かおるんるん、死ぬ(第2回放送)
衝撃、走る。
雷撃、あたしに直撃する。
「ぐは……尊い……ガクッ」
あたし、死ぬ(一回目)。
『紫苑の主人公になりた~い』にあたしがお便りを投稿した翌日、いきなり更新があった。
そして、ゲストに……あたしの推しキャラ、
つまり、あたし、
そっこーで蓮司くんが番組収録に臨んでくれたってわけで。
死ぬよね。普通。
あたしの死後数分が経った。
床に転がったあたしの死体がふと動き出し、床に投げ出してしまったスマホを何とか掴む。
……あたしはドキドキバクバクする心臓を抑えながら、第2回のリンクをタップした。
(第2回放送 https://kakuyomu.jp/works/1177354054893620045/episodes/1177354054893637473)
『人気パーソナリティ
『この番組は私がゲストと共に、リスナーからのコメントをカクヨムの電波に乗せて、やりたい放題ぶちまける企画だよ。そしてこっちの人気が本編を上回ったら、私が真の主人公として名乗りをあげるのだ』
いつも通りの会長の口上。可愛い。そして、いつも通りなのになんか安心する。
……大丈夫、まだあたしのライフは満タンだ。そう簡単に死にやしないだろう。
『今回のゲストは野性的なイケメン、細マッチョの的場蓮司!』
『どーも、蓮司です』
「ぶひょあぁあぁあぁっ!?」
蓮司くんの放った
あたしは思い切り仰向けになって倒れた。
あたし、死ぬ(二回目)。
あたしの死後数分が経った。
仰向けに倒れていたあたしの死体がふと動き出し、床に投げ出してしまったスマホを何とか掴む。
……あたしは震える指でスマホの画面を下にスクロールした。
『本編ではあまり目立たないけど、ここで活躍して主役の座を狙っていきますよ』
……蓮司くん……あたしの中ではもう蓮司くんが主役です……!
『えぇ、的場くんってそんなキャラだったの?』
『そりゃ、男なら物語の主人公を目指さなきゃ』
『私だって負けないから」
『もちろん、主役も
はあ。尊い。マジで尊い。推しが会長さんと会話してる尊い。
……で、でも、さすがに二回死んでるから、もうそう簡単には死なない。
あたしの指はもう無敵だ。どんな攻撃も寄せ付けない!
『本日のお便りは
「ふぎゅひゅみゃっひゃあっ!?!?!?!?」
あたし、死ぬ(三回忌法要)。
いや、だってさ……あたし、会長に認知されてたんだよ!?
しかもこの瞬間を持って蓮司くんにも認知されたんだよ!?!?
死ぬしかないじゃない!! もう死ぬしかないじゃない!!!!
あたし、死ぬしかないじゃない!!!!!!!!!!!
(大事なことなので3回叫びました)
あたしの死後以下略。
『待て待てまて!いきなりのコンプライアンス違反!』
『かおるんるんはポニーテールのトランペット奏者で』
『もう止めろ。誰か会長を止めてくれぇー!!』
「……………………しあわせ」
言わずもがなである。
あたし、安らかに息絶える(四回目)。
『紫苑さん、蓮司くん、初めまして!朝、登校する前にヒマすぎてばーっとカクヨムのチャンネル回したら面白そうなのをやってたので思い切って投稿してみました!』
あ……会長があたしのお便り声に出して読んでくれてる……ああ……。
あたし、死ぬ(五回目)。
『おぉっ、いい感じのノリっすね』
蓮司くんが! いい感じのノリって!! 言ってくれた!!!
「いやっはあああああああああ!!!!!!」
あたし、嬉々として死ぬ(六回目)。
『私は朝、いつもこんな感じで登校する前のビミョーな時間をつぶしているのですが、お二人はどんな時間のつぶしかたをされているのでしょうか?教えてください』
『ノリのわりには、意外と真面目な質問が来ましたね』
蓮司くんに! 真面目って言われた!! あたし真面目!!!!!!!!!
真面目に死ぬ(七回忌)。
『『最後に……クールでカッコいい頼れる
『今明らかにおかしかった。おかしいですよ』
会長っ! 会長っっ!! あああああああああああああ!!!!!!!
もはや会長でも死ぬ(八回目)。
『登校する前の暇つぶしね〜。東高は全寮制だから、朝の支度ができたら教室に行く子がほとんどよね』
「俺はコーヒー飲みながら、芙蓉と
あたしの質問で会話してくれてる……あ、ああ……あ……尊い……尊い……。
じわじわ死ぬ(九回目~十八回目)。
『あららエンディングの時間だわ。お送りするのは『かおるんるん』様のリクエストで『With Heart and Voice -僕らの音は、心と共に-』』
死ぬ(十九回目)。
『『憧れの吹奏楽部は跡形もなく、ただあるのは変人達だけだった。』という想いを込めて、どうぞ』
蓮司くん……ああ……蓮司くん……すき……(死ぬ)。
『クールなイケメンくんが最後にカッコよく決めようとしたのに、このキャッチコピーでは台無しね』
ホントだよ。あたしが出てる小説、なんでこんなキャッチコピーになってるんだろ。
というか、言うほど変人じゃないよあたしたち?
……え? あ……うん……ここでは、まあ、すごく変人なんだけど。
でも向こうでは変人じゃないから。頼れる副部長なんだから。ホントだって。
ここでは死ななかった。死のうと思っても死ねなかった。
……でも、会長さんは最後に。
『山さん素敵!!』
山さん素敵。
山さん素敵。
山さん……す、てき……。
「ぐ……は……あああああああ……っ……尊い……っ……尊…………い……っ………………」
最後の一撃は、せつない。
あたし、死ぬ(5000兆回目)。
深い深い、闇の中。
「……る、かおる」
何か、遠くから呼ぶ声がする。
どこかで聞いたことがあるような、そんな声。
……そして、何かを忘れているような、そんな奇妙な感覚……。
「…………かおるううううううう!!!!!!」
「うわあああああああああああ!?!?!?!?!?」
鼓膜が引きちぎれんばかりの勢いで絶叫されて飛び起きた。
ここは……あたしの、部屋。目の前にいるのは……あたしの姉、あや
そして、忘れていることといえば……。
「学校。あんた、大丈夫なの?」
壁掛け時計を見る。
時刻、8時40分。
「ぎゃああああああああああああああ遅刻うううううううううううううう!!!!!!!」
ギリギリセーフ……なんて奇跡は起こらず。
というか、8時30分を超えた時点で遅刻が確定するわけでありまして。
つまり、あたしは、今日、無事に遅刻しました……。
ついでに友達からめっちゃ『かおるんるん』呼ばわりされてからかわれました。
でもしあわせだからOKです。
蓮司くん……会長……ふへへへへ…………。
あたし、死ぬ(5000兆1回目)。
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