと眠っている七緒おばあちゃんがいた。

「すまないね。ちょうど少し前に眠ってしまったところなんだ」

「いいえ。構いません。私が七緒おばあちゃんの言葉に甘えて、勝手にきちゃっただけですから」にっこりと笑って、みどりは言う。

「あの、すみません」

「なんだい?」

「もしよかったら、ここで少しだけ、おばあちゃんの寝顔を見ていてもいいですか?」みどりは言う。

「もちろん。別に全然構わないよ。きっと七緒も喜ぶと思う」

「ありがとうございます。おじいちゃん」

 みどりは言った。


 みどりのおじいちゃんはにっこりと微笑むと、それから七緒おばあちゃんの眠っている部屋を出て、台所のほうに行ってしまった。

 部屋の中で七緒おばあちゃんと二人っきりになったみどりは、おばあちゃんの眠っているベットの横にある椅子の上に座って、そこからぐっすりととても幸せそうな顔をして眠っている七緒おばあちゃんの顔を見た。


 少しだけ顔を近づけてみると、すー、すー、と言うおばあちゃんの寝息が聞こえてきた。

 みどりはベットの外に出ている、七緒おばあちゃんの小さなしわくちゃの手をそっと握った。

 それから、みどりは「ありがとう。七緒おばあちゃん」と小さな声で七緒おばあちゃんにそう言った。

 みどりの目には涙が溜まっている。(みどりは今にも泣き出しそうな、そんな真っ赤な目をしていた)


 みどりは涙を我慢するために、七緒おばあちゃんから顔を話して、椅子の上で背筋を伸ばすと、それからそっと部屋の窓の外を見た。

 そこには七緒おばあちゃんが大切に育てている中庭の花や木や植物があり、そして、満開の花が咲いている、大きな梅の木の枝にはすずめが二羽、ちゅんちゅんと鳴きながら、止まっていた。


 みどりはそんな春の穏やかな風景を見て、七緒おばあちゃんが窓際に座って、そこからじっと、今、みどりが見ている中庭の風景を見て、幸せそうに笑っている姿を思い出した。

 ……七緒おばあちゃん。

 みどりは、結局泣いてしまった。


 みどりはハンカチを取り出して目元を拭いた。

 すると、「……みどりちゃんかい?」と、そんなみどりに、いつの間にか目を覚ました七緒おばあちゃんがそう、優しく声をかけた。

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