第2歩 南の森へ
「ヴァーーーイス!!!!」
「うるさ...。」
クレアとシュテールは教会のポーション不足を解決するという名目で南の森へ向かっていた。
クレアはワイバーンの上で叫び、その斜め前ではシュテールが地図を見ながらワイバーンへ指示を出していた。
「全く、酷いなぁ。前の君ならいい反応してくれてたのに。」
「シュヴァルツ、少し右だ。西に寄りすぎてる。」
「無視!?」
シュテールの黒いワイバーンとクレアの白いワイバーンの名前はシュヴァルツとヴァイス。2頭はワイバーンの中では最も珍しい白色と黒色の体を持つ。
このワイバーンは神の愛し子が産まれた際に生まれる1つ目の神からの寵愛である。
「ねぇ、ヴァイス。シュテールってば最近とっても冷たいんだよ。昔はそんなに冷たくなかったのにね。」
「キュイ!」
冗談を言うようにヴァイスに話しかけるクレアは少し悪戯に笑う。そして、何か違和感を覚えたようでシュテールと目を合わせる。
「西側、音からしてロックバードだ。東はただの鳥。」
「ロックバードを教会の孤児院の子どもたちに持っていこう!」
クレアはそう言ってヴァイスと嬉しそうにロックバードの群れへと向かい、シュテールはその後ろを追うようにして後ろにつく。
〇●〇
「ヴァッサー・コンファイン」
クレアは水でできた球体の中にロックバードを閉じ込める。
「エアトリンケン」
すると、その球体の中の水がだんだん増えて行きやがて球体内のロックバードは全滅した。
球体に入りきらなかったロックバードがクレアに向かってストーンエッジを打とうとする。
「ヴァァァァ!!!」
シュヴァルツの唸り声を聞き、身の危険を覚え後ろに体を引くロックバードだが、それは既に遅かった。
「アランス」
赤い結晶でできた槍がロックバードを貫いた。ロックバードの腹に風穴が開く。そのことに驚いたクレアが落下中のロックバードの下に水でてきた薄い膜を貼り回収する。
槍を放ったのはシュテーだった。
「なっ、シュテール!ロックバードのお腹を貫いたら肉が無くなっちゃうだろ。」
「国の王子がロックバードに傷をつけられたとなれば舐められるのはそっちだろう。」
「ヴァイスが準備してた。」
2人は言い合いをしながら教会に向かう。クレアとシュテールが倒したロックバードたちはクレアの水魔法でできた球体に入れられて教会まで持っていかれるのだった。
〇●〇
「こんにちはー、魔法学研究所のクレアで」
「クレア王子だー!」「ほんとだ〜」「王子〜!」
クレアが教会の扉を叩いて挨拶をすると教会の裏から子どもたちがぞろぞろと出てきた。
「皆、シスターはどこ?」
「シスターは今村に行ってるよ」
「そっか、なら帰ってくるのに時間がかかるだろうから皆で遊ぼっか!」
クレアが遊びに誘うと子ども達は大はしゃぎで教会の裏庭となっている森の入口までクレアとクレアのワイバーン、ヴァイスを連れて行く。
「クレア、待って...ってもう居ない。シスターがいなかったら神父の所に行ってポーションの在庫管理を聞けばいいのに。まあ仕方ないか、3日寝てないみたいだから。ね、シュヴァルツ。」
シュテールがシュヴァルツに話しかけるとシュヴァルツはキュイキュイとシュテールの話に同意するように体を擦り寄せる。シュテールはシュヴァルツをめいいっぱい撫で回してここまで連れてきてもらったお礼を言う。
「僕、少し行ってくるからここで大人しくしててね。」
「グィ...。」
寂しそうにするシュヴァルツを好物のリンゴと一緒に獣舎で待っててもらうことにして神父を探すシュテール。ここであることを思い出す。
「そうだ、ここの神父様いつも森の奥深くに薬草取りに行ってた...。」
獣舎へと踵を返しシュヴァルツに乗って森の奥深くへと向かうシュテール。
ちなみにクレアは子ども達と森の入口近くで花冠を作ったり果実を採ったりしながら子ども達の話を聞いていたのだった。
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