第3歩 神父様に相談

 ワイバーンに森の奥深くまで送ってもらい神父様を探すことにした。けれど、偵察用の魔法などはあまり得意ではなくたまに四方八方に衝撃波を打ってしまうことになるので魔法を使わず神父様がいつも付ける跡を探しながら森を歩くことにした。


「木にバツ印をつけてるはず。それさえ見つけたら神父様は近くにいるだろう...。」


 今日はクレアの専属執事としてではなく研究所の一員としてここに来ているので履いている靴が革靴ではなく動きやすいユニコーンの毛皮を使った研究員用の靴だからサクサク森の中を探せる。1人で探索に行くのもたまには良いな。そこら辺に研究材料があってそれを拾ってアイテムボックスに入れていくのが特に楽しい。


 そんな感じで森の奥へと進んでいるとガサガサと音がし始めた。段々と音が近付いてきた為、少し構えていると現れたのはカソックではなく白いTシャツと膝下ぐらいまでの長さのズボンを着た栗色の髪、細目の神父様が現れた。


「薬草取りですか、神父様。」


「ありゃ、シュテール君じゃないか。もしかしてあの納品依頼の件?それとも、またご相談があるのかな?」


 ズボンについた草を払いながら話す神父様は分かっていても相手が要件を伝えない限り深く踏み込んでこない。ずけずけと踏み込んでくるクレアとは違ってとても話しやすい。


「両方ですね。」


「あっ、もしかして今日の立場はただの研究員だね。なら教会に戻るついでと言っちゃ悪いが迷える子羊の悩みを聞こうかな。」


 普通なら社会的地位が高い者が低い物にどんな物事であっても相談などはしない。しかし、逆はある。社会的地位が低い者からの相談などを聞くことは貴族王族の仕事の1つでもある。


 そして、僕は今日王族専属執事という地位を持った人間ではなくただの一般研究員であるので神父様よりも地位が低いので相談に乗ってもらえるのだ。


「ありがとうございます。まず、ポーションの件について。普段は教会でポーションをお渡しますが今回は研究所の在庫が不足していた為、長期に渡ってお渡しさせて頂く予定になっております。」


「今回は急だったからね。それはこちらに非があると言っても過言ではないだろう。今回の手筈については承諾を出そう。」


「分かりました。この件は僕と一緒に来ている所長にもお話しておきます。」


 山道を2人横に並びながら降りていく。話している最中でも薬草や山菜を見つけると自身のアイテムボックスに2人で入れていく。これはこれで楽しい。


「それで、相談というのは?また来年の卒業パーティーのことかい?それともまた王位継承権派閥争いのことかな?」


「両方ですよ。」


「状況はどうなっているの?最悪の方向に向かっていたら少し考えなくてはいけないが。」


「これに関しては1人の国民としての意見ですになってしまいますが、元から最悪の状況だったものが段々良い方向に向かっているような気がします。」


「そして、王族や貴族の動向を間近で見ている執事としてのは?」


「......早く終わってほしいです。王宮の雰囲気が卒業パーティーに近づくにつれて悪くなっています。1年後とはいえ既に争いは始まっていますしそろそろ1年を切りますから。」


「なら、考えものだね。教会についてから君と君のところの所長と少し話した方が良さそうだ。教会に着くまでに君が持っている情報、話せるだけで良いから教えてもらえるかい?ここでは誰がどこで聞いているか分からないというのなら話は別だが。」


「立場が逆転しますよ。」


「君が今から話すことは独り言さ。僕は偶然君と同じ道で君と同じ目的地に向かっているだけの神父なのだからね。」


 悪戯な笑顔をこちらに向けて話す神父様はやはり策士。常に物事に対して関心を持ち続けるとこうなるのだろうか。

 僕は今の王宮と王都の派閥支持のことについて話せる範囲で話した。話した内容は王都では当たり前に知られていることのみだ。先程神父様が言っていたように誰がどこで聞いているか分からないから迂闊に貴族間で行われている策を話すことなんて出来ない。


 まず、ここで話したことは


『血筋派筆頭第1王子イリア・コンラート・グアハルド・アダメ様が城下町で不審な行動を取っている。』


『貴族の婚約破棄件数が増加している。理由は不明。』


『軍旗派筆頭第3王子ウィズ・コンラート・アルトゥル・ルメルシエ様があまり城から出てこない。』


『血筋派の第1騎士団と軍旗派の第2騎士団の衝突が日々増えている。』


『第1騎士団に所属している貴族が緊急時に助けてくれない。』


『現状、城下町に住む庶民の意識は軍旗派へと向いている。』


 こういった情報を教会に着くまで話続けた。その間神父様は何も言うことなくただ、僕のすぐ後ろを歩くのみだった。

 教会に着くとクレアが白い制服を泥で汚して村の子ども達と遊んでいた。しかもヴァイスと一緒に。


「シュ...シュテールくん?」


 クレアもずっと寝ずにここに来てポーションの配達ついでに休みに来てる。けれど制服の換えは2着しかない。汚れた制服を誰が洗うのかよく考えてほしいものだ。


「クレア!!今すぐに服を着替えて川で水を浴びて汚れを落としてこい!!」


 僕の叫びに驚いたクレアが作っていた泥団子を落とし僕を見るとすぐに行動に移し川へと2人で向かった。

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愛し子様は自由に冒険したい! 深雪 @FUYUKI2010

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