あたしはそれを死刑宣告と呼んだ(第3回放送)
(第3回放送 https://kakuyomu.jp/works/1177354054893620045/episodes/1177354054893804521)
「
夕方、部活から帰ってきたら、玄関先で姉が死んでました。
「あや
「だって由樹がにゅわあああぁ……」
あたしは死んでる癖に幸せそうなあや姉の、肩甲骨くらいまである無駄に長いツインテールを束ねて引っ張る。
そして、端っこに雑に片づけて、靴を履いたまま蹴っ飛ばして転がして我が家にあがった。
……どうやら姉の推し、
--※--
「はー……読むか」
あたしは
多分あや姉の推しということだけで数万ポイントは下げてる。
……いや、別に由樹自体は嫌いじゃないんだけどね? ああいうキャラはクラスに一人くらいいてくれてもいいし、何ならいてくれた方が空気が和やかになるし。
でも、男として見ると全然良さが分かんない。ただそれだけのこと。
『えっと今は収録中だから、部外者は入らないでね』
『いや俺、
おー、会長にいじられとるいじられとる。
にしても、工藤お姉さまって言い方自体が気持ち悪いんですが。受け付けぬ。
『でもゲストって本編の登場人物よね?
『由樹ですよ。
『あぁ、後輩くんのルームメイトBね』
『Bってなんですか……』※キャラ名表記が『B』になる
『……ってえぇぇ?! 今回これで進めるの?』
モブキャラが出るなんて新鮮だなー。
ちなみにちゃんと後で由樹に戻りました。
『それじゃあ、お便り読むね。ペンネーム『未来の世界の美少女(自称)陰陽師』様から『読ませて頂きましたー♪』』
『美少女キター! しかも自称ってとこもポイント高い!』
『おぉ、食いつくね』
『食いつきますよ。しゃぶりつくしますよ』
は? キモ。
『……ちょっと生理的に無理。お手洗い行ってきていい』
『そんなに?!』
会長分かってる。うんうん。
『『質問は、由樹くん! できるなら芙蓉くんと蓮司くんにも! あたし(ドS風味でツンデレ風味)は好みですか? それとも
由樹のファン、あや姉くらいだと思ってた。世界は広い。
お便りの内容は、ドSツンデレorアホの子orセクシーならどれが好きか……という質問。
……あたしは全部かすりもしない。いや、身体つきだけならちょっとセクシー入るか。胸それなりに大きいしね。どやぁ。
『俺の答えは、あたしこと、めぐるちゃん1択で』
『おぉっ、冴島くんのキャラだと、全員とかだと思っていたけど』
『俺は昨今の優柔不断な主人公とは違うのさ。メインヒロインを全力で落とす!』
えっ。意外。ちょっと見直した。
……もしかしたら、外面はあんな感じでおちゃらけているんだけど……いざ人を好きになると真剣になるタイプか?
あっ。これ、ギャップで堕ちる系のやつだ。何か悔しい。
……ちなみに、何で由樹がメインヒロインと言っているのか、そして『めぐるちゃん』と言って平然とコンプラ違反をかましているのかというと、あたしと同じで小説の登場人物からの投稿だから。
※『在野陰陽師(?)は負けられない! 2020年編』(https://kakuyomu.jp/works/1177354054893347287)
ざっくりとしたあらすじを言うと……200年先の未来にいる陰陽師女子高生めぐるが、2020年にタイムスリップして
何か色々ぶっ飛んでてよく分かんないあらすじだけど、実際そうだから困る。
……話を戻そう。
いくら小説のキャラだからといってコンプラ違反していいわけじゃないんだけどね??? ……いや、あたしは、その……認知されてて死ぬほど嬉しかったけど。いや、実際死んだけど。さ。うん……。
『芙蓉と蓮司の話をしましょうか』
『そういえば的場くんの好みって聞いたことないわね』
来た。身構える。
あたしは、蓮司くんの好みのタイプだろうか。
あたしに蓮司くんは振り向いてくれるだろうか。
……審判の
あたしは意を決して、スマホを下にスライドした。
『女の子に囲まれているわりに、誰とも付き合ってないみたいね』
……まだだ。まだ、会長のセリフだった。
心臓に悪いよホント。
と、なれば。おそらく……その次………………!!!
