ヴェンデット スレイヤー

@kakur437

第1話 交差する魂

人々が平和に過ごしていたとある街でそれは突然起きた。


墓場から死者が蘇り、人々を襲い始めたのだ。

死者は人々から魂を奪っていった。

魂を奪われた人々は異形の化物「ヴェンデッド」となっていった…。

ヴェンデッドは次々に人間を襲い、ヴェンデッドを作り出し、次第にその数は増えていった。ヴェンデッドは人だけではなく、この世界に存在する生き物も異形の化物にしていった。街中の生きとし生けるものから魂を奪っていったヴェンデッドは急激にその勢力を拡大していったのだ…。

そして、確実に街を飲み込んでいった。


ある一人の青年も街を飲み込む怪物に襲われ、ヴェンデッドになりかけていた。ヴェンデッドは一緒にいた彼の愛する人を奪い、彼の魂をも奪おうとしていた。薄れ行く意識の中で彼はこの理不尽な世界を憎んだ。愛する人を奪った怪物たちを憎んだ。そして、彼女を守る力が無かった自分自身を憎んだ。

飲み込まれそうになった彼は、憎しみにより自らの意識でヴェンデッドでありながら、ヴェンデッドを狩る者『リヴェンデット・スレイヤー』となった。

力に目覚めた彼はヴェンデッドに復讐を誓う。その首には、自分が変わる瞬間にすらも手放さなかった彼女との思い出のペンダントを掛けていた。


リヴェンデット・スレイヤーは夜の街を駆けた。

目的はただ一つ、ヴェンデッドを狩りつくすこと。彼の復讐は全てのヴェンデッドを消すまで終わらないのだ。

自らの復讐心に身を任せ、拳を振るっていると不可思議なことが起きた。今まで別個体であったヴェンデッドが融合していくではないか。そしてその個体は『ヴェンデッド・キマイラ』となった。

ヴェンデッドたちの融合体は常人なら目を背けたくなるような、醜い姿だった。僅かに残る融合前の姿が辛うじて生き物であったことを教えていた。醜悪なその姿にリヴェンデット・スレイヤーは息を呑んだ。

しかし、彼には怯んでいる暇などない。ヴェンデッド・キマイラを倒した時、それは現れた。最強の融合体『ヴェンデッド・バスタード』である。背後には先ほどの倒したヴェンデッド・キマイラが数体待ち構えている。

ヴェンデッド・バスタードは、仲間の体だけではなく、今まで奪われていた魂をも融合していた。その力はリヴェンデット・スレイヤーの比ではなかった。苦戦の末、リヴェンデット・スレイヤーは捕まってしまう。

バスタードはリヴェンデット・スレイヤーを取り込み、完璧な存在になろうとしたのだ。しかし彼は取り込まれなかった。

彼の復讐心にバスタードに取り込まれていた魂達が耐えきれなかったのだ。

彼は逆にバスタードの全てを奪った。

バスタードの力を奪ったリヴェンデット・スレイヤーは『エグゼクター』へと進化した。

全てが終わった、とそう思った時だった。

肉体を失った魂たちが新なヴェンデッドになろうとしていた。

その中には彼が愛した人の魂もあったのだ。胸には彼と同じペンダント。

肉体を求め、襲い来るそれらと彼は戦った。

愛する人やそうでない者たちともこの悪夢を終わらせるために。

彼の戦いは終わった。

復讐の果てに得られるモノは何もなく、夜明の光と共に彼の体も終ろうとしていた。だが、その手に残った、たった一つの思い出を彼は見つめていた。

体は崩れ、心も燃え尽きかけた彼に幸せな思い出が語りかける。

「このまま終わっていいのか」と。

彼は立ち上がる、彼自身の戦いを始める為に。


彼の新な名前は「アドヴェンデット・セイヴァー」。愛する人と人間であることを捨てた男。彼は今でも戦い続ける。亡き愛する人へ誓う、救済の心を胸に抱き、人知れず街を守り続けるのであった。


FIN

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ヴェンデット スレイヤー @kakur437

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