2話 アンドロイドの囚人の記憶


『惑星・ハデス』



掘り尽くされた鉱山を、見渡す丘に建てられた鉱山管理局の一角にある記憶図書館展望台。


展望台からは、決して晴れ晴れとした景色とは言えない、惑星・ハデスのごつごつとした岩肌と、ハデスの双子の星が見渡せた。


展望台に立った記憶図書館司書アンは「受刑ナンバー555」の事に思いを馳せた。


4800年前、このごつごつとした惑星・ハデスで、何時終わるとも解らない労働を課せられたアンドロイド。


臨時政府に対する反乱罪で捕らえられた受刑ナンバー555。


反乱罪・・・具体的な罪状はマイクロフィルムに綴じられた記憶には、何も記されてはいなかった。


記憶図書館司書アンは、受刑ナンバー555の記憶を覗いて以来、心の奥で起こる胸騒ぎが治まらなかった。

まるで受刑ナンバー555が、アンの心と身体の一部かの様に親近感を覚えた。


「もっと受刑ナンバー555の心に触れたい」

そんな衝動が、心の奥からとめどなく溢れ出した。

アン自身、それが何故なのか解らなかった。


「あそこなら、もしかすると、受刑ナンバー555の人類時代の記憶があるかも知れない」


アンは展望台の椅子から立ち上がると、記憶図書館最深部のGエリアと呼ばれる地下50階に向かった。


Gエリア、5000年前の人類がアンドロイド化する前の記憶が眠るエリアだ。


惑星・ハデスの総督府の許可無しには、立ち入ることが禁止されているエリアだ。

一介の記憶図書館司書のアンには、当然、立ち入り許可など降りるはずが無い場所。


ただここは辺境の惑星、見放された惑星・ハデス。監視などないに等しい場所。



つづく



いつも読んで頂き、ありがとうございます。

毎週、土曜日更新です O(≧∇≦)O イエイ!!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る