深呼吸。吸って、吐いて、吸って、吐いて、吐いて、吐いて……すごく吸って。
無意識に吹奏楽のウォーミングアップでやるやつになってたけど、気にしない。
「よし。勝つ準備は出来た。行くぞ、あたし」
ゆっくり下にスライドする。
会長のセリフのすぐ下に、答えはあるようだった。
文字の半分が見える。けれども、まだ、認識できない。
いや、認識したくない。怖い。
……でも、真実を知るには。勝利をつかむには。知るしか、ないんだ……っ!!
『蓮司は面倒見がいいから、取り巻きのグイグイ来る女子よりも、放っておけないタイプに弱いのさ』
……。
…………。
……………………。
………………………………………………………………。
『放っておけないタイプ』
どう考えても。どう解釈しても。どう屁理屈をこねても。
蓮司くんのタイプは、あたしではなかった。
山かおる 享年14歳 ここに眠る
~END~
今まで『かおるんるんの限界リスナーになりた~い』をご愛顧いただきありがとうございました。
山かおるの来世にご期待ください。
「あたしは死にませええええええええええええええええええええええええええん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
……いくらあたしが。
いくらあたしが放っておけないタイプとは程遠くても。
いくらあたしが蓮司くんのタイプとは正反対の性格をしていても。
推すだけなら。
推すだけなら!!
「推すだけなら!!!!! 自由だろうが!!!!!!!!!!!!!」
これよりあたしは『推すだけなら自由党』を結成する!!!
党首!!! かおるんるん!!!!!!
党員!!! …………
『推すだけなら自由党』、『推すだけなら自由党』に、あなた様の清き一票を!!!!!!!!!!!!!!!
--※--
「ふぇっくしょっ」
……誰か、わたしの噂でもしたのかな。
あ、わたし? わたしは
ちなみに、わたしの推しである芙蓉くんの好みは分からなかった。というか、会長さんが芙蓉くんが好きらしい。
まあ、ヒロインは主人公とくっつく定めだしね。仕方ない。
わたしは、その、芙蓉くんと会長さんの関係込みで尊さを感じようかな。
好きな人の好きな人を認められないファンは、ファン失格だもんね。
--※--
ラジオ投稿の翌日。わたしがいつものように学校に行く途中。
「……なんか、やばいのいる……」
犬というよりかは、狼。体色は黒く、なんか立派なたてがみを携えていて……目が赤く不気味に光っている。
電柱の陰に隠れて、獲物を狙っているよう。
別に犬が平気なわたしでも分かる。
こいつは、ただの犬じゃない。やばい。
気づかれないうちに、遠回りしていこう。遅刻もやむなし。
わたしは音を立てないよう、そっと、そっと後ずさりしようとした。
……その瞬間だった。
あの狼が飛び出してきた。
赤い目がわたしを捉える。鋭く光る。
そして……足が速い!?
「っ、っ……!!」
後ろを振り向いて逃げる! 全速力!!
恐怖がわたしの足の回転を速くする。それでも後ろから聞こえる足音はすぐに近くなって……気配を、すぐ近くに感じた!
怖い、怖い怖い怖い怖い!!!!
「グォォオオォオォオ!!」
「きゃああああああああああああっ!?」
わたし、死ぬのか。
目をぎゅっと閉じて、痛みに備える。
バサアッ――!
大きな羽音がわたしの身体を掠める。
そして。
後ろで、何かが斬れる音がした。
狼の気配がどんどん遠ざかっていく。
ある程度逃げて、距離を取って……わたしは肩で息をしながら、後ろを振り向いた。
狼が、胴体を真っ二つにされて倒れていたんだ。
「…………助かっ、た……?」
安心して、わたしはその場にへたり込んでしまい……しばらく、動けなかった。
案の定学校には遅刻した。
このことを遅刻の言い訳には到底できなかった。
※二次創作の許可をさせていただいた方の投稿はめちゃくちゃ拾います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます