放課後小説ライフ

山岡咲美

放課後小説ライフ

 「白石しらいしなぜ部室の鍵を閉めた?」


『だって黒崎くろさきくんこれが文芸部のルールらしいから』


「どんなルールだ」


『いやね、あそこに鍵掛かった棚が在るでしょ、文芸部の先輩が代々残したお宝BL本があって、読んでる最中に行きなり開けられ無い様に部室に鍵を掛けるルールになったらしいのよ』


「文芸部何やってんだ?」


『私先輩から棚の鍵預かってるからあとで読もうよ』


「頭腐ってんのか?」


『ある意味ね』


「読まねーよ、俺漫画研究会に入って漫画描きたいんだよ!」


『漫画のもあるよ!』


「なぜそうまでして俺を文芸部に引き込もうとする!」


『だって今、私1人しか文芸部員居ないからボッチみたいに見えちゃうの、クラスメイトに可哀想なだと思われたくないから一緒に文芸部活動して!』


「え?…それが俺を文芸部に誘う理由?俺漫画家目指してんのに?」


『そうだけど』


「心の底から嫌でござる!」


『そんな事言わないでござるー!!』


「甘えた声出すな、第一文芸部が白石1人なのってその先輩達の所業とBL本のせいだと思うぞ、多分何かやらかしたんだ」


『じゃあさ取りあえず、取りあえずでいいから何か書いてよ、書いたらきっと文芸部の楽しさが分かるよ、ちょっと書くだけでいいから、ね、ね、ね、』


「俺が小説書くの?白石は?」


『書かないよ、書くの大変だし』


「なんたる理不尽」


『早く早く』


「早くったってノートに書けばいいのか?」


『相変わらず黒崎くんのノート漫画でいっぱいよね』


「ああ、これ思い付きを何となく描く用だから、いつもは漫画描くのに6ミリ横罫よこけいを右開き、つまり逆開きで使うんだけど小説書くなら左開きで普通に横書きだな」


『結構乗り気なのね』


「そりゃあ何か描くの好きだし読んでくれる人が居たら嬉しいんだよ」


『じゃ主人公私で書いてみて』


「え?なんで白石を?」


『か・い・て・み・て!』


「じゃあ…こんな感じで」


「白石ミツコは高校1年生の女子だ、部活が必須のこの高校で運動部はつらそう、漫画研究会は以外と熱血だったとの理由でこの文芸部の扉を叩いた、ちなみに彼女は中学時代『小説一発当てて夢の印税生活よ!』とか言っていたが即効で挫折したらしい、そして『東京に住んでたらきっと読モになってたのに!』とか本気で言ってる痛い女だった。」


「どう?」


『誰がドキュメンタリー書けと言った!!』


「えっ、駄目?」


『取りあえず私の容姿が分からないから、まずはそこから書き直して』


「あっそっか、漫画じゃないからキャラクター描写文字でしなきゃいけないのか、じゃあこんな感じで?」


「白石ミツコはミディアムヘアの高校1年生の女子だ、ブレザーに当たる少し明るめの髪は軽くパーマしている、同学年の間ではナチュラルな眉が流行っていたが彼女は細めに整えるのが好みでそうしていた。」


「今度は?」


『良いけど何処なのか分かんないからその描写がほしい、読者の想像を手助けしなきゃ』


「漫画で言うところの背景が要るって事か」


「ここは川の近く、高台にあるレンガ作りの学び舎 桜城さくらじょう高校、昔は音大が併設されていたが今は移転して無い、彼女はなんだか部員が可愛く見えるとか言う理由で吹奏楽部を見学に行ったが音大が在った頃の名残でレベルが高いらしくそのまま扉を閉めたと言う。」


『だからドキュメンタリーにしないで!!』


「じゃあ、好きに書いて良い?ファンタジーとかSFとか会話劇ラブコメとか」


『会話劇ラブコメ?それどう言う小説よ』


「今読んでる感じの説明文の無い会話のみで構成されたラブコメ小説だよ」


『まあ良いけど、その前に私ばかり変に書かれたお返しさせてね』


「お返し?」


『黒崎アンゴはヘッポコ漫画家である、いつも通う散髪屋のおっちゃんは小学校の頃から彼の髪を短く切ろうとするのだが、この間またやらかしたらしい、ツーブロックである、彼はいきなり片側をバリカンでやらたと言い仕方なく合わせる事にしたのだと、可愛い、可愛い、同級生の女の子との登校時に嘆いて居たと言う。』


『どうよ、私もまだまだ書けるのよ』


「自分で可愛いとか書くなよ…」


『ね、楽しいでしょ?文芸部』


「まあ、楽しいけど、これって文芸部の活動か?」


『文芸部だよ、だって文芸部って小説書いたり、小説読んだり、小説の批評とかする部活だもの』


「確かに小説書いたし、書いた小説読んだし、その小説の批評もしたけど……何か思ってたのと違う」


『違ったら駄目?』


「駄目…じゃないけど」


『彼はそう言いつつこの青春の瞬間、この小説の1ページの様な時をとてもとても大切なものだと感じて居た、そしてこの時が彼女、白石ミツコと一緒に過ごした時だった事が彼の気持ちを変えさせる事となる「彼女と共に小説を書かきたい」彼は文芸部への入部を決めるのだった。』


「おかしな小説書かんで貰おうか」


『駄目かな黒崎くん』


「白石、ノート」


「そして彼女は文芸部への入部を決めた彼に対し本当の理由を話始める、『ただ黒崎くんと一緒に居たかっただけだよ、この文芸部ならふたりっきりで居られるから…』彼女は彼の事を愛して居たのだ。」


「白石、どうよこれ?」


『うん、そうだね』


「あの…ここ否定するとこだぞ」


『しないよ、だって本当の事だもの』


「……?」


『そう言った彼女は彼にそっとキスするのでした。』



『おしまい』

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