読み始めは、会話文はがりなので、くだらんシナリオかと、読む気をなくすが、我慢して読み進めると、神と名乗る老翁によって、ほんまかいなとつっこみをいれたくなるような、しかも非常にもっともらしい宇宙論が語られる。数々の科学理論を引き合いにだしているため、特に無知な僕のような人は、どこまでが科学理論でどこからが創作かがわからなくなり、騙されても面白そうだなと思わせてくれる。
人間的であるのは、苦しみの肯定を、極めて積極的かつ楽観的に行っているところだろう。不幸な人が読むと、かなり元気つけられるに違いない。一つの価値観の大伽藍をなしていて、見事なものがある。
惜しむらくは、地の文がほとんどないところか。間として、九頭龍さんや老翁の動作、表情などを入れると、もっと純文学らしくなったと思う。ユーモアを語るときこそ、クソ真面目にすると効果が高いのだ。
しかし、とても楽しめました。