.
ふと、何を思ったか分からないが、彼の書斎に向かった。
ドアノブを回して中に入ると、本の香りが漂ってきた。
そして、ほんのり香る煙草の匂い。
私は、あまり煙草が好きではなかったけれど、彼から香る煙草の匂いは安心感があって好きだった。
彼のベットに座ると、何だか変な気持ちになった。
さとり『この間まで、此処にいたのに…』
何で、死んでしまったの?
そう問うても、応える人はいない。
何だか急に寂しくなって、今度は彼の椅子に座った。
まだ、ほんの少しだけ彼の温もりが残っているような気がして、胸が熱くなる。
彼は体育会系だったけれど、成績が悪いわけでは決してなかった。
寧ろ、上位に食い込んでいたくらいだ。
まさに、文武両道を擬人化したような人だった。
彼を思い出していると、涙が溢れて止まらなくなった。
拭いても拭いても零れてきて、彼の机を濡らしてしまう。
ぐっと唇を噛みしめて、頬を叩く。
「あんまり、溜め込まないようにね。」
「ちょっとは、僕を、周りを頼ってください。」
六花と皐月くんの言葉を思い出して、心にモヤモヤしたものを感じた。
『無理なんて、してない。』
それは、自分自身に対する言葉なのか、二人に向けた物なのか、どうしようもなく心がグチャグチャになって、分からなかった。
21gを探して 通行人Sの叫び @StartLine
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。21gを探しての最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます