二羽の小鳥

雨世界

1 私は今日、旅に出ます。

 二羽の小鳥


 プロローグ


 幸せを探しに行こうよ。ずっと、遠くにさ。


 本編


 私は今日、旅に出ます。 


「一人旅ですか?」

 列車の中で、偶然、向かい同士の席になった女の人がそう言った。

「はい。そうです」

 私はにっこりと笑って、女の人にそう言った。


「実は私もそうなんです」にっこりと笑って女の人は言う。その女の人は同じ女性である同性の私から見ても、思わずつい目を止めて少しの間、時間が止まったかのように見とれてしまうような、すごく上品で、すごく綺麗な女の人だった。

 女の人は真っ白なワンピースを着ていた。耳に真珠のイヤリングをしていて、足元はバラの模様の入った白いミュールを履いている。それに今はとっているけれど、最初、席にやってきたときには、大きな白い帽子をかぶって、サングラスをその顔につけていた。

 綺麗な髪は短くて、頭の後ろでまとめている。

 顔はすごく小さくて、目はつり目。眉は太めで、なんとなく猫っぽい顔をした人だった。


 私はその女の人の眩しい笑顔を見て、ちょっとだけどきっとしてしまった。


 私はそんな自分の気持ちを女の人に隠すために、視線を動かして、列車の窓から外に広がる風景に目を向けた。

 すると、そこには永遠に広がる緑色の大地があった。

 その緑色の大地の上には真っ青な夏の青空が広がっている。それは、とても美しい風景だった。(私がずっと求めていた風景がそこにはあった)


「あの、すみません。少しだけ窓を開けてもいいですか?」

 女の人を見て私は言う。

「ええ。もちろん」

 にっこりと笑って女の人はそういった。


「ありがとうございます」

 私はそういって、列車の窓を少しだけ開けた。

 するとそこから、気持ちのいい夏の風が列車の中に吹き込んできた。


 少し強いけど、素敵な風。

 ……透明な、清らかな風だった。

「気持ちいい」

 思わず私は夏の風の中でそう言った。

「ええ。本当に」

 にっこりと笑って、女の人が言った。


 私はあ、と思った。声に出しているつもりはなかった。なので、私は、自分がつい少し変なことを言ってしまったと思って、顔を赤くして女の人に「すみません」と慌てて言った。

 すると女の人はくすくすと声を出さずに小さく笑った。


 私はなんだかすごく恥ずかしくなってしまって、思わず、自分の荷物の上に置いていた白い花の飾りのついた麦わら帽子を手にとって、自分の顔を女の人から隠してしまった。(私の顔はあまりの恥ずかしさで、さっきよりもずっと真っ赤になっていたと思う)


 ……恥ずかしい。麦わら帽子の後ろで、私は思った。

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