第1歩 予算会議と教会とポーション
「研究費の削減」
「ダメ。はい次。」
「研究員の削減」
「既に人手不足。ダメ。はい次。」
「研究所の維持費削減」
「それが一番ダメ。建物が壊れて資料消えたらどうするんだよ。はい次。」
クレアは執務室で執事のシュテールと財務部からの経費削減案についての処理を行っていた。
シュテールがクレアの机の前に立ち削減案を読み上げクレアは他の報告書を読み書き込んだりしながらそれに応答していく。
「研究素材に掛ける費用削減。」
「前回の経費削減で行った為今回はダメ。はい次。」
「以上かな。」
「なら、その書類を全て燃やして財務部に研究所の意義をもう一度考え直すようにという旨の手紙を出して。それと、グレン、サラ、ベティアを呼んで。」
指示を受けると一礼して部屋を出ていくシュテール。クレアは自分で紅茶を淹れてソファに腰掛けある依頼書を手にしながら紅茶を口に含む。
するとコンコンとノック音が聞こえどうぞ。と返事をすると扉が開き3人の研究員が入ってくる。
「3人ともソファに座って。急なんだが、お仕事だ。」
左から赤毛の目付きが鋭いグレン、薄い水色の髪にメガネをしたサラ、羊のような角とやる気のない目が特徴のべティアがソファに座る。
そして3人はクレアから依頼書を渡される。
「教会のポーション不足だ。今手が空いてる研究員を3箇所に分けて配属して。担当はそれぞれ分かってると思うから任せた。僕は南の方へ行く。以上解散。」
「待った坊ちゃん。」
グレンがソファから立とうとしたクレアを止める。クレアももう一度座り直してグレンの話を聞く。
「どうしたんだい、グレン。」
「共有型のマジックバッグを使うべきだ。ポーション保管庫からの報告でポーションが減ってきている。特に中級と上級だ。この依頼書を見る限り3ヶ月に1回の納品依頼ではなくただ単に中級上級の在庫不足。」
「なので、私たち3人を現地に配属するのではなく、1番早く効率的にポーション原液が作れる私たちがここに残りポーションを作り共有型にどんどん入れていく。」
「もちろんクレ坊達のにも入れていく。...だからクレ坊は現地待機。」
もちろん、向こうで寝ててもいいから。とベティアが最後に追加する。このようにグレン達が次々にアイデアを出していく。クレアはそんな彼らを見てとても嬉しそうにしてその案を承諾し、ポーション保管庫へ向かう。
▽▽▽
「クレア。」
ポーション保管庫へ向かうために渡り廊下を歩いていたら後ろから燕尾服から研究所の制服と白衣に着替えたシュテールが後ろから走ってきた。
「あぁ、シュテール。」
「僕が保管庫に行って準備をしてくるから君は執務室で待っていてくれ。3日寝ずにここまで動いてきたのだから体が限界を迎えてもおかしくない。」
「いや、大丈夫だ。と言いたいところだけど君にお願いするよ。執務室で他の報告書でも」
「執務室で仕事はしないでくれ。それから最近シャワーだけだったから大浴場にも行ってきなよ。こっちの準備が終われば鈴を鳴らすから。」
ありがとう。礼を言って来た道を戻り大浴場へ向かう途中である部屋に向かう。
その部屋は僕やシュテール、グレンなどの研究所の上層部しか入れないように鍵がかかっている。
このように上層部しか入れないような部屋は研究所にはいくつもある。そのためこういった部屋には白衣のポケットに入れている鍵が必要となる。
「無くさないようにはしてるんだけど...あった。」
鍵を開けて室内に入りまた鍵をかける。この部屋の中には移動用の魔法陣が床や壁に書き込まれておりそれに魔力を流し込むだけで特定の場所に移動可能な魔法陣が組み込まれている。
「大浴場は右側壁の青だったよな。」
入って右側の壁に書き込まれている青色の魔法陣の隣には大浴場と書かれたプレートが貼ってあった。そこに手をつき魔力を流す。
これだけで移動出来るけれど限られた人にのみ使用可能にしているのはこれが悪用可能だからだ。僕も詳しく聞いてないから分かんないけどね。
〇●〇
「すっきりした〜!」
大浴場から出ると体の調子が良くなった気がする。というより良くなった。実はこの大浴場の湯船には腰痛や頭痛が軽減される効果が出るように勝手に開発して世間には出てない。
シュテールには開発初日にバレた。
執務室に向かう途中で腰にぶら下げている黒い鈴がチリン、チリン、と鳴り始めた。シュテールからの合図を受け取り研究所の広場へと踵を返す。
▽▽▽
「クレア、出発するよ。ゴーグルとナイフ、腰に着けててね。今回の遠征は僕と君の2人だけだ。だから少し多めに時間を掛けて南の森周辺の教会に行くから。」
「それ本当!?なら向こうで泥のように眠っても良いよね!?だって本当なら1週間かかる所を2日ぐらいで行くんだから!」
そう言いながらワイバーンの前で飛び跳ねるクレアを宥めて南の森へ向かう。
いつになったら僕の主人は落ち着くんだろうか。
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