6章 人類の反撃
1話 少女の生真面目さと・・・
『首都・評議会議長室』
再起動したカーン少佐を、評議会議長は拍手で自室に迎えた。
カーンの宿る将校タイプの機体は武骨そのものだった。
しかし、その記憶回路の奥には、人類滅亡時にカーンが12歳だった時の少女の記憶が眠っている。
その武骨な機体と軍歴から、12歳の少女の面影は感じ取ることは不可能に近い。
ただその情報を知っていると、その思考パターンに、少女特有の生真面目さを感じなくもない。
5000年間消えることのない少女の生真面目さ。
>それは好意に値するが
議長は思考した。
少女の生真面目さを、思考回路の奥に秘めているカーンは、評議会議長を直視して
「反乱分子如きに、申し訳ありません」
その表情に媚は含まれていなかった。
まるで生真面目な女子の学級委員長に見つめられている気分だ。
議長は、それに微笑を浮かべ、
「気にするな。対竜族戦争の英雄」
「遠い過去の話です」
「英雄は何時までも英雄だ。
早速だがその英雄には、サマルカンドへ出向いて欲しい」
「サマルカンドへですか?」
「反乱軍がサマルカンドへ入った」
「反乱軍の殲滅ですか?」
「それも任務の1つだが、奴らの主力の精兵アローン兵と言えども数の前に必ず屈服する。それより貴校の才を買って、問題の本質を探って欲しい」
「問題の本質?」
議長が秘書を一目見ると、秘書は机の上に、アンドロイドの右腕を置いた。
「先日まで、私が使っていた右腕だ。
貴校にはこの右腕の故障原因を探ってもらいたい」
「議長の右腕の故障原因?」
と不可解な表情で聞き返した。
「この右腕に各地で頻発している反乱の、根本的問題が潜んでいる。私の直感だが」
カーンは無表情だったが、議長は、そこに【少女の生真面目さ】を見取った。
>それは好意に値するが
つづく
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