第52話 時間を止めるより、ビームが撃ちたい。


 突然ですが、カクヨムで一目置いている姫乃きの 只紫ただしさんのエッセイを読んで思う所があったので、この章のテーマである「誰かの家にお邪魔しに行く」の先鋒になって頂きます。(問答無用)


 姫乃さんは、前々回(第50話 時間を止められたら何をする?)を読んで「ビームが撃ちたい」と言います。詳しい内容は姫乃さんのエッセイを読んで貰ったらいいのですが「誰かに褒められたい」と言う観点から時間静止の能力に切り込む視点に唸りました。

 

 そして、本エッセイからあの文章が生まれたことが嬉しかったのです。


 応援コメントにも大変面白い意見が並び、それに対する返信に熱が入ってしまったように、自分の文章が誰かの言葉を導いたという事実は人を高揚させます。(たとえそれが、おっぱいであっても)


 ここで気付いたのは「書くことの喜びは、影響力にある」ということでしょうか。


 影響力って漠然としていますが、個人的に影響力は二つに大別できます。「人」が持つ影響力と、「もの」が持つ影響力です。姫乃さんのエッセイを読みながら、僕は「もの」が持つ影響力をより重視すると分かったのです。


「人」が持つ影響力とは、例えば、僕が「焼き鳥は塩に限る」と発言した際、それまでは「塩なんてどうかしている」と言っていた人が「その通りです!」と華麗な手のひら返しを繰り出したり、「やっぱり焼き鳥は塩っしょ!」と理由もわからず迎合したりするような力を持つことです。

 これらはいわゆるその人(キャラ)に付随する影響力です。あの人だから信じる、あの人がやっているならそうしよう、という特定の人に向いた方向性があります。社長が「今日はイタリアンの気分だな」と言うのと、平社員が言うのとは意味合いが全く異なってくるのと同様です。ある意味、内容はどうでも良い。「だれが」が重要なのです。


 対して、「もの」が持つ影響力は、例えば「焼き鳥は塩に限る。なぜなら我々は海で生まれ、体内に海を残しているからだ」と主張したとします。この時、この発言を見た人のなかで何かがざわざわと波風を立てる。一言「そうだね」で済む話なのに、なぜかどうしようもなく心は高潮にもまれ、気付けば文字を叩いている。


「何を言っている。日本人は醤油で出来ているんだからわさび醤油が一番に決まっているだろう」

「それを言うならタレも大部分は醤油だ。そもそも、塩にこだわるのはこれだけ時間を経ても進化していない原始的な味覚を持っているからだ」

「そういえば、塩焼きそばもうまいよなぁ」

「人間の中にある海でクジラと一緒に泳ぐ短編を書きました」

「海鳥のアホウドリって、人間に警戒心がないだけであんな名前になってしまって可哀そうだよなぁ。でも、美味しかったのかなぁ」


 この例(僕の希望的観測)のように、ある発言(もの)が、誰かの思考に影響を与えること。これが「もの」に属する影響力です。誰が発言したかはどうでもいいのです。発信者は僕じゃなくても良いし、だれが言ったかは関係ない。そのが人をざわざわさせる。そのことについて考え込ませる。そして、何かを生み出す。


 カクヨムでのコメントや、エッセイを元にしたエッセイ、物語をオマージュした作品などを作り出すきっかけになったものは、まさにこの「もの」に属する影響力を持っているのですね。


 もちろん、僕が言ったから「正しい」とか、僕が薦めたものが手放しで受け入れられるとか、それはそれで楽しいと思います。

 しかし、僕は、僕と言う人間そのものを崇められるよりも、僕の発言が独り歩きしたほうが嬉しいと思っています。


 これは好みの問題なので、どちらが良いとかは決められませんし、そもそもこの二つは完全には切り離せないので、比重をどっちに置くかという程度の話ですね。(偉大な発見をした学者だから発言に強制力や権威をもつこともありますから)


 ただ、カクヨムにいるということは、この「もの」に属する影響力をより好んでいるのではないでしょうか? みんな僕といっしょ。だって、そうじゃないと作品なんて書かないでしょ?

 

 権威や地位を得る手段として作品を書いている人は稀だと思います。それならむしろカクヨムよりも、社長を目指したり、有名人になる努力をした方が手っ取り早いでしょう。(それに僕が作品を書く度、権威や地位と言ったものから離れている気がします。気のせいでしょうか)

 そうしないのは、属人的な影響よりも、自分が残した作品が誰かに影響を与える方が好きだからです。そうして、権威とか属性から切り離された作品(もの)が誰かがの形を変えることを願っているのです。


 だからね、コメントなんか膨らんだ妄想を書くだけで良いんですよ。称賛も応援もちろん嬉しいですが、「影響といえば、鬼滅の影響で全集中の呼吸を会得しました。おかげで背中合わせじゃなくとも敵を殲滅できます」(第2話の伏線回収)とか言って貰えればそれ以上の言葉は必要ありません。


 時間を止めるより、ビームが撃ちたい。


 この言葉は、「もの」の影響の体現です。

 こんな嬉しいことはありません。

 

 僕の書いたことは無駄にはならなかった。これからも読者のみなさんに(良い)影響を与えていきたいと思っています。変態になることは良いことです。





 一見、悪徳に見えて、ただ小説を勧めているだけの男 / 姫乃 只紫

 私流れ星なんて一度も見たことない! 『ビームが撃てたらいいのに』

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054896176243/episodes/1177354054910307774

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