第42話
「ううん、いつ福岡に引っ越すのか訊いてただけ」
そういいながら、金太はダンボールの箱を抱えると、未練がましく小屋を出た。そして箱をネズミに預けると、小屋の入り口に立ち、「ロビン秘密結社」と書かれた看板を剥がし取った。
「これは記念にオレが預かっておくよ」
「いよいよロビン秘密結社もこれで最後なんだね?」
ネズミが自転車のサドルの上にダンボールの箱を置きながらいった。
「違うよ。別にロビンが解散なんていってない。この小屋が撤去されるだけで、オレたちの絆が消滅するわけじゃないんだ。みんなが集まろうとするんなら、オレの家でも全然平気だ」
「だったら、ボクの家だって同じだ」
デーモンは1歩前に出て嬉しそうに金太にいった。
だが、ノッポは違った。遠くに行くため、もうみんなとこうして会うこともできない。寂しさを我慢するように終始俯いている。
「ねえ、金太。九州に行ってしまうとノッポが寂しがるだろうから、たまにはみんなで集まってテレビ電話で話をしない」
アイコがいつもよりさらに目を大きくしていった。
「それはいい考えだ」と、金太。
「それだったら、ボクの家でもいい」
デーモンはどうしても秘密結社を自分の家に持ち込みたいようだ。
「わかったよ、デーモンがそういうんだったら別にそれでもいい。
なあ、みんな見ろよ、夕陽が黄金色に輝いてる。これからのオレたちの新しいスタートを祝福してくれてるみたいだ。これからもずっと友だちでいようじゃないか」
金太は目を細めながらメンバーの顔を見る。
「オレたち『ロビン秘密結社』のメンバーは、この先なにがあっても絶対に忘れないゾー!」
金太が手のひらをメガホン代わりにして夕陽に向かって叫ぶと、ほかのメンバーも揃って西の空を仰ぎ見、思い思いの希望を夕陽に願うのだった。
5人が同時に吐く息が冬空に白く、それは夕陽が絹に包まれたように見えた。
( 了 )
『ロビン秘密結社』の仲間たち [Ⅴ] - 別れのセレモニー - zizi @4787167
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