Hentai、お邪魔する
第51話 「もふもふ」がない世界なんて考えられない
前回、時を止めてみた所「柔らかさを失ったおっぱいは、もはやおっぱいではない」という結論に至りました。そして、コメント欄で夏緒さんより「硬い下着をつけてるときは子どもに悲しそうな顔をされる」という貴重な情報(とてもよく分かります)を頂いて閃きました。
「柔らかさ」がない世界では人は生きていけないのでは?
考えてみて下さい。全てのものが柔らかさを失った世界。そこでは日々、乾いた硬質な音が響きます。
○
「たけし、あんたまた宿題サボったね!」
「ごめんよ、母ちゃん!!」
ジャイアンのお尻が叩かれるたび「ガキッガキッ」とハンマーで花崗岩を砕くような音が夜の家庭の団欒に流れます。
紅の豚でフィオがポルコのほっぺにキスするシーンでは「キキィ」と鋼板をドライバーでひっかくような甲高い音が響きます。
数年間、軍役をこなしていたお父さんの帰還に大喜びで飛びつくサモエド。クーンクーンと鳴きながらしっぽをぶんぶん振ってお父さんの胸の中で歓びを表現しています。お父さんが彼をなでるたび、彼が身をくねらせるたび「ギャリギャリ」と鉄製のブラシがこすれる音が耳をつんざいていました……。
○
嫌でしょう。こんな世界。
人をダメにするクッションは文字通り、飛び込んだら飛び込んだ人が粉々に砕ける(ダメにする)ものになるでしょうし(即刻、発売禁止)、グルメリポーターはあの
なにより「モフる」ことが出来なくなる。これは僕にとっては致命的。うっかり曜日を間違えて楽しみにしていたドラマを見逃すような絶望に陥ったときも、犬に抱き着いて「うわーん、見逃したー。くそー、お前はなんでこんなモフモフなんだよー!」と逆ギレしていたらいつの間にかショックは緩和されます。
大失恋してくたびれていても、ガラステーブルの上でスフィンクス姿でうつらうつらする
(おっぱいは言うに及ばず)このような癒し効果がなくなったこの世界はあまりにも厳しい。今ですら歯が立たないほどカッチカチなのに、これ以上柔らかさをとられたらたまったものではありません。
その意味でも、僕は時が止まった世界では生きていけませんね。
確かに、時が止まった世界と言うのは魅力的です。老いることもない、これ以上悪くなることもない。全てが自由で、焦る必要もどこにも見当たりません。
それでも、僕はもふもふが溢れているこの世界が良いのです。否応なしに時間に流されて、今の幸せを留めておくことが出来ない世界でも受け入れます。いつか大切な何かを失って、それすらも忘れてしまおうとも、僕は「モフる」ことが出来るこの世界に縋ります。
「柔らかさ」を持った世界。おっぱいがおっぱいであるこの世界。それが、僕が唯一生きていける場所なのでしょう。
○
ちなみに、もふもふとは「2000年代後半頃から広まったとみられるインターネットスラング」(デジタル大辞泉)です。
つまり、僕はこんなにカッコいいことを言っているのに、実際にモフるという概念がない世界に生きていたわけですね。……もう昔のことなので、どのように過ごしていたか忘れました。矛盾とか批評なんか知りません。覚えてねーよ。
やっぱり、時間が忘れさせてくれるこの世界が、僕は好きです。
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