第二章
子供は寝る時間、大人の時間
別に、変な意味はない
ただ、大人がお酒を飲むような時間帯だってこと。
さとり『やあ、皐月くん』
皐月「どうも」
無表情で返事を返すのは、高校の時彼との仲が良かった赤石皐月くん。
皐月くんと彼は、陸上部のエースを競う仲で中性的で周りと比べると華奢な皐月くんは男女共に人気があった。
彼から皐月くんを紹介されたときは、女の子と見間違えてしまったくらいだ。
皐月「僕の事を女性だと見間違えたときの事思い出してましたよね。」
苦虫を噛み潰したような顔をしながら、彼は私を睨み付けた。
さとり『そんな顔しないでくださいな、君の顔が中性的だから仕方ないですよ。』
ギムレットを一つ、と注文しながら彼に微笑んだ。
艶やかな黒髪に、碧の瞳。
おまけに、髪は肩ギリギリのショートで、何も言われなければ美少女と錯覚してしまう容姿だ。
出されたギムレットを飲みながら、彼が言っていたカクテル言葉を思い出した。
ギムレットのカクテル言葉は"遠い人を思う"
「俺が居なくなっても好きでい続けてくれよ?」
そういって笑う彼に、私も笑みを返した。
そう遠くない昔なのに、どうしようもなく懐かしくなって、ギムレットを飲み干した。
彼は、カクテルにも詳しかったっけ。
味や、アルコール度数、カクテル言葉。
彼から聞くそれに、いつまでも退屈は来なかった。
彼が私にジンライムを渡して、
「お前が俺以外を好きになっても、俺の恋は色褪せねぇからな!」
と言ったのに対して私が
「キザですね」と返すと彼は「おい」といいながら軽く私を小突いた。
彼と飲むお酒は美味しくて、お酒ではなく彼に酔ってしまいそうで。
目頭を熱くしながら、唇を噛んで涙を押さえる。
皐月「泉宮さんは溜め込みがちですから…。ライトくんが亡くなったからって自分のせいだとか思わないでくださいね。」
彼の言葉に少し驚きながら、私は彼に言葉を返す。
さとり『何のことか分からないですね。』
皐月「ちょっとは、僕を、周りを頼ってください。」
私の手を取りながら真剣に見つめる彼の瞳に吸い込まれそうな気持ちになりながら、私は微笑む。
さとり『気が向いたら、そうさせてもらうね。』
飲んだ分と彼のお酒の代金を払って店を出た。
夏の夜なのに、冷たい風が頬を撫でた気がした。
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