奇怪な果実
文屋旅人
奇怪な果実
首を吊ろうと自殺の名所に来た。
すると、きれいな女性の死体がぶらりとぶら下がっていた。
何故こんなにも美人なのに自殺をする必要があるのだろうか、そう思った私は自殺したいという気持ちが薄れて、何となくこの女性の死体を見てみたいと思った。
もう一度来た道を戻り、食料を買いためて、ぼうとその死体の前に立ってみた。
一週間たった。
死体は腐らない。
この死体はおそらく人間であろうと思われるが、それでも全く腐る気配はしない。触ってみる勇気がない私は、じっと死体を見続ける。
あ、そろそろ食料を買いためないと。
一か月たった。
死体を見続けてもう私はすっかり死ぬ気はなくなった。
寧ろ、この死体に魅せられた。否、奇妙な共感と不気味さを覚えていた。
腐らぬ死体とは何なのか、これはなんの悪戯なのか。
「む」
そんなことを思っていると、背後から人が出てきた。
「ひゃっ!?」
私は驚いて振り向く。
「ふむ」
どことなく、素っ頓狂なおじさんだった。
「おー、あんた自殺を考えていたのか?」
はい、と私はうなずいた。
すると、おじさんはけらけらと笑った。
「なら、今回も俺のたくらみは成功ということだ!」
私は、たくらみとは何ですかと聞いてみた。
「いや、この近辺は自殺が多いからな……たまたま俺が見つけたきれいな死体を加工して人形にして、吊るしてみたのよ。そうしたら誰もかれもが自殺をやめていく」
……死体を加工……? この人は何を言っているのか。
それは、人としてどうかと思います。そういうと、おじさんはもひとつ笑う。
「いやいや、俺はちゃんと許可をもらったよ。なぁ、サヨリ」
サヨリ? 誰だろう、そう思っていると……
『えええ、自殺なんてするもんじゃないわ。すっごい後悔してるのよ私』
吊るされた、きれいな死体から声がする。
私はそのまま気を失った。
了
奇怪な果実 文屋旅人 @Tabito-Funnya
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