後編🍀夏休みと幸せの黄色いハンカチ
あの夏の日から25年の月日が経ったけど黄色いハンカチは見つけることが出来ないままだった。
だから母親は帰っては来てくれてはいない。
僕は大学を卒業してからサラリーマンとして働いていたけど父親が病気でしばらく閉めていたこの映画館を継ぐことを決めて故郷に舞い戻ってきた。
そして1年間だけ頑張ってみようと思っている。
切符売り場の保江おばさんも今は老人ホームで元気にしているらしい。
もしかしたら父さんのことを好きなのかもと思ったこともあったけど、2人は今でも仲の良い友人らしい。
残り少ない人生だからお互いに素直になればいいのにと思うけど、つかず離れずの恋もいいんだと思う、それは僕が大人になった証拠なんだとくすぐったい気持ちさえしている。
寂れたこの町だけどたくさんの人が住んでいる、テレビのチャンネルも都会より少ないし娯楽は少ない。農作業の合間に古い映画館で懐かしい映画を観て楽しんで欲しいものだと思う。
明日のリニューアルオープン、記念すべき映画はもちろん「幸せの黄色いハンカチ」だよな
父さんに教わった通りに映写機を回す時が来た。じいちゃんと父さんと僕の夢はまだ続いていくんだ。
とりあえずついてきてくれた妻の麻美と息子の賢太郎には感謝しかない。
転校させてしまった事は申し訳ないし
新しい場所で友達を作るのが難しいと言うことは経験した僕自身がよく分かっているからね。
都会生まれの麻美は最初は反対していたけど今では友達も出来て毎日のように家には子ども連れのお客さんがたくさん来てくれている。
僕が育った場所を気に入ってくれてありがとう。
明日はこの商店街の大きなイベントとしてオープンには出店や懐かしのチンドン屋も用意してくれるそうだ、新しい元号に変わったのに昭和を感じさせるのも客集めには最適かもしれないな。
父さんは車椅子で来てくれる事になってるけどいつかバリアフリーの劇場に出来ることを夢見て頑張るさ。
母さん
今どこにいるか知らないけど
僕は今幸せです。
幸せの黄色いハンカチは見つからないままだけど、心の中ではたくさんの黄色いハンカチが風にはためいているよ。
(了)
夏休みと幸せの黄色いハンカチ あいる @chiaki_1116
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